第二十話 VSカルザド盗賊団(置き土産)

 気合を入れてパワーアップしたフラーゲトイフェがワタクシ目掛けてぶちかましを仕掛けてきました、これにはワタクシもビックリ想像以上の速さにワタクシも一瞬反応が遅れてしまいました.

 咄嗟に両腕でガードをしたのは良いのですが体格が一回り以上大きい相手の弾丸タックルは流石に完全には防ぎきれず吹き飛ばされてしまいましたわ。


「うぐっ!」

「「「マナカさん(ちゃん)!」」」


 近くの木に叩きつけられて一瞬呼吸が止まりましたわ。――今のは痛かったぞー!

 ワタクシは無駄にカッコつけて飛んで立ち上がり態勢を整えます。


「ふふ、皆さま慌てなくても大丈夫ですわよ、この久那伎真奈香を倒すにはいささか力不足ですのよ」

「流石ですマナカさん! でも膝が少しプルプルしてますよ」

「武者震いですわ……多分」


 とりあえず見栄は張っておきますわよ! しかし見た目通り攻撃力は高いですわね、身体強化されてても結構痛かったんですのよ、これはワタクシもう少し防御の練習も必要ですわね。


「この世界に来て初めてワタクシにダメージを与えるとは、貴方やりますわね」


 ワタクシは仁王立ちをしフラーゲトイフェにビシ! と人差し指を付きつけますとフラーゲトイフェはまたゆっくりとこちらに向かってきますわ。

 マウナさん達もワタクシのほうに向かってきますわ。ワタクシはマウナさんに敵の事を聞いておきます。


「マウナさん! この赤いの闇の魔法とこのパワーアップ以外どんな能力がありますの?」

「基本的には肉体派の種なので闇魔法以外はパワーとスピードにモノを言わせた戦闘方法を取ります! ですがただの力押しだけではないので注意してください」


「そ、その規模の悪魔は単体の討伐でもギルドではBランクの依頼です、四等級以上の冒険者パーティーでの依頼になります。い、いくらマナカさんでも厳しいのではないでしょうか?」

「アルティアさん心配してくださるのは有難いですが、やるしかありませんのよ。まあ、任せておいてくださいな、自分で言うのもなんですがワタクシけっこう優秀ですのよ」


 ワタクシが言い終わると同時に、先ほどと同じように両腕を交差させてぶちかましをしてきました、

ですが今度はワタクシも反応出来ております、ワタクシは体勢を低くかまえ相手の交差した腕をくぐりしゃがむような体勢でフラーゲトイフェの両膝の裏の辺りを両腕で抱え込みブリッジの要領で後ろに反り地面に叩きつけます、相撲で言う居反りという技ですわね。


「どっせい! ですわ!」


 そしてすかさず倒れたフラーゲトイフェを蹴り飛ばします追い打ちは基本ですわよ。しかしあっさり起き上がってくるフラーゲトイフェ、耐久力も高いようですわね。


「しかし、マナカちゃんも無茶するわねぇ。コイツは流石に今まで戦ってきた敵の中では群を抜いてるわよ」

「強い敵、いいですわね。ワタクシの厨二心に火が着くってもんですわ。ワタクシはもっと強くならねばなりませんの」

「何か理由があるのね、でも今はパーティープレイよ」

「承知しておりますわ! アルティアさん強化の魔法をまたお願いしてもよろしいかしら? マウナさんは何とかあの赤いヤツの足止めをお願いしますわ、ベティさんはワタクシとあの赤いのに攻撃をしかけてもらってかまわないかしら?」

「わ、わかりました」

「はい!」

「了解よん」


 アルティアさんが速度重視で初級の身体強化の魔法を発動させました、そしてマウナさんのシャドウバインドが敵を捕らえるとワタクシとベティさんで挟み撃ちにします。

 ワタクシはシャドウバインドに捕らえられたフラーゲトイフェをベティさんの方に向けて正面から右ストレートで殴り飛ばします。


「ベティさん!」

「オーケーよ!」


ベティさんが飛んできたフラーゲトイフェをタックルし今度はワタクシの方に跳ね飛ばしましたわ。


「グギャ!」


 流石ベティさんのタックル、たまらず敵が叫び声をあげましたわ、またワタクシの番ですわね。


「ナイスですわ!」


 ワタクシの方に飛んできたフラーゲトイフェをワタクシは正面から受け止め両腕で抱え込むと後方に反り頭からフラーゲトイフェを地面に叩きつけますわ。ワタクシが体勢を整えようとしたところフラーゲトイフェの尻尾がワタクシを足払いしてきました、ワタクシは流石にその場に転んでしまいました。

 く! 転ぶにしてもエレガントに倒れねばワタクシの沽券にかかわりますわ!


「って! そんなことしてる場合じゃないですわ」


 ワタクシはエレガントに転んでからすぐに立ち上がります、そしてフラーゲトイフェと睨めっこ状態。思い切って頭突きを食らわせますわ。敵がのけぞった所をマウナさんがゲートボールスティックを敵の顔面に振り下ろしますわ。メキャっという音と共にフラーゲトイフェが地面に叩きつけられます。


「エグイですわ……」


 流石に今のは致命傷じゃありませんの? と思っていますと緑色の血をまき散らしながらフラーゲトイフェ再び立ち上がりますわ、なんなんですのこの生命力は。

 

「あれでも立ち上がるの? 凄い生命力ねぇ」


 ベティさん驚き、ワタクシも驚き。普通なら死んでますわよ。さて驚いてばかりもいられませんわね。

 フラーゲトイフェの周りに黒いオーラが発生しましたわすると。


「――ダーク・ウィップ!」

「――っツ!」

「あいたー!」


 オーラが鞭となってフラーゲトイフェの周りを薙ぎ払います、ワタクシとマウナさんが吹き飛ばされます、ベティさんちゃっかり盾で防いでおります。結構痛いですわねこれも。

 もう少し楽に倒せると思ったんですが悪魔とは想像以上にしぶといですわね。


「あいたたた、マウナさん豪快に吹っ飛びましたが大丈夫ですの?」

「はい、何とか無事です」

「少し時間をかけ過ぎておりますわね、ここはワタクシも大技を決めて倒すとしますかね」


 ワタクシは右腕をグルグルと回しながらフラーゲトイフェに向かって歩いていきますわ。

フラーゲトイフェも完全にワタクシをターゲットにしておりますわね、潰れた顔をワタクシに向けておりますわ。


「どうするつもりなのマナカちゃん?」

「正面から叩き潰しますわ」


 ワタクシがそう言った時でしたわ、最初に眠らせた盗賊五名が目を覚ましてきました。


「なんだ、クソ。ほぼ壊滅状態じゃねぇか!」


 起き上がってきた盗賊が周りを見て叫んでおります、しかしこのタイミングは少し厄介ですわよ。


「頭目があそこで死んでやがるし、ここまでされて手ぶらで帰れるわけねぇ」

「あの赤いヤツなんだ? なんかあの女と戦ってるし」

「丁度いいアイツがあの赤いのと戦ってる間に馬車からブツを奪ってズラかるか」

「「「「おう」」」」


 盗賊たちが会話しておりますが内容丸聞こえですわね、頭目死んだなら逃げなさいなと言いたいですわね。フラーゲトイフェが器用に尻尾と両手足を使い攻撃を仕掛けてきますわ、コイツ相手にしていて馬車は守れませんわね。ベティさんとアルティアさんに盗賊を任せるしかないですわね。

 盗賊たちは剣を抜くと馬車に向かっていきましたわ。


「アルティアさん! ムーロさん! 盗賊が眠りから覚めて馬車に向かって向かっておりますわ!」


 ワタクシが叫ぶとベティさんが馬車に向かって走っていきます。隙を見せたフラーゲトイフェに右上段回し蹴りを決めて吹き飛ばします。


「マナカちゃん申し訳ないけどソイツの相手お願いね! 私はアルティアちゃん達を助けに行くわね」

「お願いしますわ! マウナさんはワタクシのサポートをお願いしますわ!」

「わかりました!」


 盗賊はベティさん達に任せてワタクシはさっさとあの赤い悪魔を倒しますわよ。マウナさんがワタクシの所に小走りでやってくるとワタクシの背中に手を置き魔法を発動しました。


「魔法耐性を上昇させる補助魔法です、私の適正だと初級ですが無いよりはいいかと思います」

「マウナさんの愛しかと受け取りましたわ! あの赤い変態は三分でマットに沈めてやりますわ」

「愛じゃありません! 支援魔法です!!」

「んふふ」


 やだ顔真っ赤ににして照れちゃってますわ、カーワイイと思ってても声には出しませんわよ。

 フラーゲトイフェも先ほどの攻撃から立ち直ってきましたわね。さあ、最終ラウンドですわよ。

 フラーゲトイフェの尻尾を使った格闘戦は初めての経験で良い修行にもなりますわねぇ。大振りのパンチを交わすと振りぬいた体制から尻尾による殴打を連携に組み込んできたりと、厄介で仕方ないですわ。


 しかしこちらは二人、ワタクシの攻撃に合わせてマウナさんの魔法が飛び交います。確実にマウナさんの魔法とワタクシの攻撃が相手の体力を削っていきますわ。

 なんだかんだとワタクシも相手の攻撃を数発受けていますが、思った以上にワタクシの耐久力も強化されてたためかまだ余裕がありますわよ。


 ベティさん達をチラっと見ますと、流石と言いますかあちらもそろそろ終わりそうですわね。想像以上に盗賊たちが粘っておりますが時間の問題でしょう。ムーロさんがおっかなびっくりで覗いてるのが気になりますが邪魔はしないでしょう。


「マウナさん敵の足を少しでいいので止めてくださいな。ワタクシが技を仕掛けますので決まった所に追い打ちをお願いしますわ」

「マナカさんとのコンビネーション攻撃ですね! 頑張りますよ。足止めも了解です、ウィンドブロウをフラーゲトイフェの足元に打ち込みますのでその隙を突いてください」

「こちらも了解ですわ」


 マウナさんと簡単に打ち合わせて行動再開ですわ。ワタクシはフラーゲトイフェの目の前にステップで近づきますと敵の目の前で猫騙しを仕掛けます。一瞬ビクっとしましたわね! すかさずマウナさんの魔法が飛んできましたわ。


「――ウィンド・ブロウ!」


 マウナさんとの打ち合わせ通りに風の衝撃がフラーゲトイフェの左足に炸裂すると敵は少しだけよろめきました、この隙は逃せませんワタクシと同時にマウナさんも動きましたわ。

 ワタクシはフラーゲトイフェの背後に回ると相手の左脇に頭を入れ胴体を両腕でクラッチしますそして――。


「受けてみなさいな! 鉄人ルー・テーズもビックリのへそで投げるベリー・トゥー・バックですわ!」


 淑女的にお洒落に言いましたが簡単に言うとバックドロップですわ、ですが威力は保証済みですのよ!

 ワタクシは真後ろにブリッジしてフラーゲトイフェの頭部を地面に叩きつけます。


「グギャ!!」


 うふふ、流石にこれはたまらないようですわね! この技は危険ですので良い子は真似したらダメですわよ。


「マウナさん! いまですわこれでフィニッシュですわ!」

「わっかりました!」


 ワタクシの掛け声でマウナさんが動き、叩きつけられたフラーゲトイフェの顔面にまたもゲートボールスティックを振り下ろしました。 

 グチャっと嫌な音を立てたフラーゲトイフェはしばらくして全く動かなくなりましたわ。

その後少ししたらフラーゲトイフェの身体が煙のように消えていきました。


 盗賊たちを倒し終えたベティさん達がワタクシとマウナさbんの方にやってきましたわ、遅れてムーロさんも馬車から降りてやってきましたわ。


「お、終わったみたいですね。二人とも傷の治療をします」

「最後見てたわよ、相変わらずエグイ攻撃ね。あんな技見た事無いわよ」

「お見事ですぞマナカさん」


 ワタクシとマウナさんはアルティアさんの回復を受けて座り込んでしまいましたわ。


「流石に疲れましたわ……悪魔って丈夫ですのね」

「フラーゲトイフェはランクの割には丈夫ですから……」


 こうして二度目の大規模な襲撃を退けることが出来ましたわ。

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