諦めに近い?

「お疲れ様でした。ラガスさん、セルシアさん、メリルさん、シュラさん」


ルーキーたちの指導期間が終わった。

それに関する報告を終えると、受付嬢が深く頭を下げた。


「俺たちは言われた通りの仕事をしただけですよ」


「いえいえ、ラガスさんたちが彼等を指導してくれたからこそ、あの子たちはこれまでよりずっと広い視野を持てるようになりました。その視野は、彼らの今後に役立つでしょう」


もしかしなくても、そこまでを見越してわざわざ俺たちに依頼してきたのか?


ぶっちゃけ失敗してた可能性もあると思うんだが……まぁ、それだけギルドが俺たちを評価してくれてたと思えば、有難いか。


「ところで、これからどうするか……ご予定は決まっていますか?」


「特に決まってないですけど、そろそろ別の街に行こうかと考えてます」


「そうでしたか」


本当にまだ何処に行くかは決定してないけど……とりあえず、強い何かが居そうな街に向かうだろうな。



受付嬢さんとの話を完全に終え、昼飯を食い終えてから本格的に次の目的地に着いて話し合いを始めた。


「因みにですが、ラガス坊ちゃまはこれといった場所を考えていますか?」


「とりあえず、なるべく退屈しないところ、かな」


複数の人型のモンスターと戦う……戦争を想定した戦いはもう十分に詰めた。

ヴァンパイアや骨だけになったCランクやBランクのモンスターとも戦えたから、いきなり変化球が飛んできた時のケースも上手く対応出来るようになったと思う。


「俺も同じ意見っすね!!」


「……まぁ、それはそうですね。では……一旦、まだ起こるかどうか分からない件に関しては、置いておく方向でよろしいでしょうか」


「その方向で良いと思う」


せっかく冒険に出たばかりなのに、そういう事ばかり意識してても疲れるしな。


「…………そういえばラガス坊ちゃま、紅蓮の牙からの依頼は全て終わりましたか?」


「……後もうちょいだな」


「でしたら、ラガス坊ちゃまが魔靴の製作依頼を終えるまでに、次の行き先を決めたいところですね」


つまり、俺は家で留守番ってことか……いや、依頼を受けたから仕方ないんだけどさ。


「そういえば……クレア姉さんたちは、あれについて知ってんのかな」


「っ、どうでしょうか。パーティーの面子を考えれば、どこからか通達されていてもおかしくはありませんが……もし心配であれば、お手紙で伝えておいた方がよろしいかと」


「そうしとくよ」


んで、次の目的地だったな。


……色々とあるんだろうけど、色々あるからこそ纏まらないな。


「ん~~~~~~…………どうせなら、ハンターらしく未知の場所を探索してみたいな」


「未知の場所、ですか……」


次に向かう場所としては、決して悪くない。

寧ろハンターとしては当然の好奇心。

しかし……メイドとして、主人やセルシアをそんな場所に連れて行くのはいかがなものか……って考えがもろ顔に出てるな。


「…………そうですね。ルーフェイスもいることですし、予想外の事態が起こったとしても、なんとか乗り越えられるでしょう」


「おっ、珍しいじゃねぇかメリル! 俺も良い提案だとは思ったけど、お前がまさか賛成するとはな!」


「今、私たちはハンターとして活動しています。それを考えれば、未知の場所に足を踏み入れようとするのは珍しくありません。ただ、そう言い聞かせても不安は残りますけどね」


おぉ~~~、メリルの考え方が柔らかくなった。

諦めたと言えなくもないけど……とりあえず良い方向に向かってるのは間違いないな。


「未知の場所と呼ばれる場所には、いくつか心当たりがあります」


「おっ、今すぐ行ける感じか?」


「……ラガス、先程の会話を忘れたのですか。まだラガス坊ちゃま個人の仕事が残っています。それが終わるまでに、私たちでその情報を今一度しっかり集めるのですよ」


シュラが二人と一緒に行動してくれてるなら、ナンパの心配は必要なさそうだな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る