対処は考えている
「シュラ、分かってるとは思うけど本当に手加減しろよ。二か国が行う大会なら優秀なヒーラーも待機してるだろうけど、初っ端から体に風穴開けられたらどんな猛者でも一発でアウトだからな」
「う、うっす!! 気を付けます!!」
「そうしてくれ。メリルに関しては……まぁ、そこら辺は大丈夫だよな」
「えぇ、勿論です。しっかりと上の要望に応えてみせましょう」
「頼もしいな。でも、あんまり糸で弄んだりはするなよ」
「……ラガス坊ちゃま、私をなんだと思ってるのですか」
うっ! そ、その冷たい目は止めてくれ。
精神が削られる!
確かに俺の失言かもしれないけど……でも、可能性がゼロとは思えないんだよな。
「だってさ、試合が始まる前に俺を馬鹿にする様な発言を相手がしたら、ブチ切れてそういうことしそうだろ」
「…………」
おっと、珍しく都合が悪そうな顔になった。
シュラは横で珍しいメリルの表情を見てニヤニヤしてるが、お前にも当てはまることだぞ。
「シュラも同じだ。相手が俺や父さんたちを馬鹿にする様な発言をしても、五秒も経たずに試合を終わらせるのは止めろよ」
「も、勿論っす!!!」
「本当か~~~? 頼むから、せめて一分ぐらいは戦い続けるんだぞ」
実際のところ、上から何分ぐらいって指定があるのかは分からないけど、とりあえず一分ぐらいは続けないと話にならないと思う。
長すぎるのも良くないとだろうけど、やっぱり短すぎるのもアウトだからな。
「ですが、ラガス坊ちゃま。それは当たり前ですが、ラガス坊ちゃまにも言えることではないでしょうか」
「……確かに、そうかもしれないな。でもな、既に俺は相手がそうしてきた場合、どう対処するか考えてる」
俺の調子を乱すために、同じ手段を取ってくる者はいるだろうな。
でも、そういったクソったれ野郎どもをどう対処するかは、もう思い付いてるんだよな~~。
「ほぅ、それはいったいどういった方法なのですか」
「それはな……相手に下手な状態でギブアップさせない」
「……申し訳ありません、もう少し詳しく教えてください」
うん、さすがにこれだけじゃ伝わらないだろうな。
「俺も体術は得意分野だから、一撃の威力はシュラに及ばないけど、それなりに高威力だと思ってる」
「そうでしょうね。油断していて食らえば、その一撃だけで試合を終わらせる威力があるでしょう」
長年鍛えてきたからな。
ただ、何発もぶん殴って終わらせる……バカ王子の際は制裁の意味も込めてだったから、結構短期決戦で終わらせたけど、大会の際は別の方法でボコボコにする。
「メリル、これが何か分かるか」
「……魔弾アビリティの技、回復弾ですね」
「そうだ。撃った相手の傷を癒す回復弾だ。そして、魔弾の隠蔽効果が加われば……」
「ッ! そういえばその様な効果を持っていましたね。なるほど、ラガス坊ちゃまが何を考えているのか分かりました」
「すいません、俺はまだいまいち分からないっす」
……もうちょい詳しく説明するか。
「俺が全力で殴れば、それだけで終わる可能性はある。でも、それなりに手加減して殴れば開始速攻で終わることはない。相手もやわな鍛え方はしてないだろうからな。そして殴ったり蹴ったりした後に、俺はそこにこの回復弾を撃つんだ」
「相手をわざわざ回復させるんすか?」
「そうだ、わざわざ回復させるんだ。痛みが完全に消える訳じゃないが、和らぐ。そして外傷は消える……そんな状況が長い間続くんだ」
「長い間続いた結果、外から見れば相手選手は殆ど傷を負ってないように見える。そしてラガス坊ちゃまのことですから、誤って相手を気絶させるようなことをしない」
「仮にやってしまっても、気付けをするから問題無い。つまり、俺にボコボコにされる状況が延々と続くんだよ。魔力が切れて自分で回復できない。そんな状況じゃなくて……相手から回復を当て得られるんだ。それを拒むことは出来ない」
ここまで言えば、シュラも俺が何をしようと考えてるのかなんとなく解るだろ。
「……あぁ!!! 下手な状態でギブアップさせないってのは、そういうことなんっすね!」
「おっ、分かったみたいだな。俺と一分から二分もバチバチに戦えば勝てないことぐらいは解るだろう。でも、外傷はない……そんな状態で勝てないからって棄権してみろ。試合会場でブーイングする奴がいれば、裏で色々と言う奴も現れるだろうな」
大切な人を馬鹿にされたからって、決して我慢する必要なんてないんだよ。
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