疑問は後

「他のハンターたちがぶっ殺したけど、特に興味がないモンスターだから、素材は剥ぎ取らずに放置したって訳じゃないんすか?」


「そういう可能性も考えられるが……よく見てみろ。何体か齧られてるだろ」


「……うわぁ~~~~。確かに、何体か食われてるっぽいっすね」


目の前に転がっているコボルトやその上位種の死体。

その内の何体かは、下半身より上が食われているしたが多く、いくつが腕も転がっていた。


「仮に、一口でコボルトの上半身を食べたのであれば、そうとう大きな個体ですね」


「だな。ただ、一口で食べれるほど口が大きな個体じゃなくても……多分、普通の個体じゃない、と思う」


あの死体……体の大きさ的に、コボルトジェネラルか?


この地下遺跡? に生息してるコボルトジェネラルなら……素早さは、Bランクモンスター並みの筈。

だとすれば、こいつらを殺して食らったモンスターは、少なくとも素早さはBランククラス……加えて、一対多数? で戦える戦闘力を持ってることになるな。


「この前エスエールさんたちが話してた、Aランククラスの実力を持ってるキマイラっすかね?」


「候補の一つだな。多分獣系のモンスターだと思うんだが…………メリル、少なくともドラゴンってことはないよな」


「……土竜、岩竜……鋼竜といった部類のドラゴンであれば、こういった場所に生息している可能性は……無きにしも非ずかと」


土竜、岩竜、鋼竜か…………あぁ~~~、確かにありそうだな。

そう考えると……ようやっと、Aランクモンスターに遭遇することになりそうだな。


「ふぅーーーー……メリル」


「なんでしょうか」


「エスエールさんたちは、Aランククラスの力を持つキマイラを殺した」


「……エスエールさんたちや、他の大手クランメンバーの方たちも地下遺跡を探索している。だからこそ、自分たちだけ逃げてはいけない、ということですね」


「解ってくれてなによりだ」


渋い表情はしてるけど、これ以上何も言ってこないってことは、納得してくれた……ってことで良いんだよな。


「ルーフェイス、ここから移動してる匂いを辿って欲しい」


「ワゥッ!!!」


血の匂いが移動してれば、ルーフェイスの鼻なら絶対に追える。


俺たちは既に強化系のアビリティを発動し、魔闘気を纏いながらルーフェイスに付いていく。


すると、約十分後に少し離れた場所からモンスターの断末魔が聞こえた。


「ッ!! 行くぞ」


ふんどしを締め直し、断末魔が聞こえた場所へと直ぐに向かう。


(っ、こいつが…………? こい、つ…………コボルト、か?)


目の前には、通常のリザードよりも体が二回りほど大きいリザードを食っている個体がいた。


そのモンスターは……非常に、コボルトに似ていた。


「………………ッ!!!!!」


「おわっ!!!????」


こいつ、いきなり仕掛けてきやがったッ!!!


いや、それは当たり前っちゃ当たり前か……ただ、バチバチに速いな。


「ラビットフット」


「…………ッ!!!」


「っと、っ! ふっ……シッ!!!」


「っ!! …………」


うん、ラビットフットを使用した状態なら、ある程度問題無く躱せるし、カウンターも出来る。

ただ……こいつ、今のが本気の速さじゃないよな。


「ラガス坊ちゃま、このモンスターは、いったい」


「……イレックスコボルト。Aランクのコボルト、だっ!!!!」


手にはロングソードを持っていて、まず速い。

この速さは初見殺しだと言いたくなる。

というか、予め強化系のアビリティを発動して、魔闘気を纏ってなかったら本気でヤバかったと思う。


「やっぱコボルト、なんすね!!! でも、なんでコボルト!!??」


「疑問に思うのは、解る!! ただ、今は目の前のイレックスコボルトに、集中だ!!」


前に戦ったハイ・ヴァンパイアも強かったが……少なくとも、物理的な強さは、こいつの方が上だ!!

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