歓迎のスパイス

SIDE シュラ


(こいつ、無茶苦茶堅いじゃねぇか!!!!!!)


大斧使いのオーガと戦い始めて、最初に思った感想はそれだった。

オーガらしく大斧を全力で振り回すこともあれば、的確にシュラが振るう大斬をガードする。


不意を突いてシュラが蹴りや拳を叩き込むも……これまで蹴って殴ってきたオーガとは、肉感が違った。


(もしかして、見た目通り普通のオーガじゃ、ないのか?)


先日、謎の物体によって寄生されていたオーガは、血管が何本も浮いており、眼が血走っていた。

離れた場所からは解らずとも、近づけば普通のオーガではないことは一目で解る。


しかし、現在戦闘中のオーガにはそういった一目で解る違いがなかった。

にもかかわらず……これまでシュラが戦ってきた通常種のオーガの中で、一番の強さを持っていた。


「ッシャ!!!!!!」


「グァアアアッ!!!!」


だが、その違いはシュラにとって戦闘欲を刺激するスパイスでしかなかった。


(未開拓地の、地下遺跡に生息している、オーガだからか!? 良く解らねぇが、燃える相手なのは、間違いない!!!!)


強敵と巡り会えたことに、いつも通り笑みを浮かべる。


しかし、シュラは今回の探索において、大事な事を忘れていなかった。


(とはいえ、あんまり時間を掛けてると、小言が長いメリルに怒られるからな)


鬼火こそ使わないが、それでもシュラはただ力押しで攻めるのではなく、オーガの不意を突こうと動いて大剣を振るい、時には蹴りや拳でダメージを与えていく。


(こいつ……本当に堅いな!!!!)


万が一の事を考え、戦闘が終わったタイミングでも魔力と闘気は残しておきたい。


だからといって、シュラはわざと手を抜いたりしていなかった。

それでも何度も大剣による斬撃は防がれ、不意を突いた蹴りや拳は良く決まるも、これまで人型モンスターと戦ってきた時に感じていた……肉が潰れる、骨が砕ける感触が全くない。


(もしかしなくても、トロールより強いかもしれないな)


Bランクモンスター並の強さを持っている。

そう考えると……更に闘争心が燃え上がる。


勿論、戦いを楽しむことを優先せず、倒すことを優先するのを忘れてはいない。


普段よりも自身の攻撃が通っていないのは解っていた。

それでも、シュラの攻撃は確実にダメージを与えていた。

それをシュラ自身も解っているからこそ、焦ることなく自信をもって攻撃を続けた。


「「ッ!!!???」」


そんな中、互いの渾身の一振りがぶつかり合い……結果は互角。

しかし、その衝撃で大剣と大斧が弾き飛ばされてしまった。


(ここが、勝負どころだなッ!!!!!)


そう判断したシュラはここで四肢に鬼火を纏い、攻撃力を強化。


「シッ!!!! セヤッ!!!! ゥオラアアッ!!!!!」


「ッ!!!??? ガ、アアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!」


先程よりもオーガにダメージは入っていた。

ただ、予想よりもオーガの身体能力が下がらない。


(そういえば、ラガスさんが、ダメージを受ければ、逆に痛みを感じなくなる? みたいな事を、言ってたな!!)


青痣が更に広がり、そこに火傷が追加。

鬼火は火魔法などの火とはことなり、痛みが残りやすい。


本来であればじりじりとした痛みに苦しんでいる筈だが、全くそんな様子を見せないオーガ。


(でも、これは効くだろッ!!!!!!)


シュラは鉄槌を躱すと懐に入り込み、肺の位置に渾身の打撃を与えた。


「っ!!??」


ほんの僅かな隙ではあるが、シュラはその数瞬が欲しかった。


着地と同時に今度はオーガの脚を裏を蹴り、片足膝カックンを決めた。


「ぅお、ラッ!!!!!!!」


オーガが地面に片膝を付き、シュラは大きく跳躍して両手を組み……頭部目掛けて全力で振り下ろした。


「っ!!!!!?????」


これまでの打撃を入れた感触とは違い、今回は骨が砕ける感触が伝わった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る