使い道はあった?

SIDE シュラ


「しゃおらッ!!!!!」


「ルゥゥァァァアアアアッ!!!!!」


「っ!! ハッハッハ!!!! 最高じゃねぇか!!!!!」


好みの戦闘スタイルである敵を前に、相変わらず好戦的な笑みを浮かべながら嬉々として大剣を振るうシュラ。


シュラが選んだ刺青コボルトはトロール並みの巨体を持ちながら……決してデブではない。

他の刺青コボルトと同様、筋肉ムキムキ状態の巨人。


そんな状態であっても、獣系モンスターの俊敏性はなくなっておらず、そこら辺のトロールやサイクロプスよりもよっぽど強く、凶悪なモンスターであるのは間違いない。


(たかがコボルトと思っていたが、こんな個体がいるとはな!!! 犠牲になった者たちがいることを考えれば、こうしてこの怪物との戦いを、楽しむのは失礼だろう……やはり、速攻で終わらすべきだな!!!!)


例え短時間であろうと……怪物との戦いが楽しいことに変わりはない。


シュラは鬼火を大剣に纏い、わざと武器を狙って破壊しようと試みる。

殺した冒険者から奪った大剣であろう得物は……利用者の巨人刺青コボルトの身体強化する効果はあるものの、魔力を消費することで何かしらの属性魔力を使えるような効果はない。


「ッ!!??」


身体能力の強化効果であれば、シュラの大剣にも付与されている。


巨人刺青コボルトは腕力強化の上位アビリティ、剛腕も習得しているが……それはシュラも同じ。

体の大きさだけに限れば巨人刺青コボルトの方がシュラを上回っているが、腕力が強いのにスピードもあるのは鬼人族のシュラも同じ。


(っ……こいつも、もしかしてあれか? 勘が……直感が、優れてるのか?)


シュラはここまで強化系のアビリティを使用し、鬼火まで使えば一分弱で巨人刺青コボルトの大剣を破壊し、一気に追い詰められると思っていた。


しかし、実際に複数の強化系アビリティに加えて鬼火を使用し始めてから一分弱が経過した今……確かに巨人刺青コボルトの大剣は耐久力が低下し始めているが、それでもまだ砕けてはいない。


同じ個所に何度も斬撃をぶつけて叩き折ろうとしていたが、その度に巨人刺青コボルトは僅かにインパクト部分をズラしていた。


「「ッ!!!!」」


そして何度目かの剣戟が激しくぶつかり合い、両者は一度距離を取った。


「ふぅ~~~~~……あれだな、すまん。ちょっと嘗めてたわ。そうだよな……ランクは、おそらくBってところか。それを考えれば、速攻で倒すのに惜しむのはナンセンスって奴だよな!!!!!」


互いのに強化系のアビリティを使いながら、魔闘気も同時に纏っていた。

練度ではシュラの方が勝っていたが、それでも巨人刺青コボルトは肉体の強靭さを上手く活用して、未だクリーンヒットと呼べる斬撃を浴びずに耐えていた。


だが、距離を取った敵が吼えた瞬間……二本の角を持つ大きな顔が眼に映った。

それが直ぐに錯覚だと気付くも、次の瞬間にはその鬼が至近距離まで迫っていた。


「ッ!!!!!!」


「ぬぅぅううううああああああああああああッ!!!!!!!」


盛り盛りにバフを積んだ状態に加えて、鬼気まで更に盛り込んだ一撃でを全身全霊で叩き込む。


結果……当初の予定通り、巨人刺青コボルトの大剣の破壊に成功。

そして、そのまま鬼の豪火を纏った斬撃によって腹を切り裂かれ、巨人は力尽きるように倒れた。


「…………やべぇ。今考えると、大剣をぶった斬ったのはマズかったか?」


短時間とはいえ、闘志が燃え上がる強敵との激闘は非常に楽しかった。

それは間違いないのだが、同じ大剣を扱う者として、巨人刺青コボルトが持っていた得物には少し興味があった。


不自然に巨大化した大剣はシュラが扱うのに不適切な大きさではあるが……一応、持って振るえないことはない。

状況によっては活用方法があったかもしれないと思い、激闘に勝利したにもかかわらず、テンション下がり気味の状態になるシュラだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る