一人では無理でも……

「ラガス坊ちゃま、そろそろ切り上げ方がよろしいかと」


「もうそんな時間か?」


「えぇ、そうですね。屋敷に到着するまでの時間を考えると、この辺りで採掘作業は終了した方が良いかと」


「……良い感じに集めることは出来たし、そうだな。そろそろ帰るか」


とりあえずドレッグさんたちに頼まれた分の魔靴を造るのに必要な鉱石は足りる。


腕が鈍らない様に魔靴を造ってたら底を尽くかもしれないけど……そうなったらお金はあるんだし、店で買うしかないか。


「ラガス。まだ、採掘したい?」


「ちょっと物足りなさはあるけど、しょうがないよ。鉱山に到着するまで結構モンスターに遭遇しちゃったからな」


到着する前の連戦がなければな……嘆いてもしょうがないか。

戦うって選択肢を選んだのは俺な訳だし。


「確かに、短時間で、一杯遭遇した、ね」


「だよな~~~。それなりにモンスターが生息してるとは思ってたけど……いきなりオルトロスと遭遇するしな」


「あの遭遇には私も驚きました。先日アサルトワイバーンと遭遇したことを考えれば別段おかしくないかもしれませんが……普通はBランクのモンスターとそう何度も遭遇しません」


「メリルの言う通りだな。俺は中々タフで戦ってて面白かったけどな」


「相変わらず脳筋ですね。普段なら遭遇しても問題無いありませんが、今回の目的は鉱山での採掘。それを考えれば、あまり遭遇したくない相手だったのですよ」


「う……す、すまん」


はっはっは! 今回に関してはメリルが百パーセント正しいな。

オルトロスの素材は正直おいしいと思ってるけど、やっぱりもっと早く鉱山に付いてたらって思いはある。


ただ、いつまでもセルシアの屋敷にお邪魔するわけにはいかない。


明後日には王都に……学園に戻りたいからな。


「そういえば、Bランクのモンスターと戦った訳だが……どうだ、一人で倒せそうか? シュラ」


「…………」


直ぐには答えないか。

まだまだ成長中のシュラだが、俺的にはまだちょっと届かないんじゃないかと思ってる。


ポテンシャル的にはいずれ一人で倒せるようになってもおかしくない。

いや、現時点でも最高の一撃が入れば倒せる力はある。


ただ……あのレベルが一人だけに意識を集中させると、それはそれで厄介。

俺なら、まぁ……一人で倒せると思う。


つーか、これだけぶっ飛んだ手札を持ちながら、Bランスのモンスターを倒せないのはアウトだ。


「まだ、ちょっと難しいっすね」


「そうか」


「でも、メリルと一緒なら勝てると思うっす」


「へぇ~~……そうだな、二人ならBランクのモンスターが相手でも上手くやれるかもな」


お互いに足りない部分を補える。


二人がタッグを組んで戦えば、大怪我することなく倒せるか。


「私の実力を認めてくれているのは嬉しいですが、そういった思いがミスを生む可能性があります」


「はいはい、分かってるって。てか、Bランクみたいな怪物を相手に油断なんて出来ないっての」


……シュラは気付いてないっぽいけど、メリル……今、微かに笑ってたよな。

いつもシュラに苦言を呈してるけど、実力は認めてる。


だから今みたいな言葉を口に出されると、思わず口角が上がってしまう程嬉しいんだろうな。


「……私は、まだまだ、ね」


「そうか? オルトロスを斬り裂いた一刀は本当に綺麗だった思うけど」


「あれは、紫電崩牙のお陰。私の、力じゃない」


頑なだな~~~~。

そりゃ紫電崩牙はこの世に数えるほどしかない、最高級の武器だと思う。


それは間違いないと思うけど、使い手が悪ければ武器も腐る。

俺はセルシアだからこそ、寸分狂わずオルトロスを一刀両断出来た……そう思うんだがな~~。


「それより、やっぱりラガスは、戦い方……間合いの取り方? が、上手い」


「ありがとな。でも、俺のメイン武器である魔弾を活用するには、そこが上手くないと痛い目に見合うんだよ」


距離の取り方を見誤れば、手痛いダメージを食らってしまう。

相手が一瞬で動ける距離を考えて動いて、着実にダメージを与えていく。


魔弾だけを使って戦うなら、そこを意識しないとな。


帰り道はお互いの長所を褒めていると、あっという間に街に到着。

そろそろ日が落ちる時間だし、狩りを行おうと考えるモンスターが減る時間だから、昼間みたいに何度もモンスターと遭遇することはなく、無事に夕食前に到着できた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る