夢の中で
@hoodie
第1話 異変①
カーテンの隙間から月明かりが差し込むのと同時に僕は目を冷ましてしまった。
「うぅ、トイレ、、行きたい」
時刻は夜の2時、起きるにはまだ早すぎる時間だ。目が覚めるとそそくさとトイレへ向かった僕は、普段は尿意に起こされることなんてないのだがきっと我慢していたのだろうと、自分にそう言い聞かせながらトイレをすませた。
戻る途中に僕はリビングに明かりが残っているのが目に止まった。
「誰だよ電気も消さないで寝たのは、、」
文句をぶつぶつ言いながらリビングに寄ると、不満だった心は違和感へ、そして恐怖へと変わっていった。
「おいおいまじかよ」
リビングにはベランダにつながる窓がある、そこに取り付けられているカーテンの端がひらひらと揺れていたのだ。
「なんで窓空いてんだよ!!」
開いていないはずの窓が開いている。普段家族は窓なんて滅多に開けないのだ、開けるとしても年に一度の大掃除の時くらいのはず。なのに今は深夜2時、窓が開いている。全く理解が追いつかない僕の脳に追い打ちをかけるように新しい情報が飛び込んでくる。
リビングに残っていた光は天井の照明からではなく、窓の奥からきているのだ。この状況についていけていないのにも関わらず、僕は窓に向かって歩いていく。
「俺、疲れてるんだよな、きっとそうだ。だからトイレなんかで起こされたんだ。」
しかし心の中では今見ているものが夢だなんてこれっぽっちも思ってなかった。これは現実だ。だが理解ができない。なんで光ってるのか、窓が開いているのか、わかんないから確かめたい。自分の目で見て納得したい。いやむしろ納得させてくれないと困るのだ。恐怖心と戦いながらも一歩一歩窓に近づく、そしてカーテンの前まで来たところでさらに僕の脳はさらに困惑した。
カーテンを開けてみるとそこにあるのは窓一面の光。窓が光に覆いつくされている。そして窓ガラスがない。光に埋め尽くされているかのように窓ガラスは姿を消していた。眩しいがはっきりと見える。
僕はその光に恐る恐る手を伸ばし、指先が触れた瞬間あることに気づく。
「これ、み、水?」
その窓一面の光はまるで水面のように、僕の指が触れたところから波ができている。そのおかしな状況に僕は何も考えれなくなっていた。とりあえず目を閉じる、次の瞬間光が一気に消えた。まぶた越しでも感じられた光が一瞬にして姿を消す。それと同時に突風が勢いよく僕の髪を持ち上げる。バランスを崩した体を起こそうと一歩後ろに下がる。体制を立て直したらさっきまでは見たらなかったはずの窓を閉める。しっかり鍵をかけると、
「なんだったんだ、、?」
と機能を停止していた脳がやっと動き始めた。そしておもむろに時間を確認しようと振り返ると、そこは今まで住んでいたとは思えないほどに荒れていた。壁にはひび割れどころかつたが生え、壁掛け時計も床に落ちて割れている。蜘蛛の巣なんかは部屋中のいたるところにある。そして4つあるはずのダイニングチェアが3つしかなかった。恐怖で足がすくみ、瞬きをしたその瞬間、部屋は元通りになった。また何度か瞬きを繰り返す。しかし何も変わらない。何が起こったのか理解できないまま、僕はこの奇妙な現実から目を背けるように自分の部屋に戻り眠りについた。
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