かけるだけ無駄だと解る
「熱気が非常に半端ないな」
「まだまだこれからダンジョンに潜る方たちがいるということでしょう」
「呼びかけてその日限りのパーティーを組む……普通に考えて怖くねぇか?」
「そこはハンター同士の信頼、今後の活動を考えればバカな行動を起こさないと思ってるのでしょう」
メリルの考えには一理ありだな。
ダンジョンは地上よりも人が死ぬ可能性が高いみたいだから……その日活動していたパーティーが即解散するのも珍しくないらしい。
「しかし……やはりと言うべきか、私たちを勧誘しようと考えている者たちが多いようですね」
「既にパーティーが出来かかってる奴ら、そういうパーティーに自分を売り込みたい連中、どちらも俺たちが魅力的に見えるってことだろ」
自分で言うのはあれだが、多分そうなんだろうな。
でも、リーダーの俺にセルシアという前衛がいて、斥候役はメリル。
タンクっぽい見た目のシュラがいて、従魔のルーフェイスがいる。
どう考えても穴がある用には見えない。
だからか、視線を送ってくるだけで、実際に声をかけてくる同業者たちはいなかった。
「んじゃ、気を引き締めて頑張ろう」
「うん」
「「はい!!」」
「ワゥッ!!」
ふんどし締め直し、いざ初のダンジョンアタック。
「……聞いていた話通りの光景だな」
「そうですね。それより……少し、匂いが厄介ですね」
中に入ると、目に入った光景は遺跡。
ただの遺跡ではなく、どこかおどろしい雰囲気だ。
「確かに厄介かもな。血の匂いに慣れてなきゃ、この場で吐いていてもおかしくない。というか、鼻が良い獣人族の連中からすれば、最悪のエリアだな」
「シュラの言う通りだな……上層に出現するモンスターはそこまで強くはないようだけど、この匂いは一種の武器だ」
大袈裟かもしれないけど、考えは変わらない。
獣人族からすれば、鼻を塞ぎたくなるだろう。
『ルーフェイス、大丈夫か?』
『うん、大丈夫だよ。嗅覚をシャットダウン? したから問題無いよ!!』
『そうか、それは良かった』
どうやら本当に大丈夫みたいだな。
「ラガス坊ちゃま、さっそく敵が来ましたよ」
「グ―ルか……まっ、ここら辺はまともに相手しなくて良いだろ」
ザ、アンデットといった見た目のモンスター、グール。
ランクは一応Eだが、正直噛まれなければどうということはないモンスター。
抵抗力がない一般人が噛まれたら、そのままグールの仲間入りしてしまうが、抵抗力があるハンターたちであれば、意識を奪われて仲間入りしてしまう事はない。
毒状態になる可能性はあるみたいだけど……この辺りの階層に出現する個体はそこまで心配する必要はンさそうだな。
「当然っちゃ当然っすけど、全然歯ごたえないっすね」
「まだ一層だからな。とりあえず魔核だけ回収して、サクサク進もう」
地図に書かれてある最短ルートを進み、早く下層へと向かう。
「……この辺りでは、ラガス坊ちゃまの無双状態ですね」
「まだ上層だからな」
上層に出現するグール、スケルトン程度であれば、光弾を操るだけで全て倒せる。
撃って倒しても直ぐに消えることはないから、良い感じに魔力も節約できる……上層から中層は俺にとって最高の狩場なのかもしれないな。
つっても、このダンジョンにはあまり長居したくないな。
「私たちの、出番、あまり、ない?」
「ん~~~……正直、あれじゃないか。ニ十層以降に出現するモンスターじゃないと、あまり楽しくないと思うぞ」
「それ、なら……その時まで、我慢、する」
「いや、別に我慢しなくても良いだぞ。いくら俺たちの探索速度が速いって言っても、直ぐに二十一階層に到着できる訳じゃないからな」
ルーフェイスの背中に乗って一気に階層を下ってくって手段もあるけど、嗅覚が使えないってなると、同業者たちとぶつかる可能性があるからな~。
「……それなら、偶に、動く」
「おぅ、その方が良いぞ」
とりあえず、最初の目標は目指せ十階層だな。
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