キレキレな二人

「んじゃ、頼んだぞセルシア」


「うん、頑張る」


三十層のボス部屋前に到着し、無事ルーフェイスが軽く威嚇してくれたお陰で特に面倒な連中に絡まれることなく自分たちの番が回ってきた。


「どうやら、ナイトが相手の様ですね」


「剣対決だな……さてさて、どう倒せるかな」


「万が一、負けるかもしれないとは思っていないのですね」


……だってな~~、三年間ほぼ毎日俺たちとバチバチに戦ってきたんだぞ。

いくらデス・ナイトがそこら辺のモンスターと比べて達者な腕を持ってたとしても、セルシア以上の腕を持ってるとは思えない。


まぁでも、万が一ぐらいは考えておいた方が良さそうだな。


「やっぱり、メリルはちょっと心配性が過ぎるんじゃないか? ほら見ろよ、全く危なげなさを感じないぞ」


「……まだお互いに様子見といった状態です。ここからどうなるか解りません」


メリルの言う通り、まだお互いの剣がぶつかることはなく、躱す余裕がある速さでしか動いてない。


とはいっても、観てる感じ……現段階でも、速さはややメリルに分がありそうだな。

デス・ナイトが何を考えてるのかさっぱりだけど、メリルはまだ本当に戦いを楽しんでる。

油断し過ぎは良くないんだろうけど、まだどうこうなる差はないな。


「確かにあれだな……セルシア様が紫電崩牙を使ったら直ぐ終わるかもしれねぇけど、普段使ってる武器のまま本気で戦うのであれば、そう簡単に終わらないぐらいには強いな」


「当たり前じゃないですか。デス・ナイトはBランクモンスターですよ」


「それを言うなら、セルシア様はラガスさんのパートナーだぜ」


「…………」


あら、今日のシュラは返しがキレキレだ。

俺としてはちょっと恥ずかしいけどな。


「シュラとしてはファイルトロールとデス・ナイト、どっちと戦いたいんだ?」


「ッ……また難しい質問っすね。ファイルトロールのパワーは魅力的っすけど、デス・ナイトもそれなりのパワーは持ってそうだし……加えて、良い腕もある……いやぁ~~、マジで中々答えが出ないっすね」


言いたい事は解る。

ちょっとタイプは違うが、それぞれに良い感じの魅力があるからな。


「お二人とも気楽ですね」


「このダンジョンの主な目的はこの先起こるかもしれない戦争に備えての鍛錬だろ。だったら、三十層のボスぐらいの相手に一々気張ってられないだろ」


「……なんだか、今日はシュラだけではなくラガス坊ちゃまも返しがキレキレですね」


「そりゃどうも」


ダンジョンの中で気張らないってのも駄目だとは思うけど、短期間の間に一気に下層へ行くってなると……下層に到着するまでは、あんまり気を張ってても疲れるだけだよな。


「おっ、二人とも属性魔力を纏い始めたっすね」


「みたいだな」


「戦況が軽く動きましたね……ラガス坊ちゃまの見立てでは、どちらの方が有利に動きそうですか?」


「まだ変わったばかりだから何とも言えないけど……一撃に重さに関しては、やっぱりデス・ナイトの方に分がある」


元々の体験、身体能力を考えればそうなんだが、属性魔力の中で闇は火や土と似ていて、攻撃力に寄った性質がある。

一応防御力もそれなりにあるから……上手く盾で一撃を止められてしまうと、ちょっとヤバいかな。


「でも、スピードの上り幅はセルシア様が上っぽいですし、割とさっきまでの延長戦に近いんじゃないっすかね」


「……セルシアの攻撃力、切れ味、スピードは上がった。でも、防御力はデス・ナイトの方が上がっている」


「あぁ~~~……そうっすね。油断してはいないと思うっすけど、楽観できる状況ではないっすね」


「そういう事だ。まぁ、それをセルシアが解ってないとは思わないけどな」


もっと深く斬り刻んで、深く突き刺したいであろう場面はいくつかがあったが……それでも耐えてる。

メンタル面も確実に成長しているってことだな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る