第2話 生まれついての世間知らず

今から思えば、本当に世の中舐めていた。

なんとなく、誰かがなんとかしてくれるだろうと、そう思っていてなんかラッキーに乗っかれる。

きっとそうに違いないと安易な考えだった。



30代前半上京。

ミュージシャンになりたい。

諦めきれない。

もしかしたら……と甘い考えで

知り合いや友人を頼りに、着々と資金を貯め、管理職としての異動も断り、一人で友人の見送りもなく、ひっそりと上京した。



当時の職場の仲間は、後悔しないで、上京すべきだと背中をを押してくれた。



それも約10年後、あえなく挫折して

世の中と隔絶された生活を送るようになるとは思ってもいなかった。

自分でも気がついてないくらい、夜遊びすら知らなかった、世間知らずで箱入り。

なんとも、生活力もなく、身体も弱かった……


どうやったって身体が弱いのは、40歳過ぎてから自覚する。

どうやら周りの人と違うぞ?と。



しかし、

どうしても歌で生きていきたい。



歌ってなきゃ死んでしまう。




そんなバカな思いだけで、離婚して上京。

一人、新幹線で東京駅に降り立った。




迎えに来てくれたY子。

上京前からのいわゆるメル友。

度々、一緒にライブ観戦のため上京しては彼女の実家に泊まらせてもらったり、親しくしていた。



彼女はお金持ちのお嬢様。

家には白いグランドピアノ。

外資系石油関連会社に勤務していたが、

服装がとても質素で、品のいい子。



今でもたまに連絡を取り合う、数少ないもう10年来の友人。

彼女が東京駅から、不動産屋、新居まで付き合ってくれて、

静かに一人暮らしが始まった。

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