今更な後悔

「久しぶりの地上ですね」


「言うて十日も経ってないだろ」


「……ラガス坊ちゃま。あの戦闘をもう忘れたのですか?」


まだ他の高ランクハンターたちが探索してない箇所を探索し帰りはルーフェイスの背に乗って速攻で地上に戻って来た。


だから、個人的にはそんなに長期間探索してたって感覚はない。


「忘れてはないよ。っていうか…………今更ながら、バカなことしたな~~って思ってる」


「? ルーフェイスと戦えば良かったと、今更後悔してるのですか?」


「違う。俺、あの時……少なからず気が動転してたからか、羅門を使うのを忘れてたんだよ」


イレックスコボルトとの戦闘時……あの時は、本当に久しぶりに……モンスターに対して、恐ろしさを感じた。


半ダンジョン化? してる地下遺跡っていう事情があったから、後で反動が返ってくる羅門を使わなかったのは得策だったのかもしれない。


でも、それこそルーフェイスやメリルたちを信じて、デメリット覚悟で羅門を使用してれば、もっと余裕を討伐出来た筈だった。


なのに……結局戦闘が終わるまで、自分の手札を忘れるっていう失態を犯してしまった。


「…………はぁ~~~~。そうですよね、結局そうですよね」


「んだよ。あんなバカ強いモンスターがいたんだから、ルーフェイスは万が一に備えてもらったほうが良いだろ」


「……そうですね。そこは否定出来ませんよ」


イレックスコボルトは、俺があの時もう少し冷静で、羅門を使用したとしても、楽に倒せる相手じゃなかった。


本当に……墓場の最下層のボスモンスター、ハイ・ヴァンパイアよりも……強さと恐ろしさを持っていた。

あのハイ・ヴァンパイアは生まれた時からあのボス部屋から出られないっていうのを考えると、イレックスコボルトが持ってた強さを得られないのも当然と言えば当然か……とにかく、強かった。


それで、あんな強いモンスターと遭遇したって事は、他にもイレックスコボルト並みに強いモンスターがいてもおかしくない。


「Aランクじゃなかったっすけど、ルーフェイスを相手に怯まず吼えまくってたレイザージャガーも結構ヤバかったすよね。というか、セルシア様あのレイザージャガーに勝ったんすよね」


「ん~~~…………あの、時、戦った、レイザージャガーは……ルーフェイスが、倒した個体、よりも……弱かった、と……思う」


ふふ、その通りだけど、認めたくなさそうな顔してるな。


確かに……まず、ルーフェイスを相手に躊躇することなく襲いかかったあの獰猛さ。

あの野性心? は、セルシアが倒したレイザージャガーにはなかったかもしれない。


とはいえ、あれだけルーフェイスを相手に戦えるレイザージャガーが、おそらく俺とセルシアが転移した階層よりも上の階層に徘徊してるっていうのが、あの地下遺跡? の怖いところだよな~~。


Aランク並みの強さではなかったと思うけど、少なくとも普通のBランクモンスターと思って油断したら、致命傷を負うぐらいの強さを持ってた筈。


…………そういうのを考えると、これまで細かく正確にって頑張ってきたマッピング作業が無駄になっても良いから、さっさと完全にダンジョン化してほしいな。


いや、まぁ実は一番下の下層にダンジョンコアやSランクドラゴンの心臓が動力源になって、地下遺跡がダンジョン化してるなんて話もまだ確証があるわけではないけど。


「というか、ビジュアルと雰囲気を含めて、俺はレイザージャガーよりもメデューサの方が怖いって思ったけどな」


「初見殺しのモンスターですしね」


発見出来たのが背後からだったから良かったけど、ぱっと見だけでも……俺はやっぱり、レイザージャガーとかケルベロスよりも、メデューサの方が怖いっていうか……イレックスコボルトとは違う恐ろしさを感じたな。


さて……街に戻ったら、とりあえずハンターギルドに行かないとな。

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