第十九話 VSカルザド盗賊団

 流石に相手の方が数は圧倒的に上ですわ、マウナさんの魔法で一気に数を減らすのが賢いですわね、そう考えてワタクシはマウナさんに目で合図を送りますわ、マウナさんは頷いてくれました。流石はマウナさん、すでに目線だけでワタクシが何をしてほしいか分かっておりますのね、相思相愛ですわね、キャッ!


 マウナさんの詠唱に合わせてワタクシは盗賊が五人ほど集まってる辺りに向かいますわ、ただ今回は敵の数が多いのでなるべく馬車から離れないようにせねばなりませんわね。


 ワタクシが向かった先にマウナさんも標準を合わせますわ、ワタクシは盗賊を一人一本背負いで四人の盗賊の方に投げ入れますと盗賊たちが慌てて投げた盗賊を何故か皆でキャッチしようとしておりましたわ。

 そんなマヌケ共の方にマウナさんの魔法が炸裂しますわ。


「マナカさんナイスアシストです!――スリープエア!」


 む! 名前からして攻撃魔法じゃないようですわね。ワタクシは巻き込まれないように急いで場から離れますわ。その瞬間に生暖かい風が仲間を受け止めようとした集団の場所を抜けていきましたわ、すると五人の盗賊が全員その場で倒れいびきをかきだしましたわ。


「数が多いですからね、とりあえず動きを封じる事を優先します」

「正しい選択肢ですわね」


今ので相手側に動揺が走っていますわね、この隙に仕掛けたいところですが


「マ、マナカさんにマウナさんも今のうちにこちらに来てください。強化魔法を使います」


 アルティアさんがこの隙に強化魔法をかけると言っておりますのでワタクシ達は馬車の反対側にいるアルティアさんとベティさんの方に向かいましたわ。


「――軍靴を鳴らせ同胞よ、武器を掲げよ同胞よ、進め進め全てを蹂躙せよ、嗚呼、勝利を我らに!! ――ヴィクトワールアルメ!」


 強化魔法ってなんか野蛮な内容の詠唱ですわね……アルティアさんが魔法を唱えるとワタクシ達の身体がうっすらと光りますわ、身体が軽くなった気がしますわね。


「す、すいません。集団強化魔法なので効果の方はそこまで高くはないのですが身体能力向上に戦意高揚の効果のある魔法を使いました効果時間は約一〇分です」

「十分よ! アルティアちゃん上位強化魔法が使えるなんてね流石ね」

「うふふ、これが強化魔法ですのね、良い感じですわよ。それではまた暴れてきますわね」


 アルティアさんの呪文はどうやら支援魔法の上級魔法らしいですわね、ベティさんは今回はメイスではなくフレイルを構えておりますわね。さあ身体が軽くなった気がするのでひと暴れしてきますわよー。


「私も頑張ってきます!」


 マウナさんもゲートボールスティックを構えて動き出しましたわ。あれ? 格闘戦でもするつもりですの?

 さて、敵も動揺から立ち直ったようですわね、敵は馬車を囲むように展開しておりますわね。ただ馬車の中身が欲しいでしょうから馬車自体には無茶な事はしないでしょうね。そこを上手く利用できればよろしいのですが。


「眠りの魔法か、思った以上に面倒な奴らだな、だが多勢に無勢だな」


 さっそく強化状態のベティさんが近くにいた盗賊を叩き伏せていますわね防御より攻撃を重視して戦っておりますわねこうも相手が多いと守るのが下策ですものね。

 ワタクシは盗賊の集団に向かって走り出しますわ、とりあえず進行上にいた盗賊三名はささっと左のボディブローからの右のフックのコンボで撃破しますわ。強化魔法がかかってるためか盗賊の顔が弾け飛んだように見えるのが恐ろしいですわね。

 本気になれば一発で盗賊程度なら殺せちゃいそうで怖いですわね。

 ベティさんも結構な勢いで盗賊をつぶしていってますわね。


「おいおい、なんなんだこいつら、俺たちがこうもあっさり追い詰められるとは……」


 リーダー格の男カルザドが焦った様子もなく呟いておりますわね、どうやら情報提供者の黒幕からなんらかの切り札を受け取っているようですわね。

 マウナさんがゲートボールスティックで盗賊の膝の部分をぶん殴ってからワタクシの方に来ますわ……見てるだけで痛い光景ですわね、盗賊も悲鳴にならない悲鳴でのたうち回っておりますわ。


「マナカさん、あのカルザドって男妙に余裕がありますね」

「おそらくワタクシ達の事を教えた連中から何か渡されてますわね」

「もう少し盗賊の数を減らしたら皆で固まった方がいいですね」

「そうですわね、その方が対処しやすいでしょうね」


 ワタクシ達はそう言い合うと近くの盗賊たちをどんどん倒していきますわ。

 アルティアさんの強化魔法のおかげもあってあっさりと盗賊は数を減らしていきましたわ。


「随分余裕ですわね?」


 ワタクシはリーダー格の男に話しかけます。


「馬鹿野郎、余裕じゃないさ。仲間がほとんどやられちまったんだぜ……本当なら奥の手は使いたくなかったんだがな」


 リーダー格の男が懐からこぶし大の大きさのカプセルのようなものを取り出しますわ、ドーピングでアレを飲み込む……わけないですわよね。

 カプセルを見たベティさんが目を見開いておりますわね。


「注意して、アレはソースフェールよ!」


 ソースフェールって確かモンスターを簡易封印する御禁制アイテムですわよね? ようするに大物が出てくるってことですわよね? 嫌ですわぁ……

 ベティさんの声にマウナさんとアルティアさんは緊張した表情をしております。


「何が来るか分かりませんわね、一旦全員で集まりましょう」


 ワタクシとマウナさんは再度馬車を守るベティさん達のもとに向かいますわ。


「正直言って俺もこの中には何が入ってるのか知らされてねぇんだけどな」


 そういって、カルザドはカプセルを地面に置きますわ。中に何が入ってるのか分からないような物をよく使う気になれますわね……これって呼び出した魔物にいの一番にカルザドが殺されるパターンじゃないんですの?


「貴方それ使うのやめた方がよろしくてよ? その中の魔物って制御ができるわけじゃないのですのよね?」

「そうねぇ、封じるだけで出てしまえば魔物は本能のままに行動するわねぇ」


 おや? 一瞬ためらいましたわね? 


「そう言われても、もう止めるわけにゃいかねぇな」


 カルザドはカプセルから少し離れると解除の呪文を唱えますわ


「リベラシオン!」


 カプセルが光を発し人型をした魔物が姿を現しましたわ、目は閉じられており瞼の所が糸で縫われているようになっておりますわね、鼻は無く大きな口がありますわね、全身が赤黒い色でテカテカしたラバースーツのような魔物ですわね、短いスパイクのついた尻尾も生えてますわね、左手の手先がハンマーのようになっていますわ、なんですのコイツ?


「マウナさんアレなんですの、新種の変質者ですの?」


ワタクシの問いかけにマウナさんは丁寧に答えてくれますわ


「変質者なら楽なんですけどね、あんなナリですが立派な悪魔ですよフラーゲトイフェと呼ばれる悪魔です、レッサーデーモンとグレーターデーモンの間くらいの位置に属する悪魔なんですが……随分珍しいのが出てきましたね」

「まあ、人型してて関節があるならワタクシとしてはやり易いですわね」

「あ、あれを見て人型ならやり易いとか言えるマナカさんが羨ましいです、わたしはあんなの見たらもう生きた心地がしないですよ」


「お、おい、バカ! 敵は向こうだ俺じゃねぇ!!


 フラーゲトイフェはお約束のようにまず呼び出したカルザドに向かって歩き出しますわ


「やはり制御もクソもありませんわね、カルザドが襲われてますわね」


外の様子が気になったのかムーロさんが顔を出して様子を見てますわね。


「カルザドが襲われてるうちに逃げてしまってもいいんじゃないですかな?」

「ワタクシとしては賛成ですがそれで逃げ切れる相手では無さそうですわね」


ムーロさんの提案には基本的に賛成ではありますが、カルザドの抵抗なんて無いに等しそうですわね


「く、来るな!あっちに――ぼぎゃあ!!」


 フラーゲトイフェが左腕のハンマー部分でカルザドの頭を横殴りしましたわね、カルザドは錐揉みになって血をまき散らしつつ吹っ飛んでいきましたわ。カルザドが動かなくなったのを確認するとフラーゲトイフェはワタクシ達の方に目を向けました。まあ、瞼が縫い合わされていますが。


「盗賊団自体は大したことなかったわねぇ」

「で、ですが。お、置き土産の方は凄く厄介そうですよ」

「フラーゲトイフェは闇属性の魔法も扱うので注意してくださいね」

「了解ですわ」


 敵は残り一体ですのでベティさんを前衛にいつもの陣形で戦闘開始ですわ。


 フラーゲトイフェはゆっくりと歩いてくると攻撃は素早く左手を振り下ろしてきましたわ、ベティさんはそれを危なげなくバックラーでいなすとフレイルを器用に振り回しフラーゲトイフェの横っ腹に叩き込みました。

 ワタクシはその隙を逃すことなくベティさんの左脇から駆け抜けフラーゲトイフェに追撃をしかけますわ、よろめいたフラーゲトイフェに勢いをつけて前方宙返りをしつつフラーゲトイフェの頭にかかと落としをお見舞いしますわ。

 

「悪魔はどの属性魔法にも高い耐性を持つんですよねぇ――ファイア・アロー!!」


 かかと落としを受けて倒れるフラーゲトイフェにマウナさんの火の矢がさらなる追い打ちをかけます。


「これで終わったんじゃありませんこと?」

「マナカちゃん、流石にそこまで甘くは無いわよ」


 ベティさんの言った通りフラーゲトイフェは起き上がってきましたわ。かかと落とした場所がへこんでいますが大丈夫なのでしょうか? 立ち上がってるのを見ると大丈夫っぽいようですわね。

 頭を左右に振ったフラーゲトイフェは腰を落として天を仰ぐと気合を入れるようなしぐさをしましたわ。


「な、なんですかアレ? 筋肉が盛り上がってませんか」


 アルティアさんが言ったように筋肉が盛り上がって一回り近く大きくなっておりますわね。


「ワタクシ、やられてからパワーアップする方を初めて見ますわ……」

「こっからが本番みたいねぇ」


 まあ、ワタクシもあっさり勝てるとは思っていませんけどね。

 第二ラウンドの開始のようですわね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る