一応約十年

「今日の訓練はこんなところだな」


「「「「「「「「「「はぁ、はぁ、はぁ……」」」」」」」」」」


う~~~ん、皆見事にこってり絞られたみたいだな。

俺もそれなりに絞ったけど……シュラやメリルは特に絞ったみたいだな。


「これはから飯にしようと思うけど、どうする? お前らも一緒に食べるか?」


もう俺たちに変な敵意を抱ている奴らはいなさそうだし、飯に誘っても問題無いだろう……と思ったら、全員参加した。



「すいません、エール一杯おかわり」


「かしこまりました!!」


彼等が普段使用している酒場に向かい、適当にメニューを頼む。

偶に入る高級料理店の料理と比べればそりゃ差はあるんだけど、なんでか全然酒場の料理も美味く感じるんだよな……まっ、そういう料理ばっかり食べて生きてきた訳じゃないから、か?


「ラガスさん……俺たちは、どうすれば上に登れますか」


「そりゃ頑張るしかないだろ。一発逆転を目指すのではなく、適度な焦りを持ちながら前に進んでいくしかない。って、俺に言われても不満は残るだろうけど……あれだ、メリル。俺が本格的に特訓し始めたのって幾つぐらいだ?」


「…………本格的に、であれば五歳ぐらいからでしょうか」


「そうか、五歳か。じゃあ、今まで約十年……強くなることに時間を時間を使い続けてきた訳だ。十年だ……どうだ

、割と中々な年月だろ」


この点に関しても色々と言いたくなる部分は解る。

それでも……十年、中々短くない歳月を強くなることに使ってきたんだ。


「お前たちのピークがどこでくるかは分からない。それでも、考え続けて前に進もうとする限り、弱くなることはない。計画的に進もうとしても上手くいかないことはあるだろうけど、それも全部無駄じゃない……筈だ」


性格には、失敗を無駄にしないかするかはお前ら自身だけどな。


俺の場合は……前世の記憶があるってのをズルだろうけど、前世の失敗とも言える怠惰? から目標に向かって色々と考えて、あまり時間を無駄にせず行動しようと思いながら生きてきた。


「今回、俺たちが色々と教えはするけど、その全てがお前たちに当てはまる訳じゃない。言うて、俺ら……まだ全員二十を越えてないんだぜ?」


「そ、そういえば…………けど、ラガスさんたちには、そういうのを気にしない安心感? があるんだよ」


……多分、最高の褒め言葉なんだろうな?

ぶっちゃけ、素直に嬉しい。

嬉しいんだが……俺としては、超外から見た客観的な事しか言えないのが現状なんだ。


「ありがとう。そう言ってもらえると嬉しいよ。でも、俺は優れた騎士を何人も育ててきた名指導者じゃない」


「……ラガス坊ちゃまは、もう少しこれまでの行動を誇っても良いのではないですか?」


「三年時、最後の模擬戦の事を言ってるのか? あれは、自分だったらこういう判断、動きも出来るって感覚でアドバイスしてただけだ。そのアドバイスを実行する為の細かいプロセスは説明出来てない」


浴びるほど実戦は経験してきたし、割と色んな武器を使って戦ってきた。


でも、だからって適切な指導が出来るかは別だ。


「俺は、俺らは明日からも色んなアドバイスをするが……お前たちの中には、その全てを理解しようとする必要がない奴もいるだろう」


「??? それは、なんでですか?」


「感覚的な問題だ。強くなる為に正確な知識、鍛錬が必要だけど、中には感覚で納得出来る動きが出来る奴もいる。あっ、言っとくけどそいつが天才だからとか、そういう問題じゃないからな。あくまで感覚的な問題ってだけだ」


俺が教えてた三人の中にも、もしかしたらそういう感覚を持ってる奴がいるかもしれない。

そういう場合は……あくまで俺が教えた知識を頭に留めておく、それぐらいの方が良い場合もあるだろうな……ん~~~~~~~、やっぱり誰かを指導するってのは激ムズだな。

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