スルー出来るように
二体のサイクロプスに襲われているハンターと商人を倒して以降、特に大きなイベントが起こることなく無事セルシアが住んでいた街へと……ロウレットが治める街へと到着した。
「いやぁ~~~~……大きいな」
「でしょ」
あっ、珍しく誇らしげな表情。
……うん、そんな表情のセルシアも可愛いな。
あぁ~~~、なんでこの世界にはカメラがないんだろうな。
まっ、そこら辺は悩んでも仕方ないか。
「うちとは雲泥の差だな」
「公爵家と男爵家が治める街では大きな差があって当然じゃないですか。少し驚きすぎではありませんか、ラガス坊ちゃま」
「メリルが冷静過ぎるんじゃないか? 確かに大きな街は見たことあるけど、やっぱり驚かされるって」
「ラガスさんと同意見だな。大きいとは思ってたが、予想よりも大きい。あと……やっぱり、質が高い」
質って……あぁ、そういうことか。
確かに街を守る兵士たちの質は高いな。
うちの兵士たちも結構厳しい訓練に耐えて、それなりに強いとは思うけど……さすが公爵家に仕える兵士たちって感じだ。
「ふふ、そうでしょ」
……なるほど、セルシアは俺と同じく身内が褒められると嬉しいタイプなんだな。
その感覚、良く解るよ。
あと……街に入ろうとしてるハンターの質も高いな。
周辺に生息するモンスターのレベルを考えれば当然かもしれないけど。
「それじゃ、こっちから入る、よ」
「え? そっちは……あぁ、そうか。別に良いのか」
セルシアはロウレット家の令嬢。
一般人たちと違ってわざわざ列に並ばずとも、別ルートで入っても何らおかしくないよな。
「ただいま」
「こ、これはセルシアお嬢様!!」
「夏休みだから、帰ってきた」
「えぇ、お聞きしています! ささ、こちらへどうぞ」
兵士たちの様子を見る限り、結構好かれてるみたいだな。
何考えてるか分からない表情をしてる時が多いけど、別に殆どのことに興味がないとか、そんな尖った性格はしてないから当然といえば当然か。
「ラガス様ですよね」
「あ、はい。どうも」
「セルシアお嬢様のことを、よろしくお願いします」
「はい、勿論ですよ」
多分、兵士の中でもリーダー格? みたいな人が代表してセルシアのことをよろしくと頼まれた。
まぁ……パートナーだから当然、そういう感じに頼まれるよな。
俺の両親だってセルシアに息子の事をよろしくって頼んでたし。
ただ、何人かは俺のことを測る様な目で見てるな。
「門までは、私たちだけで行くから、大丈夫」
「そうですか……かしこまりました」
本当は屋敷の前まで絶対に着いて行きたいって思ってそうだな。
でも、今のセルシアが本当に護衛はいらないって思ってる。
その思いを感じ取ったんだろうな。
にしても……またメリルの機嫌が悪くなってる気がする。
「メリルさ~~~ん、ちょっと怒気が漏れてるんじゃないですか」
「ラガス坊ちゃまに不躾な視線を向けていたので、つい」
「俺は別に気にしてないから、その怒気はしまっておけよ」
「かしこまりました」
なんだかんだでメリルはそういったところを気にするよな。
まぁ、嬉しいと言えば嬉しいんだが……俺自身、あんまり気にしてない。
「メリル、あんまりピリピリしない方が良いぜ。最近眉間に皺が寄ってることが多いいんじゃねぇか?」
「……はぁ~~~~。そうかもしれませんね。ですが、シュラが全く気にならないのですか」
「ん? そうだなぁ……ちょっとは気になるけど、お前みたいに怒気が漏れるほど気にしたりしないな。だってよ、ラガスさんに対する態度はおいといて、探る様な視線を向けるってことは、パッと見で大体の実力を察せれない程度の奴らってことだろ」
……ちょっとがっかりしてるっぽいな。
俺としては鑑定のスキルを持ってない限り、それなり程度の実力を持ってるぐらいじゃ正確に相手の実力を察知出来ないだろうし……まぁ、なにより俺の見た目がそもそも強者って感じじゃないもんな、
「俺たち将来はラガスさんと同じくハンターになるんだし、そこら辺をスルー出来るようにしておいた方が良いと思うぞ」
「む……シュラに正論を説かれるのは癪ですが、その通りかもしれませんね」
はは! 確かにシュラがメリルに正論を説くってのは珍しい状況かもしれないな。
「ラガス、あそこが私が住んでた、屋敷」
「う~~~~ん……本当に大きいな」
多少大きい建物や屋敷は見慣れても、それでも大きいと思ってしまう。
だって……大きさや形的にちょっと城に近くないか?
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