昨今はタイトルから内容が察せられるモノが好まれていますが、では本作はどのようなタイトルが即しているのか。考えても分からなかったので、思いついた時にしれっと変えておきます。

田辺屋敷

屁の原因とホームランは朝飯前の話。

「僕は窮地に立っている。自室に彼女を招き、楽しくお喋りをしている時にやってしまった。我慢の限界だったんだ」

『俺は甲子園を目指す高校球児。目標のためならば厳しい練習なんて屁でもないことだ』

「屁が出てしまった。わざとじゃないよ」

『ノックに素振り、ひたすら体をいじめ抜き、毎日欠かさず白球を追って』

「同じ部屋にいる彼女にバレたらどうしようかと」

『汗を掻いた』

「汗を掻いた」

『そんな俺だが、じつはスタメンになったことがない。悔しい想いをしてきた。それでもいつかはと信じて頑張り、手が届きそうな所まで来た』

「彼女にバレてないと信じて手を伸ばした」

『あとすこし』

「もうすこし」

『そして掴んだんだ、スタメンを』

「そして開けたんだ、窓を」

『俺は歓喜した』

「僕は換気した」

『嬉しかったからな、当然だろ。しかし調子に乗った俺は、皆に甲子園に連れてってやると言ってしまった。すこし臭かったかな』

「臭いな。彼女にバレてないだろうか」

『こうして俺は今日の試合を迎えた。初めてのスタメン。不安はなかったのかだって?』

「不安だ」

『緊張でバットもろくに振れないかもしれない』

「バレたら振られるかもしれない」

『そうなったら最悪だ』

「そうなったら最悪だ」

『だが、大丈夫。俺は信じている。それだけのことはやってきた』

「しかし、どうして屁が出たのだろうか」

『練習の成果は出てくれる』

「焼き芋の所為かな」

『試合は始まり、一進一退の攻防の末に最終回』

「ふと見ると、彼女が鼻をつまんで苦笑いしていた」

『逆転サヨナラのチャンスで打席に向かう俺にチームメイトは言ったのさ』

「僕がしまったと顔を歪めると、彼女は聞いてきたんだ」

『ホームランを打ってくれだって?』

「いつ焼き芋を食べたのかだって?」

『朝飯前だね』

「朝飯前だね」

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