迅速な処理
「お、お待たせしました!!」
職員が慌てて戻って来たけど、特に豪華すぎる待遇を受けたわけではない……って思ったのは最初だけだった。
俺たちが現金をチップに交換した後、明らかに周囲にそれなりにできる職員が増えた。
これは多分あれかな。
俺たちが同じテーブルに座った人たちがイカサマをしたり、因縁を付けながら絡んできたりした時の為に、迅速に対応するためだな。
まっ、悪い気はしないな。
主に公爵家の令嬢であるセルシアがいるからだろうけど、面倒事を店側が対処してくれるのはありがたい。
「それじゃ、適当に楽しむか」
ルールは解っているので、各々自由に楽しむ。
(いきないエースが二枚、か)
トランプという紙がダンジョンの宝箱から手に入る為か、ポーカーやその他のトランプを使った賭け事はそれなりに盛んなんだよな。
つっても、トランプ以外のカードゲームが出ないってのは……謎だよな~~。
もしかしたら……日本の色合いが強い国のダンジョンだと、花札が出たりするのかもな。
「ふふん」
おっちゃんは八と七のツーペアか。
得意気なところ悪いが、役はこっちの方が上なんだよな。
「フルハウス」
「「「っ!!??」」」
「ッ……クソ!」
手札を入れてエースが三つと七のペアが一つ。
初回から強気に出て正解だったな。
とはいえ、手元にキングが二枚来たとしても、残り五枚で何も役が揃わない場合もある。
その際は一応勝負に出たが、四のスリーカードで負けた。
逆に十が二枚手札に来た時に嫌な流れを察知して、上手くフォールドして逃げられたケースもある。
そのゲームで勝利した人はスペード揃いのフラッシュだった。
後で他のゲームもやったけど、やっぱりポーカーが一番楽しかったな。
「おい、てめぇ! クソが「お客様、向こうでお話ししましょうか」な、なんだよお前ら!!」
……一応この店に来店したのは初めてだが、交換したチップは初期量より五割ほど増えていた。
俺以外のメンバーも何だかんだでチップの量を増やしており、シュラなんてこういうのが苦手そうなイメージがあるが、見事三倍まで増やしていた。
初来店だからこそのビギナーズラックが発動してるのかもしれないけど……負けが続いてる人たちからすれば、俺たちがガキが順調に増やしてるのは物凄く目障りなんだろうな。
「大丈夫ですか、ラガス坊ちゃま」
「全くもって大丈夫だ。店側が迅速に処理してくれるみたいだからな」
「そうみたいですね……しかし、そうなると店を出てから問題ですね」
メリルの言うことは解る。
店の中で起こった問題は後々店に関わってくるから、カジノ側も必死で対応するが、店の外で起きた問題に関しては別問題だ。
「でも、職員から一応セルシアの情報を伝えられるだろうから、下手に絡んでくることはないんじゃないか?」
「オルトーとセルシア様の実家がどれだけ離れてると思ってるのですか。それに、今の立場は一介のハンターです」
「……もう少し大局を見てくれると嬉しいんだが、それが出来る人であればそもそもガキが運良く勝ってるからといって、絡んできたりしないか」
ったく、本当に面倒事に困らないな。
今回に限っては俺が意図的に何かしたりしてないってのに。
「面倒っすね……上手く乗せて、この場でぶっ潰しますか?」
「悪い手じゃないと思うけど、相手にするのも面倒だから、とりあえず放っておこう」
「分かったっす」
結局、それ以降面倒な輩が絡んでくることはなく、全員それなりに勝って店を出た。
店を出てからもあのギャンブル依存症に見えた兄ちゃんを店側がどうにかしてくれたからか、店外で絡まれることはなかった。
「……えっと、もう一回言ってもらっても良いですか」
「その、ギルドとしましてはラガスさんたちにルーキーたちへ、ダンジョン探索の指導を行って頂きたいと思っております」
目指せ五十層!!! って思ってたら、別方向から面倒が飛んできた。
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