俺が、自分が、我が!!!

「まぁ……当然、いてもおかしくないよな」


イレックスコボルトとの戦闘を終えてから数日後、おそらく宝箱の役割をしているであろう部屋で高品質のレイピアをゲットしてから数時間後……地獄の番犬、ケルベロスと対面。


「ラガス坊ちゃま、私が戦ってもよろしいですか?」


「えっ……お、おぅ。それは構わないけど、二人は良いのか?」


「そうっすね」


「大丈、夫」


あら、珍しいな。

久しぶりのBランクモンスターだっていうのに。


もしかして、この前戦ったイレックスコボルト戦で、強敵との戦いは腹一杯になってるのか?


「「「グルルゥアアアアアアッ!!!」」」


「糧となってもらいますよ」


メリルが取り出した武器は、双剣。

なんだかんだで、メリルも割とオールラウンダーなこともあり、そこら辺の双剣使いよりは腕が立つ。


とはいえ、手数に関してはケルベロスの方が口が三つあることを考えれば……不利なのは否めないな。


「……ラガスさん。何となく、ケルベロスの相手をメリルに譲ったっすけど、大丈夫っすかね」


「そうだな……ちょっと、心配ではある」


普段、メリルはこういう気持ちになってるんだろうなと思うと、ちょっとだけ申し訳なく思うな。


「でも、勝算はあると思う。早めに決着が着けば」


ケルベロスは、他のウルフ系モンスターと比べて、体のサイズがそれなりに大きい。

だからダメージを与えられる範囲も当然広くなるけど、ゴーレムの様にケルベロスは鈍間ではない。


体が大きく、鈍間ではない……寧ろそれなりに速い部類に入る。

その上で爪撃だけではなく遠距離も持っており、一度に三つの遠距離攻撃を放てる。


どのタイミングで割って入るか、考えておいた方が良さそうだな。


「それにしても、メリルにしては無謀ではないけど、ちょっと攻めた冒険だな」


「……俺は、なんとなく解るっす。前の戦い……イレックスコボルトとの戦いで、俺らは特に何も出来なかったんで」


………………それはイレックスコボルトが、生命力を力に変えるという、デメリットはあれど万能過ぎる切り札を持っていたから……っていう言葉が、ほしい訳じゃないんだろうな。


「なので、ラガスさんが危ないと思ったら、手助けするのは俺に任せてくれないっすか」


「分かった。というか、お前の判断で動いてくれ」


「うっす!!!!


今のところ、まだメリルが優位に戦ってる。


炎のブレスを食らわず、爪撃も上手く躱している。

ただ猛撃から逃げ戸惑っているのではなく、しっかり双剣による斬撃を叩き込んでいる。


それでも、切断するほどの深さまで斬れてはいない……が、メリルの場合はそれで構わない。


「ッ!! ガルルルっ!!!」


「ガアアアアアッ!!!」


「っ!? ギ、ァァアアアアッ!!!!」


それに……割と頭が三つあるっていうのも、考えものなのかもしれないな。


「ねぇ、ラガス。あの、ケルベロス、って……あまり、賢く、ない?」


「そうだな…………もしかしたら、割と賢くないかもしれない」


勿論、戦況はメリルがまだ優勢だけど、受けているプレッシャーで見た目以上に精神が削られてる筈。


戦闘力的には、墓場の最下層のボス部屋にハイ・ヴァンパイアといるケルベロスに近いと思うんだが……記憶が正しければ、あのケルベロスの方がまだ知能があるように思えたんだが。


「……船頭多くして船山に上る、だったか」


「せ、せんどう? どういう意味っすか?」


「いや、なんでもない」


久しぶりに思い出したな、このことわざ。


メリルっていう人間を殺したいけど、俺が、自分が、我が殺したい!!! って気持ちが随分と強いな。

これで四肢まで面白い感じで事故ってくれれば良いんだけど……さすがに、それはないか。


でも…………うん、そろそろ回ってきたみたいだな。


負けるなよ、メリル。

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