休息という名の模擬戦時間
バレッドホースの体力を考え、一旦休憩を挟む。
その間に箱の中でのんびりしていたおかげで固まった体をほぐそうと思い、セルシアと木剣を使った模擬戦を行う。
勿論、無駄に怪我しないように身体強化などのスキルは使用しない。
「本当に元気だな。休憩中に模擬戦をする子供なんてそうそういないぞ」
「こういうところがお二人の強さを築き上げてきたのかもしれないわね」
毎日訓練を欠かさないっていう点は、確かに今の俺の強さを築き上げる要因になったと思う。
でも、強くなりたい貴族の令息なら毎日訓練を行うぐらいなら当たり前だと思うんだけどな。
そういうところを考えると、やっぱり俺やセルシアは才に恵まれてるんだろうな。
「ラガス、何か、考え事?」
「ん? いや……俺たちやっぱり色々と恵まれてるんだなぁ~と思ってな」
俺もセルシアも努力はしているが、それでも環境が恵まれているのは否定出来ないと思う。
セルシアは本人が強くなることを望んでいるなら、ロウレット公爵は惜しみなく応援するだろう。
俺の父さんも森の中に入ってモンスターを狩ることを止めなかった。
偶に模擬戦相手にもなってくれてたしな。
環境が一緒ってわけじゃないけど、どちらも恵まれている筈だ。
「……そう、ね。私は色々と、恵まれている。ラガスが、パートナーである、ことも」
「ふふ、それはどうも」
軽く模擬戦をしながら交わす言葉ではないと思うが、そう言ってくれると本当に嬉しい。
こうなってくると……笑顔で近寄ってくるであろう第三王子に対して、セルシアがどの様な態度を取るのか。
そしておそらく予想外の態度を取られた第三王子の表情がどうなるのか……あぁ~~~、なんでこの世界にはスマホがないんだろうか。
もしあるなら、その間抜けな表情をきっちりと映像に収めるのに。
「さて、そろそろ出発します」
三十分ほど休憩という名の模擬戦時間を終え、優雅な時間が再び訪れる。
俺とセルシアだけではなく、メリルたちも軽く動いていたので固まった体がだいぶほぐれた。
「やはり近衛騎士の方々はラガス坊ちゃまとセルシア様の模擬戦を観て驚いていましたね」
「……確かに驚いてた気がするけど、シュラとメリルの模擬戦を観てた時の方が驚いてたと思うぞ」
俺たちが年齢以上の実力を持ってるのは十分に分かっているが、シュラとメリルの実力もかなりぶっ飛んでる。
模擬戦の迫力だけなら、俺たちよりもあったのではと感じたが……俺の気のせいでは無い筈。
「あらそうでしょうか? 私としてはいつも通り動いていただけですが」
解っててとぼけてるな、こいつ。
「俺としてはメリルとの模擬戦でも十分に楽しめるっすけど、どうせなら近衛騎士の人たちと戦ってみたいっすね」
とんでもない発言を軽く口に出された。
近衛騎士と模擬戦……普通に考えれば軽くあしらわれて終わりなんだろうけど、シュラならそれなりに何かを得られる戦いにはなるか。
ただ、ドレッグさんたちの仕事に俺たちの模擬戦相手も含まれているのか否か……おそらくそんな仕事は含まれて無いだろうな。
「その気持ちは解らなくもないが……多分、俺たちの模擬戦相手ってのは仕事に含まれてないと思うぞ。それに、俺たちを守るのが仕事だから万が一……は、基本的に起こらないと思うけど色んな意味でダメな気がする」
「そ、そうっすね……諦めた方が良さそうっすね」
解りやすいぐらいにテンションが落ちたな。
けど、近衛騎士が模擬戦の相手になれば今自分がどれぐらいの位置にいるのか解るし……確かにちょっと戦ってみたいよな。
「私が頼めば、多分……大丈夫」
「……はは、そうだな。その手があったな」
セルシアの言葉に思わず苦笑いになってしまった。
ただ、その言葉の通りセルシアが頼めば、おそらく断るのは不可能だろう。
公爵家の令嬢からの頼みであれば、向こうは断れない。
とんでもない頼みをしようとしてるわけではなく、模擬戦の相手になってほしいという比較的軽い頼み。
セルシアが頼めば、ドレッグさんたちが断る道はなくなる。
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