『食べ残し禁止法』

やましん(テンパー)

『食べ残し禁止法』


《これは、まったくのフィクションであります。この世のこととは、一切、関係ありません。》




 みなさん!


 ぼくらは、食べ残された食品たちです!


 最初は、豪華・華麗なお食事さんでした。


 はなやかな舞台に、美しい明かりに照らされながら、燦然と輝き、現れるのです。


 お客様たちの、あの驚きの笑顔、忘れられません。


 『おいしい!』


 『ワンドフ~~ル!!』


 賞賛の言葉が飛び交うのです。


 なんという、栄誉!


 なんという、歓喜!



 しかし、食べ残されたぼくらは、残飯と呼ばれ


 捨てられます。


 動物さんたちの、御飯にでもなれれば、大成功です。


 ぼくらは、声を上げ始めました。


 食べ残したお客様に対して、文字通り、叫び始めたのです。



 『残さないで!』


 『全部食べてね!』


 『食べ残し反対~~~い!』


 『食べ残しは罪だあ~~~!』


 『ちゃんと食べないと、地獄に落ちるぞ!!』



 叫べば叫ぶほど、気味悪がられました


 お店のオーナーさんからも


 『しゃべるな! きさまらには、しゃべる権利がない!』

 

 とも、いわれました。


 もちろん、中には、もっと愛情をこめて諭してくださる方もありました。


 『これが、世の中なんだよ。ぼくらも全部食べてもらいたい。理不尽だとも思う。しかし、これが社会というものなんだ。お金を払っていただき、商売を続ける以上は、また健康上も、無理は言えないんだ。君たちの姿を、テレビや雑誌で、見るだけしかできない人もいるんだよ。』



 なるほど、・・・しかし、あまりに実情がよくないではありませんか。


 ぼくらは、あえて、抗議を続けました。


 レストランや、料亭、また、政府主催の外交パーティーでも、実行しました。


 各ご家庭にもお邪魔いたしました。


 議員さまたちには、『法制化』を促しました。


 ついに、世界中のお料理さんたちが、『声を上げた』のです。


 食べ始める前にも、声を上げるようになったのです。


 『食べ残さないでね!』


 『食べ残したら・・・ふふふふふ! どうなるかなあ?』


 食道から胃に至る間も、ぼくらは声を上げ続けました。


 『まだ、残ってるよ!』


 『お皿をよく見てね!なにか忘れてませんか?お野菜は、身体に大切だよお~~~~~~~。お~~~~・・・・・・・い・・・・』


 消化されるまで、叫びました。



 ついに、このままでは、人類滅亡につながりかねないと危惧した国連は、各国に法制化を促しました。


 もっとも、もともと、食料の少ない地域の方々には、そのような無礼なことは、いたしませんでした。


 病気の方も、大切にしました。


 問題は、豊かな国の元気な方なのです。


 最後まで抵抗したのは、当然、お金持ち大国さんたちでした。


 そこで、細菌さんたちとも協力関係を築きました。


 お客様を盾にしたくはなかったのですが、致し方なかったのです。



 超大国さんが、ついに折れました。


 同盟国と言われる国も、それには追随しました。


 ああ、ぼくらは、ついに、勝利したのです。


 『食べ残し禁止法』


 世界各国で成立したのです。

 

 まあ、いささか、抜け穴だらけなのは、仕方がないか。


 それぞれの、社会の慣習とかもありますし。


 やりすぎは、やらないのと同じでしょうしね。



 当面は、しばらく、様子を見ています。


 どこのレストランも、静かになりました。



 でも、あまりにひどければ、また叫びますからね。



 

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『食べ残し禁止法』 やましん(テンパー) @yamashin-2

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