そういう立場だった
陸鮫の料理を堪能し、翌日はオルト―への再出発に向けての準備。
「あっ、ラガス君」
「ホバーさん。どうも……買い物ですか?」
俺のファンであるハンター、ホバーさんが声をかけてきた。
相変わらず人の良さそうな顔してるな……こういう人がファンってのは、普通に嬉しいもんだな。
「実は、ラガスさんに伝えたい事があって探してたんですよ」
「?」
周囲に聞こえない声で、こっそり聞いた話を伝えてくれた。
「はぁ~~~~、なるほどぉ……屑は屑なりに頭を使おうとしてるってことですね」
「そうなんだよ。もしかしたら今日にでも動いてるかもしれない。俺は俺でちゃんと事実を広めようと思ってるんだけどさ」
「……ありがとうございます。でも、俺やメリルたちの為に動いた結果ホバーさんに迷惑はかけたくないんで、ほどほどで大丈夫ですから」
「はは、解ったよ。そうだね、程々に頑張るよ」
本当にそれだけを伝えに来てくれたようで、直ぐに別れた。
そして当然……俺たちの表情は決して明るくない。
「討伐戦では何も仕掛けてこないと思ってたけど、そういう事を考えてたのか……ある意味関心ではあるな」
「……非常に不本意ではありますが、やり方としてはそう思わざるを得ませんね」
「おっ、メリルがあぁいった輩を褒めるのは珍しいな」
「ある意味です。純粋に褒めてはいません」
本当にその通りだよメリル。
討伐戦時に仕掛ければ、その場で俺がカウンターと称してどうとでもすることが出来た。
裏の人間を雇って俺を殺そうとしてれば、その場で自白させることも出来たかもな。
なのに……噂を広げて俺の評判を下げようとする、か……あぁいう輩って、本当に悪知恵だけは働くんだな。
「ラガス、今の内に、殺る?」
「……セルシアさん、あまり物騒なことを言わないでくれ」
「うん、分かった」
正直殺ってしま方が早いのは確かなんだけどね。
「殺ってしまわないのですか、ラガス坊ちゃま」
「お前……俺を何だと思ってるんだよ」
「ラガス坊ちゃまは、自身のもう一つの立場をお忘れなのですか?」
「はっ? 何言って…………あぁ~~、はいはい。解かった。降参だ」
そうだなそうだな。
その立場であることを指摘されたら、自分に害をなすバカなんてさっさと殺した方が良いって思われても……一応仕方ない、か。
「でも、今すぐ……自分の手で殺ろうとは思ってない」
「そうですか。分かりました。しかし、何かしらの対処はした方が良いと思われます。現在私たちはハンターという職に就いていますが、元は男爵家の令息とその従者、そして公爵家の令嬢です」
「どうしても少なからず、元から持っている悪感情が更に大きくなる連中がいるってことだな」
「その通りです」
……俺にそういう感情を持ってる奴らとは、無理に仲良くする必要はない。
それはもう誰かに言われずとも忘れてないし、頭から離れることはないだろう。
でも……これから先、仲良くなれたかもしれない人物に嫌われるかもしれないってのはなぁ……小悪党は本当にやることなす事イラつかせてくれるな。
「この件に関しては、俺の方だけで片付ける。予定通り、明日にはまたオクトーへ向けて出発する」
「「了解」」
「うん、分かった」
「ワゥ!!!」
ホバーからそれなりに重要な事実を教えてもらった夜、一つの通信用水晶を取り出し、人気のない場所で通話を始めた。
『お久しぶりですね、マスター。ハンターになってからのご活躍、既に耳にしています』
「もう伝わってんのか?」
『情報収集も俺たちの仕事なのをお忘れですか?』
「そうだったな……まっ、あれだ。お前たちに一つ頼みがあって、今日は連絡したんだ」
ここ数日間の間に何が起こったのかを話すと、セルシアやメリルと同じ反応をされた。
『なんとも不届きな……今すぐ殺しましょう』
「話が飛躍し過ぎだ。でも、それなりの代償を与えてくれ。ほら、あれだ……殺さない方が、死よりも辛い場合ってあるだろ」
『ふふ、それもそうですね。かしこまりました。吉報をお持ちください』
「よろしく頼むよ」
あいつらも普通に生活してれば良いもんを……まっ、これでもう完全に悩む必要はなくなったな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます