暁の星剣使い(あかつきのコスモダスター)
よつふじ あきたか
EPISODE1 『焔が結ぶ〝絆〟(ほのおがむすぶ〝シンパシー〟)』
第0話 堕ちた少女
燃える屋敷。
流れる涙。
そして、尽きた命を〝私〟は真っ暗な闇の中から、
───もう何度同じような事を繰り返してきただろう。
───もう何度同じ結末を見てきただろう。
〝私〟はもう繰り返す悲劇に諦めかけていた。
それでも〝私〟は繰り返すしかない。ワタシは〝私〟では無くなりかけていて、自分の身体なのに自分で動かす自由は無かったから。
「……これが、宿命だというの?」
ワタシの剣に貫かれた少女が呟く。貫いた瞬間に何か、心を覗かれたような感覚があった。
「……〝あのこ〟をお願いね───」
その一言が〝私〟の心の炎に力をくれた。もう少しだけ頑張れそうな気がした。
横たわった亡き骸を抱きかかえて〝彼女〟が涙を流す。それはいつもの、〝彼女〟が〝大いなる力〟を受け継ぐ儀式の真っ只中。
やがて、〝大切な人〟を目の前で殺されて怒りに我を忘れた〝彼女〟がガムシャラに攻撃してくる。だが、そんな駄々をこねる子供のような攻撃が当たる筈もない。
───このまま行けば暴走を起こしてしまう。
───そしていつもの結末を迎えてしまう。
一瞬希望を抱いたが、結末はいつも通りのようだ。だからもう諦めてしまおうと、目を閉じようとした。───そんな時、それは聴こえてきた。
『こんなところで根絶やしにされてなるものかよ』
〝彼女〟に異変が起きた。異変というよりも豹変したと言った方が適切に思える。〝私〟には人格そのものが入れ替わったように見えた。何故なら目の前のような〝彼女〟は〝私〟の知る限り見たことがない、〝私〟の知らない〝彼女〟だった。
その彼女は剣技も剣気も速度も〝私〟や〝彼女〟とも段違いで熟練の遣い手だった。まるで未来の〝彼女〟が乗り移ったかのようにすべてが達人の域だった。
その彼女にワタシは為す術もなく仮面を割られてしまう。咄嗟に隠してその場から逃げるように撤退したが、おそらく素顔を見られてしまっただろう。ワタシの顔を見た〝彼女〟はどう思うだろうか。いや、確実に混乱することだろう。
───なにせワタシは、〝彼女〟の目の前で、この世界の〝私〟を殺したのだから。
その後の事は分からない。またいつものように暴走したのか。それとも…………。
本当に一瞬だけこの世界は少し違う気がしたが、細く小さなトゲが刺さったような違和感は〝私〟を置き去りに虚無の彼方へ消えてしまった。
つづく
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