予感屋SS

大塚黒丸

僕とあの子

春①

 雲ひとつない空。かといって暑すぎるわけではなく、丁度良い気温。道に沿って植えられている桜は満開。


「なんて素晴らしい入学式日和なんだ」


 何かいいことがありそうな予感がする。腕を上にあげ、伸びをした。

 本日は中学校の入学式。僕は中学1年生になる。


「よぉ」


 呼びかけながら後ろからアヒルが僕の肩に乗っかった。

 いや、正確に言うなら、アヒルをモチーフにした鍋つかみを左手に装備している男がその左手で僕の肩をたたいた。


「やぁ」


 振り向かずとも誰かわかる。そんなちょっと変わった人、僕はまだ一人しか知らない。


「掲示板見に行ったらもうクラス張り出されてたぜ」

「どうだった?」

「同じクラスだった」

「それは良かった」


 隣にならんだ彼に向かって微笑んだ。

 彼は僕の親友。小学校3年生のときに同じクラスになって以来ずっと一緒。そんな彼が一緒ならとても心強い。

 ちなみに彼は出会った時からアヒルを装着している。外したところを見たことがない。だから今さらそれにツッコんだりしない。というより既にツッコミ済みだ。

 彼のことを知らない人たちはさっきからチラチラとこちらを見ているけども。


 いや、見ている理由はそれだけではないかもしれない。

 僕の親友はイケメンだ。キリリとした目つきに、スッと通った鼻筋。短く刈り上げた髪型もさわやかな感じで似合っている。身長も周りと比べて高く、170はありそうだ。僕は平均的な高さなので話すときは見上げる形になる。

 ……このまま身長止まってしまえばいいのに。


「そういえば、僕さっき良い予感がしたんだ」

「へぇ。今回はどんな予感なんだ?」

「素敵な人に出会えるよか……好きです」


「…はい?」


 勘違いしないでほしいんだけど、僕はなにもアヒルを装備している男に告白したわけじゃないんだ。

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