肝試し

 それはある夏のことでした。

 仲良しグループの三人(全員男)でキャンプに来ていたのですが、偶然にも隣のテントが女子大生のグループでした。

 こちらは確か、高校二年生であったかと思います。受験戦争が本格化する前に思い出を作っておこう、といった主旨でしたからね。

 隣に女子大生が泊まっているということで盛り上がった僕達は、どうにかして彼女達にアピールができないかと思い、意を決して肝試しに誘うことにしました。キャンプ場の近くには有名な心霊スポットがありましたから、丁度いいと思ったんですね。

 というわけで勇気を振り絞って誘ってみたんですが、断られてしまいました。男子高校性に暗がりに連れていかれるなんて、女性からしたら恐怖でしかないですからね。当然です。

 とはいえ僕達にそんなつもりはちっともなかったわけでして。ショックでしたね。

 仕方がないので僕達だけで行くことにしました。そもそも、元からそのつもりでしたし。女子大生に声をかけるのに比べたら、ちっとも怖くはありませんでしたね。

 因みにその心霊スポットというのは、自殺の名所と呼ばれる雑木林でした。とはいえそこが命を絶った人で溢れかえっていたのは、あの時点で十年近く前のことだったらしいのですが。

 そんなわけで実際に誰かが首を吊っていたわけでもなく、むしろ野良犬のような遠吠えの方が不気味なくらいでした。なので僕は、「普通に危ないから帰ろうよ」と提案したんです。犬ならまだいいですけど、狼や熊なんかが居たら大変だと思いましたからね。

 それでも友人達は渋りました。僕のことを意気地無しだなんだとからかい、そのまま奥へと進んでいったのです。仕方がないので僕もついていきました。あの中で誰よりも周囲に気を配っていたと思います。

 だから気付いてしまったんですね。

 地面に転がった生首に。

 僕は叫びました。すると友人達も振り返り、僕の足元に転がる生首を見て叫びました。それからはもうあっという間でしたよ。走ってキャンプ場まで逃げ帰りましたからね。幸いにも、誰も怪我はしていませんでした。

 その日はすぐに寝袋に籠って眠りました。次の日の朝、ようやく落ち着いた僕達は昨夜の体験を話し合っていました。

「まさか本当に幽霊がいるなんてな」

 だとか、

「お前、臆病なんじゃなくて霊感が強かったのかもな」

 だとか。

 とにかく、昨日見たアレは幽霊だった、ということになっていました。確かに彼らは一瞬しかアレを見ていなかったので、そう思うのも仕方がないかもしれません。

 でも僕はしっかりと見てしまったんですよね。だから気付いていました。

 あの生首、ウジが湧いていたんですよ。

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