◇2024.12.20◇日記のような手紙◇

12月20日(金)母と童謡


童謡「船頭さん」の歌詞に

♪村の渡しの船頭さんは

今年六十のお爺さん♬

と、いうのがある。


この歌を口ずさむたびに思い出すのは、母のこんな言葉。

「なんで60歳くらいで、お爺さんとか呼ぶんかねぇ〜(。・ˇ_ˇ・。)プンプン」


母、この時60は越えていたと思う。

勿論、これは60歳くらいで年寄り扱いされることへのお怒りである。

でも、母が言うと何だか可愛いかった。

外見も若々しかったけど、何しろ好奇心旺盛で気も若いひとだった。


デパートなどに行くと、一緒に歩いていたはずが、興味のあるものやお店を見つけると、そこで引っかかってしまう。

「ねぇ、お母さん」

と横を見て話しかけると姿がなくて慌てる。

振り向くと、遙か後方のお店の人とニコニコ話し込んでいたりして^^;

こっちこっち、と笑って手を振ったりしてるから、憎めない(笑)


職業婦人だったし知的なひとでもあった。

料理も上手で裁縫もできた。

でも完壁という感じじゃなくて、愛すべきボケをかます。


何度かエッセイに書いたことがあるけど、

コブシの花を見て「ほらほら、ゲンコツの花が咲いとるよ〜」とか。


子どもの頃、わたしが歳を聞くと

「35歳!」

と、キッパリ答えていた。

何度聞いても「35歳!」だったので、流石に

「本当は幾つなんよ???」

と言ったら

「お母さんは永遠の35歳!」

と言い切った(笑)


こうして思い出すと、つくづく稀有なひとであったと思う。

センスがよくお洒落だった。

何気なく巻いたスカーフとかがカッコよかった。


何でもできたけど、決して高慢ではなく、柔らかさを纏っていた。

だからこそ、父は母をあんなにも愛していたのだろう。

羨ましいことだ。


童謡にちなんだ母の話を思い出しながら、来年にはわたしも60になる。

還暦、なんてまだ遠いと思っていたのに、ヘンな気がする。

夫が早世して、祖母が逝き、父母が逝き……。


でも、わたしもこの童謡を歌うたびに

「60くらいで、"歳はとっても"なんて言ってんじゃないよ〜」

と、毒舌を吐いたりしてるんだから、やっぱり母の娘である。


母のようにはいかなかった不出来な娘ではあるけれども(笑)


そんなことを思いながら……。

師走も終わりに近づいた冬晴れの午後に。

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