そのムーブは止めような

「よし……そっちの五人は俺と。残りの五人はとりあえず……メリルと戦ってもらおうか」


十人纏めて相手をしても良いんだけど、十人でのレイドバトルとかやったことないだろうし、五人ぐらいが丁度良いよな。


「俺たちを一人で相手するとか……怪我しても知りませんよ」


「おぅ、大丈夫大丈夫。ドンと来い。お前らより強いモンスターと何度も戦ってきたからな。しっかり潰し殺すぐらいの気持ちで来てくれ。あっ、使う武器は刃引きした物じゃなく良いぞ。普段使ってる相棒をそのまま使ってくれ」


「ッ……あんまり下の人間嘗めてっと、かち上げんぞ!!!!」


「そぅそぅ、それぐらいの気構えで来てくれ」


後で今は本気を出してなかったら、もう一度戦れ!! って言われても面倒だからな。

最初から殺す気で来たのであれば、言い訳のクソも残らないだろ。


「私に対しても同じです。間違っても……私が女性だから手加減したんだ、なんて下らない言い訳を吐かないように」


……あれだよね、なんだかんだでメリルも煽り性能高いよね。


「そういう訳だから。俺らはちゃんと強いから、遠慮せずに掛かってきてくれ。それじゃ……始め!!!!」


俺たちが指導係なので、審判も俺たちが行う。

ルールはぶっ倒れるまでってところかな。


えっ、俺たちが負けた場合?

ん~~~~……今のところ、その可能性は一ミリも考えられないな。


「ちょこまこと、逃げやがって!!!」


「逃げてばかり、なんて、本当に指導係かしら!!!」


「あれだよね……お前たちみたいなタイプって、皆面白いぐらいそういう言葉を吐くよね。そういうのは、後衛の攻撃を含めてでも良いから、全力を出してない余裕な状態で軽々と俺に攻撃を当ててから、そういう言葉を口にした方が良いぞ」


いや、ほんとね……ダメだ。

あんまり俺自身がこういう事を思ってしまうのは、傲慢に当てはまるか?


でも……まだ若いルーキーのうちからこんな小悪党、三下ムーブをかます様な性格だと、どこかで痛い目に合う気がするんだよな……とりあえず今みたいな感じに?


「ほら、どうした。まだ体力は有り余ってるだろ。一対五なんだ、もっと色々考えて試してみたらどうだ」


「こんのぉ……上から見下ろしやがって!!!!!」


「そこはほら、これでも一応お前たちの指導係になる訳だから、ランクにそこまで開きはないけど、立場的には一応上なんだよ」


「うるせぇええええええッ!!!!!」


うん、思い切りが良い攻撃ではあるな。

Dランクモンスターが相手でも、クリティカルヒットすれば、それだけで戦況を傾けられそうだ。


他の連中も自信満々になる攻撃力だけはあるな。


「よし、もう必殺技とか奥の手とかはないか? ないなら終わらせるぞ」


「っざけんな!!! ふざけたことぬかしてんじゃ「全然ふざけてないぞ」っ!!?? ごはっ!!!!!!」


あれだな~~、タンク専門のルーキー以外は、ちょっと攻めばかりに意識がいってるな。

そりゃ勿論、遭遇したモンスターを倒さないと強くなれないし、大きな収入が入ってこないのは解るけど、よく言われてるだろうけど……全員、もう少し視野を広げないとって感じだな。


「がっ!!??」


「ぐふっ!!!!!」


「ま、参りました!!!!」


「っ……降参です」


「ほい、お疲れ様」


うんうん、聞き分けが良くて助かる。


「向こうの試合も終わったみたいだし、少し休憩してから今度はセルシアかシュラと試合な」


俺とメリルとだけの試合でも十分かもしれないけど、こいつらに指導を行うのは俺だけじゃなくて一応セルシアたちも行う。

そういうのを考えると、今の時点でハッキリと差を認識してもらわないとな。



「よし、十分ぐらい戦ったな。さっき俺と戦った奴らはセルシアと。さっきメリルと戦った奴らは、シュラと試合を行うぞ。それじゃ、好きなタイミングで始めてくれ」


俺とメリルにコテンパンにやられたからか、最初からマジな表情になってるけど、多分結果は同じだろうな。

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