設計上、無理?

『っ、ラガス。この道は一番右側と一番左側は歩いちゃ駄目』


『オッケー。ありがとな、ルーフェイス』


『どういたしまして!!!』


厄介なことに、この地下遺跡に現れる敵はモンスターだけではない。


「この道は左右の端を歩いたらアウトらしい」


「左右の端、ですか……これまた、モンスターに襲われれば戦う、もしくは逃走しなければならない探索者にとっては厄介な位置にあるトラップですね」


ダンジョンではない。

地下遺跡の形をしたダンジョンではないのだが、この地下遺跡にはトラップが存在する。


どういった効果なのかは調べてないから知らないけど、多分……地下遺跡という建物的に、落とし穴タイプのトラップは少ないだろうな。


落ちたら針千本、毒沼とか無きにしも非ずかもだけど、簡単に抜けられない程深い落とし穴とかはない筈。


「なんか……あれっすね。改めてこの地下遺跡も謎が多いっすね」


「そうだな。そもそも未開拓地に生息するモンスターの強さとか、実ってる果実……俺らが初めて発見した物といえば、ユニコーンの骨が埋まってる湖とか、本当におかしい」


ハンターからすれば、宝庫であるかもしれないけど、やっぱおかしい場所なのは間違いない。

そんな場所の地下にある遺跡なんだから、おかしくて当然なのかもしれないけど、なんでという疑問は本当に尽きない。


「ユニコーンの骨。そんなこともありましたね。骨があったということは、ユニコーンを殺した人物がいるのですよね」


「多分、殺したのは人じゃなく、モンスターだな」


「ですね。ユニコーンの骨を捨てるなど、常人じゃなくてもあり得ない行動です」


高ランクのモンスターほど、捨てる素材がないと言うけど、ユニコーンの素材は本当に捨てるところがないらしい。


骨は粉末にすれば薬の素材になるらしい……全部聞いた話ではあるけど、多分本当だと思う。


「……ユニコーンって、それなりに強いんじゃなかったか?」


「私も、そういう、認識」


「さぁ…………本当のところ、どうなんだろうな」


俺もその話は聞いたことがある。

聖獣と呼ばれてる存在だが、単純な戦闘力はBランク並み。

個体によっては、Aランク相当の戦闘力を有してるらしい。


これはフェリスさんから聞いた話だけど、フェリスさんも長い間生きてるけど、実際に会ったことはないらしい。


「ラガスさんは本当は弱いと思うか?」


「聖なる……清なる獣? ってイメージがあるから、仮に他の馬系モンスターと同じ様に戦えたとしても、あんまり強い姿、戦いっぷりが思い浮かばなくてな」


「ユニコーンは自身を狙う物が近づくと、直ぐに逃走するようです」


「らしいな」


「そのイメージもあって、ラガス坊ちゃまはあまりユニコーンが強いと思えないのでしょう」


「あぁ~~~、そういえばそういうモンスター? らしいな。なんか、そう思うと俺もあんまり強くねぇんじゃないかって思えてきたな」


敵意を持つ者……そうでなくとも、何者かが接敵してきたのであれば、直ぐに逃げる。

そこだけ考えると、俺やシュラみたいなタイプからすれば、戦闘力が低いってイメージが浮かぶ。


「つか、本当に強かったら、死んで骨が湖に捨てられるか?」


「この未開拓地ではなく、よそから来たユニコーンであれば、土地勘がある未開拓地出身の強者が追い詰めることが出来てもおかしくないんじゃないの?」


「……なるほどな」


地下遺跡の探索に全く関係無い話をしてると、当然の様にモンスターと遭遇。

周囲に設置されてるトラップを下手に踏むことなく討伐に成功。


そんな事を連日繰り返し……当初予定していた探索日が来てしまった。

個人的にはもっと探索を続けても良いんじゃないかと思ったけど、冗談でも口にすればメリルに怒られそうなので、素直に最短ルートを通って地上へと戻った。

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