いよいよ突入
「はぁ……いよいよ王城に突入か」
「これから喧嘩を売りに行くような言葉ですね」
「……言葉が悪かったな。喧嘩に関しては完全にこっちが売られてる側だ」
あと十数分もすれば王城に入り、これからアルガ王国の国王様と面会するらしい。
謝罪か? そうだよな。息子が暴走した件についての謝罪だよな。まずはそれだよな。
それ以外だったら本気でぶっ飛ばしてやりたい。
「ラガス坊ちゃま、少々殺気が漏れてますよ」
「おっと、すまん。第三王子のアホは置いといて、こっちの国王様は良心的な性格の持ち主であると信じたくてな」
「それは私も同じ気持ちですね……仮にですが、もしそうでなければどうするおつもりなのですか?」
「握りしめている拳が解放されて、渾身の右ストレートが飛ぶかもしれない」
駄目だよ。そんなこと駄目だって解ってるよ、俺だって一応貴族の一員だし。
いや、貴族の一員でなくとも解かる話だ。
だが……もしクソみたいな態度を取られたら、我慢出来る自信がない。
「安心してください、ラガスさん。仮にこの国の国王が不遜な態度を取る様であれば、しっかりとその場で死なない程度に潰します。古き狼竜である私の知人に不遜な態度を取るならば、潰されても文句は言えないでしょう」
「……それもそうですね」
狼竜はドラゴンに分類される種族。
暴力の化身と揶揄されるドラゴンの一端である狼竜の知人らしい俺に手を出せば、フェリスさんが代わりに潰してくれる……実際に俺は手を出さない訳だし、メリットしかないな。
今回の件にフェリスを同行してもらおうと考えた俺を真面目に褒めたい。
「ラガスに不遜な態度取ったら、父様も黙ってない、はず。第三王子はバカでも、国王様なら、それぐらい理解できる、と思う」
「セルシア様の言う通りっすよ、ラガスさん。もしアルガ王国の国王様が屑なら、ガルガント様が絶対にこちら側が有利になるように処理してくれてる筈っすよ」
「そうだな……うん、ガルガント様は誠意を持ってる人だし……その人が何がなんでも今回の件を手が身でのやり取りで終わらせなかったのを考えれば、二人の言う通りか」
それならそれで良い。
迷惑掛けられた分、きっちり慰謝料……ではなく、迷惑料は頂くけどな。
それぐらいあっちも予想してるよな。
…………こんな考えや会話がフラグにならないと良いんだが。
「……ラガス坊ちゃま、どうやら着いたようですね」
「そうか……ないとは思うが、気を引き締めていくか」
箱のドアが開き、ドラングさんたちに誘導されて降りる。
騎士たちが俺たちの前を歩き、その後ろをドラングさんとサリナさんが歩く。
そして俺たちを挟んでオルアさん、ヤガスさん、フィーラさんが主に後方を警戒しながら目的の部屋へと歩く。
王城を歩いている途中、幾人かの人とすれ違うが……俺たちに、性格には俺に敵意や不快感を持っている者は殆どいなかった。
だが、僅かに負の感情を俺に向けてくる者がいた。
第三王子を推している人物なのか……それとも王城に従魔であるルーフェイスを連れてきたことが気に入らないのか、どちらなのかは分からない。
いや、多分両方ともってのが正しいんだろうな。
そして王城に入ってから、どう考えても俺たちに見えない位置から覗いているというか、監視している連中がいる。
『ラガス、あいつらはぶっ飛ばさなくて良いの?』
『あぁ、そうだな……一応何か起こった時の為に監視してるだけの連中だろ』
ルーフェイスが気付いてるということは、フェリスさんも気付いている。
いや、俺が気付いてる時点でフェリスさんが気付いてるのは当然か。
とりあえず今の監視してる件に関しては口を出すつもりはない。
『向こうからどうこうしようって気はない筈だ。今のところは様子見で構わない』
『分かった、大人しくしてる』
フェリスさんが暴れるのは当然危険として、ルーフェイスが暴れるのもそれはそれでかなりの被害が出ると思うんだよな。
監視してる人たちが短気を起こさないでほしいと願うばかりだ。
国王様だって暗部の人間が減ることを願ってないだろうしな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます