いたちごっこ?

「結局Bランク以上のモンスターと遭遇することはありませんでしたね」


「だな~~……もしかして、強敵と遭遇して戦いたかったのか?」


現在、適当な部屋を見つけ、モンスターが潜んでないことを確認し、夕食をメリルと共に作っている。


「そんな訳ないに決まってるでしょう。私としましては、そういったモンスターと遭遇しないに越したことはないと思ってます。とはいえ、シュラが一人で戦ったあのオーガはどう視てもBランククラスの個体でしたが」


あのオーガかぁ……あの戦闘以降にも二度ほどオーガと遭遇して戦ったが、シュラがタイマンで戦ったオーガ程強くはなかった。


「あのオーガが特別だっただけだ。そこまで気にしなくても大丈夫だって」


「そうかもしれませんが、珍しさが十分の一程度だと考えると……地上の未開拓地以上に恐ろしい場所かと」


十体の内一体が筋肉量がおかしい個体か……いや、もう本当に探索する前から解ってたことだけど、本当にルーキーたちが探索すれば即ドロップアウトな遺跡だな。


「そうか~? 十体に一体、あんなスペシャルな個体が現れてくれるなら、マジ最高じゃねぇか」


「……シュラ、私が探索前に伝えた言葉を忘れたのですか?」


め、メリルさ~~~ん。包丁を握る力が結構ヤバいですよ~~~、怖いですよ~~~。


「別に忘れてねぇよ。ただ、それはそれでこれはこれって話だ。それに、筋肉の密度? が普通じゃねぇオーガの身体能力がどれほどのもんなのか、ある程度把握出来た。次戦る機会があれば、前より短時間でぶっ殺せる」


「……宣言通り、前回よりも短時間でぶっ殺してほしいものですね」


メリルの手から包丁がぶん投げられることはなく、無事調理を終えて夕食タイム。


「ねぇ。この、匂いって……大丈夫、なのか、な?」


夕食を食べ始めて直ぐ、セルシアがそんな言葉を零した。


確かに、食える肉をがっつり焼いて調味料で味付けした。

特に嗅覚が優れてないモンスターでも、気付く個体は気付くかもしれないな。


「今更気にしても仕方ないって話だな。匂いに気付いてモンスターが近寄ってきたら、その時殺せば良い」


「そうなれば、また血の匂いに引かれてモンスターが寄ってくるのではないですか?」


「……その可能性は否定出来ない」


料理の匂いで引き寄せて、その匂いで寄ってきたモンスターを殺せば、今度はそのモンスターの匂いでまたモンスターが寄ってくる……いたちごっこ? になるかもしれないな。


「けど、強いモンスターの血であれば、その強いモンスターを殺した相手がいると感じて、近寄ってこなくなるんじゃないか?」


「…………一種の手段ではありそうですね」


「俺としては、食後の運動をしても良いと思うんだけどな~~」


「そうですか。では、襲撃してきたモンスターの対応は全てシュラに任せますので」


「おっ、良いのか?」


「………………はぁ~~~~~~~~」


どんまい、メリル。

普通に考えれば、今日この後襲撃してくるモンスターは全て対応しなければならない状況は、地獄も地獄。


地下遺跡に生息しているモンスターの強さを考えれば、手練れのハンターでもそんな苦行を自ら体験したくないだろうな。


けど……俺が言うのもあれなんだろうけど、シュラはシュラでちょっと普通じゃないからな。


「……実際どうする、シュラ。晩飯を食べ終えたら俺は普通に風呂入って寝ようと思ってるけど、その後ルーフェイスと一緒に見張るか?」


「そうっすね。ぶっちゃけここがダンジョンで言うセーフティーポイントなのかは解らないんで、一応ルーフェイスと後一人見張りがいた方が良いっすよね」


「~~~~~~っ!!! では、前半は私が見張りに参加するので、あなたは後半見張りをしなさい」


「? 急にどうしたんだよ。別に俺一人で良いっての。そりゃ丁度良い時間になったら一応後はルーフェイスに任せて寝ようと思ってるけどよ」


「前半後半に別けて見張りをする……それの何処に不満があるのかしら?」


「い、いや。別に不満はねぇよ」


あっはっは!!!! シュラ一人に見張りをさせるのは、メリルのプライド的にアウトだったみたいだな。

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