偶に凄い骨や魂
「……朝からどうしたんですか」
まだルーキーたちの指導期間が終わっていない朝、紅蓮の牙のトップと怖いメガネのお姉さんは訪れてきた。
「ラガス君が、貴族以外にも魔靴を売る気があると聞いて、訪れさせてもらった」
「朝早く申し訳ありません」
うん……まぁ、朝早く来たことに関して申し訳ないと思ってるなら、とりあえず良しとしよう。
「そうですね。一応、貴族以外に売るつもりはありますよ。ちゃんとお金は貰いますけど」
「そうか、そこは安心してほしい。金ならきっちりと用意してある」
そりゃそうでしょうね。
オクトーでトップのクランなんだから、質の良い魔靴をサクッと買うお金ぐらいはあるでしょう。
「それは良かったです。ただ、俺たちは今はルーキーたちの指導を行っていて、それが終わってからもまだ墓場で探索しようと思っています。なので、素材の方はそちらで用意してください」
学生の頃みたいに、特にこれといった強い目標を持っていない状態であればともかく、今はハンターとして活動する理由は気になる事もあるから、依頼人の要望であれこれ長距離移動はしたくない。
「あぁ、そこは任せてほしい」
「分かりました。それなら……えっと、ちょっと待ってください」
これまで制作した魔靴と、ランクによって幾らで売ったのかは一応纏めてある。
ランク四ならこれぐらい、ランク五ならこれぐらいで、ランク六ならこんな感じ……っていうことまで説明。
二人はその値段に対して特に言いたいことは無いらしく、あっさり了承してくれた。
「では、また後日情報と素材を送る。失礼した」
出会いはまぁまぁ最悪だったけど、やっぱトップの人と怖いメガネのお姉さんはしっかりしてるよな~~。
朝食を食べ終えた後、これまでと同じくギルドの訓練場で訓練を行う。
「そう、軽やかにステップを踏む感じで。場合によって、上半身の動きだけで避けても構わない。ただ、体の芯はなるべくブレないようにな!」
「「「は、はい!!!!」」」
俺は今、攻撃方法や攻防中の隙などはそれぞれ教えたので、魔弾を使って避けることに特化した訓練を行ってもらっている。
「武器で弾く、受け流すっていう行動も大事だけど、そもそも攻撃を食らわないことに越したことはない。こういう時に……あれだな。考えるんじゃなく、感じろって言うんだろうな」
操っている魔弾に殺傷能力はない。
ただ、一応それなりの速さで動かしてるから……当たれば、スーパーボールを思いっきりぶつけられたぐらいの痛みは感じるかな。
「よし、それじゃあちょっと攻撃の仕方を変えるぞ~~」
色んな方向から攻撃を飛ばしてたけど、今度は真正面から軌道を変えた攻撃にチェンジ。
「ぬがっ!!??」
「い゛っ!!??」
「あふっ!!!???」
「へいへい! 対人戦だと、股間を狙ってくるのはセオリーだろ! ちゃんとそこは自分の急所だって意識してろよ!!!」
「は……は、い!!!!」
スーパーボールを思いっきり股間に投げられたら…………うん、まぁ痛いか。
どっかの先生も、男に取って股間は内臓が無防備な状態でぶら下がってるって言ってたしな。
「攻撃は大袈裟に避けた方が良い場合もある!! 転がっても良いから、次の行動を意識しろよ~」
「「「はあああい!!!!!」」」
うんうん、何時間経っても気合十分だな。
人間が相手じゃなくても、武器を持つモンスターなら、アビリティの技を使用して器用な攻撃を仕掛けてくる時がある。
スケルトンやリビングデッドも、生前の動きを体が……骨や魂? が覚えてるからか、偶にビックリするぐらい……寧ろ褒めたくなるような攻撃をしてくる。
こいつらの話を聞く限り、まだまだ墓場をメインに活動を続ける気満々みたいだから、そういう動きへの対応が出来るに越したことはない。
「ら、ラガスさん……ランク二や、ランク三の魔靴であれば、いくらで売ってくれますか」
休憩中、好青年タイプのハンターがそう尋ねてきた。
ランク二かランク三、か…………やべぇ、それぐらいのランクの魔靴は売ったことがないな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます