上手く切り上げたが

「……四人とも、速いね」


「まぁ、戦える従者として俺たちを守るのが役目だからな……敵が現れたとなれば、即座に動くのがあいつら」


キリアさんとルーンも俺たちと一緒に生活を送るようになってから、何度も模擬戦を行うようになった。

その成果もあり、実力は順調に上がっている。


まだシュラとメリルには敵わないけどな。


「ルーフェイスは参加しなくても良かったのか?」


『ん~~~~……今回は良いかな。そこまで強そうじゃないし』


「はっはっは! 確かにルーフェイスからみたらそうかもしれないな」


グレーグリズリーのランクはD。

狼竜のルーフェイスにとってはちょっと物足りない相手か。


「ルーフェイスが戦ったら、直ぐに、終わると、思う」


「だから参加しないそうだ。ルーフェイスが戦って楽しいと思う相手はCかBランクからだからな」


今はブラックウルフの姿をしてるが、真の姿はドラゴンだ。

ドラゴンの相手を、そこら辺のモンスターが務まるわけがない、か。


「というか、守るのが仕事とか言っときながら……シュラの奴、絶対に遊んでるだろ」


俺たちを狙って襲ってきたグレーグリズリーの数は三体。


その内の一体をキリアさんとルーンが、そしてもう一体はメリルが相手をしている。

メリルは戦闘開始、速攻で終わらせた。


糸生産と操糸で一瞬だけ動きを止めた。

パワー系のグレーグリズリーなら動きを止められようとも、糸を引き千切ることぐらいわけなく行える。


だが、その止まった一瞬で宙を舞い、グレーグリズリーの首を短剣で切り落とした。

相変わらず綺麗に戦うよな。


そしてキリアさんとルーンも二対一ってのはあるけど、優位に戦いを進めてる。

ルーンが超接近戦タイプだとすれば、キリアさんはサポート出来る接近戦タイプ。

遠距離攻撃も使えるが、二人とも接近戦メインでグレーグリズリーを相手に上手く戦えてる。


防御することはあれど、有効打は全く貰ってないしな。

無粋な横やりが入らなきゃ、このまま二人が確実に勝つ。


それで、シュラだけど……やっぱ楽しんでるよな、あれ。


「シュラだったら懐に潜り込んで、魔力を心臓に叩きこめば一発で終わらせられるのに」


「ハンターとして、理想的な、倒し方。確かに、シュラなら、出来る」


「セルシアもそう思うよな。なのにそうせず、バチバチに殴り合ってる……俺だってバチバチに戦いたいよ」


よっぽど冷静なやつか、臆病な奴じゃなきゃ戦いから逃げようとしない。

逃げようとせずに……絶対に殺そうと立ち向かってくる。


そこが真剣勝負というか、モンスターとガチで戦う良いところなんだよな。


「お、キリアさんとルーンも倒し終わったか。残るはシュラだけ」


あいつ、こういう時だけは本当に手加減が上手いよな。

グレーグリズリーの限界値を引き出そうと、相手の体がボロボロにならない程度の攻撃を加えて、闘争心を更に熱くさせようとしてる。


楽しいだろうなぁ~~……でも、あんまり楽しみ過ぎてたらメリルが怒り始めるぞ、シュラ。


「ふんっ!!!!」


「おっ、ようやく終わらせたか」


魔力を拳に纏い、衝撃を心臓に伝えて破壊。

最初からやろうと思えば出来てたんだろうけど……とはいっても、時間にして数分程度。


大して時間は掛かってないし、見てるこっちも楽しんだから別に良いんだけど……メリルが怒り始める前に終わらせたって感じだな。


「シュラ、少し時間を掛け過ぎではありませんか」


「そうか? グレーグリズリーが相手なんだし、これぐらい普通だろ」


「普通の人ならばそうかもしれませんが、あなたならもっと早く倒せたでしょう」


「いや、そうかもしれないけどさ、別にそんな焦って倒す必要はないだろ」


「今の私たちはラガス坊ちゃまとセルシア様の護衛のようなもの。そして現在はリゼード家に向かう途中。その障害となる存在は素早く排除するべきでしょ」


「うっ……わ、分かったよ。次からはそうするって」


はは、さすがに正論をぶつけられると口喧嘩はシュラの完敗みたいだな

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