落ちる才能もある

どうなるか、正直解らない……不安な気持ちの方が大きかったが、実際に戦いぶりを見てみると、そうでもなかった。


「……皆、意外と戦えてるな」


「そうですね。コンビネーション不足が強いと感じるペアは、今のところいませんね」


メリルの言う通り、先程までの不安かは消えていた。


三年生は今まで大会の舞台で戦う様子を観てきた、もしくは実際に戦ったことがあるからか、本当に良く動けてるな。


セリスとレアードに関しては本当に文句がない。


イーリスとペアを組む生徒はちょっと可哀想かも……と思っていたが、ペアを組むことになった生徒はまさかのリーベ。

しかし……予想外な事に、イーリスは自身の攻撃を行いながらも、しっかりとリーベをサポート出来ていた。


リーベは普段から気を使える奴だから、初めての本格的なタッグ戦でも上手く戦えると思ってたけど、イーリスがあれだけ上手く戦えるとは……そういう面も成長してるんだな、イーリスのやつ。


スレイドはフローラさんがパートナーじゃないからか、少しやり辛そうだったけど……大きな問題があるようには思えないな。


「三年生は勿論、一年生や二年生も優秀ですね」


「そうだな……落選させるのが勿体ないと思ってしまうな」


戦争ではないが、国と国がぶつかり合う大会。

その大会に選出するメンバーを選ぶのに、妥協してはならない。


落さなければならない才能もあるってことか。


個人戦、ダブルス以外にも大会項目はあるが、とりえず今日のところ終了。

俺たちは選考に参加した生徒たちを評価した紙をお二人に渡し、帰ろうとしたら……捕まった。


「さぁ、好きなだけ食べてくれ!!!」


「遠慮する必要はありませんよ」


お二人に連れていかれた場所は、王都でも有名な高級レストラン。

料理だけではなく内装や、景色も抜群……ルーフェイスにも好きなだけ食べてさせて構わないと言われたので、断れなかった。


ちなみに、ルーフェイスは使者の方から頼まれた通り、騎士たちの訓練相手を行っていた。

使者の方からざっくりと聞いた話だと、殆どの模擬戦でルーフェイスが圧勝したらしい。


話を聞いたとき、失礼かもしれないが、それはそうだろうなと思ってしまった。

だって、ルーフェイスはまだ子供とはいえ、立派なAランクのモンスター。

加えて……人や武器を使った相手との戦闘は、俺たち何十、何百と繰り返しているので慣れたもの。


階級や実力も上の人になってくると、さすがに楽勝とはいかなかったようだが、結果的にはルーフェイスが勝利を収めたと聞いた。

まっ、ガチ勝負だったらどうなるかは解らないけど……そうなった時、力を発揮するのはルーフェイスも一緒だからな。


「あの……ご飯を奢ってくれるのは嬉しいんですが、選考の方は大丈夫なんですか?」


「あぁ、うちの頭が回る奴に回してる。後で俺も戻ってからしっかりチェックするがな」


「私も同じです。最終確認はしますが、そういうのが得意な者にまず見てもらった方が早いですからね」


……間違ったことは言ってない気がするけど、それは……それを押し付けられた頭の回る人? が可哀想な気がしてきた。


「おっと、そういえば先に聞いておかないとな」


「何をですか?」


「ラガスたちは、大会までに何か用事はあるか」


「いえ、特にありませんけど」


「よし! それなら、合宿に参加してほしい。勿論、セルシアたちもだ」


……合宿? えっと…………なるほど、そういう事か。

うん、良い提案だと思う。思うんだが……もう少し前もって教えてほしかった。


これに関しては、国王陛下からの手紙にも記載されてなかった。


「合宿……面白、そう」


セルシアさんはノリノリようだし、個人的にも面白そうだと思う。

断る理由はない。


「分かりました」


二人からの申し出を了承し、数日後に再び王城へ行くこととなった。

因みに……俺やシュラたちもそこそこの量を食べたが、ルーフェイスが遠慮なしに高級料理を食べまくったので、二人の懐がかなり冷え切ってしまった。


本当にご馳走様でした。

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