褒めて褒め合う

魔弾に今度は竜殺しではなく獣殺し……ビーストキラーの効果を付与。


オルトロスは見た目完全に獣だし、これで大ダメージを与えられると思ったが……アサルトワイバーンの時と同様に野生の勘が働いたのか、一撃も食らうことなく必死で躱した。


いったいどれぐらいのダメージを与えられるのか知りたいんだけどな。

まぁ、あんまり俺の魔弾を躱すことに必死になったら他の攻撃を捌けなくだろうな。


獣殺しの効果を付与した魔弾を撃ち始めてからシュラやルーフェイスの攻撃がクリティカルヒットするようになり、だんだんとオルトロスの動きが鈍くなる。


「セルシア様、今です」


「分かった」


激しい戦いの中でも二人の会話はしっかりと耳に入っており、オルトロスがシュラに狙いを定めた瞬間にセルシアは生産した粘着性の糸でオルトロスの脚を封じた。


何度も食らってれば、そこも野生の勘で回避できたかもしれないけど、初見じゃ回避できずに引っ掛かった。

シュラは既にその場から離れており、オルトロスは食らいつくことも出来ず、勢いを殺せず地面に頭からぶつけた。


「ふっ!!!!」


そして最後はチャンスを探していたメリルの渾身の一刀が放たれた。

ただの雷の斬撃……ではあるが、それでも今のオルトロスに躱す時間はない。


顔面から地面に激突した影響で、即座に炎と雷のブレスで相殺するという判断も行えず、雷の刃によって体は文字通り真っ二つに切り裂かれた。


俺の獣殺しの効果を付与した魔弾でも、あそこまで大ダメージを与えられない。

シュラでも……いや、体を抉り取ることなら出来るか?


なんにしても、見事な斬撃だった。


「お疲れ様、セルシア」


「ラガスも、お疲れ様」


「良い攻撃だったな。ほら、凄い綺麗に斬れてるぞ」


雷の斬撃で真っ二つにされたオルトロスの体は、雷の影響で毛皮が焦げたりはしていなかった。

断面を見る限り……うん、魔核も斬れてない。

本当に見事な一撃だ。


「ありがとう。でも、まだまだ。今の斬撃は、メリルがサポートしてくれたから、上手く当てられた、と思う」


セルシアに褒められて、メリルはまんざらでもない表情で頭を下げた。


ん~~~……確かに、あのメリルの働きはナイスだった。

結局最後まで戦いには加わらず、他のモンスターが戦いに割り込んで来ないか警戒し続けて、良いチャンスが来たところでオルトロスの気付かれず移動。


そして粘着性の糸を放出してオルトロスの動きを上手い具合に止めた。


「確かに、あれは本当にナイスなタイミングだったな」


「ふふ。そう言うシュラも良い位置にオルトロスを誘ってくれたじゃありませんか。セルシア様が雷の斬撃を放つ位置として最適でしたよ」


「そりゃどうも」


うんうん、シュラも良い働きをしてくれた。

シュラが本気を出した攻撃はオルトロスに十分効いてた。


あぁいう、打撃系の攻撃で与えられる痛みはこう……ズキズキと残るから嫌なんだよな。


『ラガス、僕も頑張ったよ!!!!』


「あぁ、ルーフェイスのお陰で本当に戦いやすかったよ」


やっぱりオルトロスにとって、本当に警戒しなければならない相手はルーフェイスだったんだろうな。


シュラに三、俺に二。後の五はルーフェイスに意識を割ってた。

ルーフェイスが良い感じに意識を引っ張ってたからこそ、俺の魔弾やシュラの金棒が良い感じに当たった。


まぁ、だからって俺やシュラに意識を向ける割合を増やせば、ルーフェイスの恐ろしい爪撃をまともに食らうことになるんだけどな。


「ラガス坊ちゃま、オルトロスの死体は今解体しますか? それとも屋敷に戻ってから解体いたしますか?」


「あぁ~~~……今はなるべく急ぎたいし、屋敷に戻ってから解体するよ」


フォース君とリッシュちゃんの前で解体するか?

良い勉強になる……というか、実戦の前にグロ絵面に対して耐性はできる。


とりあえず今は解体せず、少し休憩してから鉱山に向けて再出発だ。

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