兄貴の意地
「良いんじゃないか? 少しずつだけど強くなってると思うぞ」
「そうかな? アビリティを身体強化使っても軽くあしらわれたし……あんまり強くなってる感じがないな」
「そんなことないって。模擬戦するのは数か月ぶりだけど、強くなってるのは間違いないと思うぞ」
セリスがバリバリの接近戦タイプだし、競い合える相手がいる。
それにうちの家に仕えている兵士たちのレベルも高いし、訓練相手には全く困ってない。
レアード自身、向上心が強いからそこそこ環境に恵まれているとも言えるかもな。
「レアード、ラガスに模擬戦で負けたからって自信をなくす必要はないぞ」
「……でも、アリク兄さんと模擬戦しても同じような試合内容だったじゃん」
「そりゃ俺は俺で鍛えてきたからな。それにお前より四つも上なんだ。そう簡単には負けられねぇよ」
兄貴の意地ってやつだな。
普通に考えて四年間の差は大きいし、アリクとレアードが戦えばそりゃアリクが勝ってしまうのは当然っちゃ当然だ。
「でも、ラガス兄さんはアリク兄さんに勝つじゃん」
「お前、そりゃあ……なぁ」
「なんでこっちを見るんだよ、アリク」
「なんでと言われてもなぁ……あれだな、普通に考えてラガスが色々とおかしいからだな」
うぉい!!! 色々とおかしいって、そりゃちょっと酷いんじゃないか。
「あぁ~~~~、うん。そうだね、納得した」
レアードもそんな簡単に納得するなよ。
言葉に出して否定出来ないけどさ。
「なんだよラガス。なんで不満そうな顔してるんだよ」
「面と向かって色々とおかしいって言われたら不満そうな顔になるだろ」
「でもよ、ラガスならさっきみたいに素手で戦いながら魔弾を自由に操って攻撃出来るだろ」
「そりゃ出来るけど……それがどうしたんだよ」
「普通はそんな簡単に出来る技術じゃないんだ。なぁ、レアード」
「まぁ、そうだね。概ねアリク兄さんの考えに賛成だね」
うっ……そ、そりゃ俺は魔弾のアビリティを持ってるわけだし、それぐらいは出来て当然って感覚だからな……けど、確かアリクは同じこと出来るよな?
「アリク、お前はそれ出来るだろ」
「魔弾が一つだけなら多少はな。お前は魔弾が幾つ増えても軽々と操って、魔弾と誤って衝突するとか絶対にないだろ」
「そんなダサい真似するわけないだろ」
「ラガス兄さん、普通はあっさり出来るものじゃないんだよ。ラガス兄さんみたいに魔力操作と感知力……後は空間把握力に長けてないと魔弾を幾つも操りながら接近戦までこなしてると頭が爆発しちゃうよ」
……確かに操る魔弾の数が多くなれば多くなる程、頭が痛くなった記憶はあるけど……今では痛みなんて感じないな。
「そういうもんか……まっ、虐めみたいになるからそういうことはしないけど」
「そうした方が良いぞ。お前の魔弾は魔力の消費量が多くなくとも、無視できない威力があるからな」
「分かってる分かってる。魔弾で虐めるような真似はしないって」
というか、普段から対戦相手を虐めるような真似はしてない。
制裁を加えることはあるかもしれないけど。
「そういえばラガス、お前アルガ王国の第三王子と面倒事になったんだろ。あれは結局どうなったんだ?」
「アリクもそれ知ってるのか」
「おぅ、知ってるぞ。父さんと母さんが心配そうな顔してたしな」
「あんなに不安そうになってる父さんと母さんは初めて見ました」
マジか……そんなに俺のことを心配してたのか。
さっき会った時はそこまで心配だったって雰囲気は出してなかったけど……後でちゃんと心配かけてごめんって謝っておくべきか?
まぁ、確かに面倒事ではあるけど俺は基本的に悪くないんだけどさ。
「ら、ラガス兄さん。今度は私と模擬戦して」
「おう、分かった……セリス、ちょっと休んでからにしないか」
横目でセルシアと模擬戦してたのは知ってたけど、結構ボロボロに負けたな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます