強化禁止

「ただいま」


「おう、おかえり。熊系のモンスターってのはグレーグリズリーだったか」


グレー続きだな。

どっちの方が強いとは一概に言えないけど、セルシアもDランクモンスター相手に危なげなく勝利だな。


そして……うん、やっぱり死体はボロボロだな。


「セルシア。グレーグリズリー相手に、肉弾戦で戦っただろ」


「うん。良く、分かった、ね」


「そりゃ、それだけズタボロなグレーグリズリーの死体を見れば分かるさ。セルシアが普段通りに戦えば、綺麗な斬り傷がある筈なのに、それが一切ないからな」


ただ肉弾戦で倒しただけじゃなくて、それなりに遊んだ……じゃなくて、練習相手にしたんだろうな。


確かにセルシアは体術がメインの武器ではないけど、それなりに出来る方。

身体能力や、強化系のアビリティの差を考えればもっと早く、もっとあっさり倒せた。


にも拘わらず、グレーグリズリーの死体は顔も腕も腹もボコボコのボロボロだ。

ちょっと同情しなくもないけど……こいつもセルシアを視界に入れた瞬間、ぶっ倒すって決めたんだろうし……まっ、どんまいとしか言えないな。


「解体、手伝おっか?」


「……いや、いい。一人で、やる」


「そうか……まぁ、頑張れ」


ロックスの解体はもう少しで終わる。

セルシアが一人でグレーグリズリーの解体をやるとなると……ちょっと時間が掛かるな。


「ふぅーーーー……俺も少しは動くか」


「お供します」


「……おう。ルーフェイス、二人の護衛を頼んだ」


「ワゥ!!!」


ルーフェイスに護衛を頼み、メリルと一緒にお手頃なモンスターを探す。


セルシアとメリルが帰ってくるまで、ルーフェイスが近場に生息するモンスターの情報を教えてくれなかったってことは、おそらく近くに良い感じのモンスターはいない。


「ラガス坊ちゃま、どのようなモンスターを狙いますか」


「そうだな……二人と同じくDランクか、Cランクのモンスターが良いかな」


別に高ポイントのBランクモンスターが相手でも良いんだけどな……久しぶりにがっつり、一人だけで戦いたい気持ちはある。


あっ……よくよく考えればメリルと一緒に行動してるんだし、Bランクのモンスターと遭遇すれば、絶対に自分も一緒に戦うって言うよな。

それを考えると……メリルの心配ラインに入らないCランクのモンスターが一番良きか。


ん? あれは……はは、丁度良さそうだな。


「メリル、あれって確かCランクだったよな」


「あれは……そう、ですね。Cランクのモンスターです。ただ、Cランクの中でも厄介な部類に入るかと」


「安心しろ。俺の魔弾の方がよっぽど厄介だから」


「……それもそうですね」


視界に入ったモンスターはヴェノムスネーク。

ランクはCで……簡単に言ってしまえば、体が大きい毒べビ。


確かに毒は厄介かもしれないが、毒の攻撃なら一応持ってる。


「よう、遊ぼうぜ」


「シャァァアアアアアッ!!!!!!」


あら、完全にこっちに気付いてたっぽいな。

赤外線感知? じゃなくて熱感知か。


姿や魔力、足音を消しても蛇系のモンスターは珍しい感知方法を持ってるし、その辺りも厄介な点だ、な!!


「大丈夫そうですか、ラガス坊ちゃま」


「あぁ、俺一人で問題無い」


意外と瞬発力はあるけど、それでも身体強化のアビリティを使えば、躱すのは余裕。

使わなくても大丈夫そうな気がするな。そっちの方が緊張感あるし。


でも、あの毒々しい牙には噛まれたくないな……いや、ここはセルシアと同じ様に、ちょっと遊ぶか。


「おっと! そういえば尾の先から毒を出せるんだったな」


一点集中して速さや鋭さを増したり、全体攻撃も出来る……うんうん、本当に厄介厄介。


「ふんッ!!!」


「ッ!!?? ……シャッ!!!!」


「良く動けるな」


人に当てればゲロるくらいの力で殴ったけど、痛みに耐えながら体を振るって潰そうとしてくる。

こういうところも人にはない強みだよな。


はは!! Cランクを相手に強化のアビリティなしは、良い感じに燃えてくるな!!!

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