ぶっつけだけは止めろよ

「腕力なら、俺とフィーマなら結構やれそうだな」


「…………ラガスさん、腕力なら強化系のアビリティを使用すれば、何とかなるんじゃないですか」


……う~~~~ん、完全に忘れてた。

確かにそれはそうとしか言えないな。


「だったな。けど、だったらヴェルデもやれることに変わりはないし、ヴェルデも二刀流をやってみるか?」


「一応憧れはありますけど……やっぱり、高等技術ってイメージが強いです」


「対人戦なら、両手で振るう剣の方が僅かに早くなるけど、ここら辺で戦うのはモンスターがメインだろ」


人型の、武器を使うモンスターがいるのは解ってる。

この前セルシアが戦った……武士タイプ? の刺青コボルトとか、バリバリ武器術に特化したモンスターだったし。


「獣タイプのモンスターとか、人型じゃなかったら、技術云々はそこまで心配しなくても良いと思うぞ。ただ、目的は二つか三つ、違う行動を同時進行することだから、長さ同じ剣だと意味がない…………いや、そんなこともないか?」


使う武器が二本あっても、絶対に両方一緒に攻撃したり防御したりしなきゃいけないって訳じゃない、か。


「………………悪いな。俺も人に教える事が専門ってわけじゃないから、これが八割九割方正解ってことは言えないけど、長さが一緒でも違っても、思考力を鍛えるのに繋がるとは思う」


「運良く二刀流のアビリティをゲット出来たらラッキー、みたいな感覚で鍛えたら良いってことだな」


「そういうことになるかな。でも、本当にやるならお前らの訓練場できっちり訓練してから実戦でやれよ。さすがにぶっつけ本番で二刀流で戦うのは自殺行為だからな」


「はっはっは! さすがにそれぐらいは解ってるよ。っ……ラガスさん、あいつらは俺らが戦っても良いか」


……いや~~~、マジでここ謎が多過ぎるだろ。


「ん、ん~~~~…………死なない程度に頑張れよ」


「おぅよ!!!!」


十数メートル先に見えたモンスターは、ロックゴーレム……と、ウッドゴーレムが融合したような姿のゴーレム。


「ラガス坊ちゃま、良かったのですか? あれは、他の地域では滅多に見られないであろうモンスターだと思いますが」


「それは、俺が戦わなくて良かったのかって質問か? それとも、あいつらだけで倒せるのかって質問か?」


「どっちもですね」


「……別に、俺はそこまであのゴーレムに興味は湧かないな。シュラやセルシアはどうだ?」


そこまで魅力は感じないが、どう見てもゴーレムの中で平均以上の戦闘力はあるだろう個体。


「そうっすね……ん~~~。レグディスたちと戦ってるのを観てる感じ、もうちょいスピードがあればって感じっすね。現時点では、そこまでそそられないかと」


「…………あまり、斬り応え、がない、かな」


あら、二人ともあんまり興味を持たないのは珍しいな。


「ってな感じだ、メリル」


「それはそれで良いと思うべきか……それでは、彼らはあの……ロックウッドゴーレム? に勝てると思いで?」


「それを俺に聞くってことは、メリルはレグディス達だけじゃ勝てない、このまま戦い続ければ誰かが死ぬと思ってるってことでオッケー?」


「確実にとは言えませんが、あのゴーレムはこれまで私たちが戦った経験があるゴーレムとは、少し違います。だからこそ、シュラはあのゴーレムに対してあまり興味を持たないようですが」


そうだな~、戦ってる様子を観る限り、純粋な物理攻撃力に全振りしてるって感じじゃなくて、自身の属性である岩と木を上手く使ってる。


トリッキー……って、ゴーレムにはあまりに似合わない言葉だけど、そういうタイプなのは間違いないっぽいな。


「本当に珍しいゴーレムではあるな。そうだなぁ、俺も誰かが大怪我するとは思うけど……多分、死にはしないんじゃないかと思う。そうなる前に、レグディスが俺たちにヘルプを頼むだろ」


まだそこまで多くのハンターと出会ってきてないけど、レグディスは突っ走るタイプに見えて、そういう判断が出来るタイプの筈。


仮に出来ないのであれば、その時はその時で対処すれば良い話だ。

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