その言葉が鮮明に……

「ホーリージャッジメントッ!!!!」


「レイジングストライクッ!!!!」


聖なる裁きと怒りの蹴撃が今ぶつかり合う。

両者の最強の一撃がぶつかり合った瞬間、先程のホーリーブレイクと烈火轟炎斬が衝突した時より強烈な衝撃音が響き渡る。


「ッ!!! 凄い、な。これが十三歳同士のぶつかり合いか」


「ラガス坊ちゃまも十三歳ですよ。とびっきり規格外の」


「それは解ってる。ただ、俺は自分で言うのはあれだが……特別だ。色々とな」


ライドとリーベが持つ才能が全く特別ではないと思わないが、自分は幼い頃から自主的に訓練を始めて何歩も先を歩いている。


なので同年代と比べて圧倒的に強いのは当たり前。

しかし、目の前でぶつかり合っている二人はそうではない。


「……ラガスさん、この勝負。リーベの勝ちみたいですよ」


「ん? そう、か……おぉう。マジか」


遠目からでもライドが持つ魔剣の刃に罅が入り始めているのが見える。


だが、己の武器が壊れようとしていても、ライドは全く諦めない。


(……ぶっ壊すッ!!!!!)


試合の最中に……一つの声が聞こえた。

己の魔靴と敵の魔剣がぶつかり合う衝撃音で周囲の音は何も聞こえないと思っていた。


だが……鮮明に一つの声が聞こえた。

その声が……リーベの怒りを加速させる。


「ハァァアアアアアアッ!!!!」


溢れんばかりの闘気が背中を押し……遂にライドの魔剣を蹴り折った。

そして、そのままライドの顔面を蹴り飛ばす。


「がッ!!!!????」


例え限界突破を使用していても、羅門を使ったリーベの全力と絶対に勝つという思いが込められた最強の一撃に敵わず、壁まで一直線に吹っ飛ばされた。


その瞬間に、丁度限界突破の使用時間が切れた。


「ガッ!? ……くッ、そ!! まだ、まだ……動けよ!!!」


限界突破を使用したことによる反動がライドを襲う。

骨がいきなり折れたりする様なことはないが、筋肉痛の三百倍ほどの痛みが濁流のように押し寄せる。


ただ、今のライドにはそんなこと関係無かった。

まだ決闘は思わっていない。


魔剣が折れてもまだ戦える。

幸いにも魔力と闘気はまだ残っている。


身体強化のアビリティを使用して無理矢理体を起こそうとするが……そこには魔剣を首筋に向けて来るライバルが立っていた。


「……これは、決闘だ。生憎と俺にも時間が無いからな。お前がこれ以上動くというなら……殺す」


決闘後に起こるかもしれない厄介な件など、知ったことではない。

この決闘で勝つには……これ以上目の前の敵が動くなる、殺すしかない。


本気の殺意を向けられたライドは己の敗北を認めざるを得なかった。


「くッ……僕の、負けだ」


悔しい。とてつもなく悔しい。

負けた、大切な人とこの先幸せになる未来が消え去ってしまった。


目から涙が止まらなかった。


だが……決闘に勝ち、幸せにすると誓った人との未来を手に入れたリーベの表情には笑みがなく、現状に満足していなかった。


「……ちッ!!!!」


決闘に勝ったのにも拘わらず、苛立ちが消えない。


(俺は勝った。こいつとの決闘に勝った……傍にいて欲しい存在を……未来を手に入れた。それなのに!!!)


拳を握る力が強くなる。

爪が皮膚に食い込み、血が出てきた。


「……ライド、だったな。フィーラは……お前に任せる」


「えっ!? ど、どういうことだい。この決闘に勝ったのは……君だ」


認めたくない……認めたくないが、これだけは変えられない事実。

自分はリーベに負けた。


もう一度戦えば同じ結果になるか? それは解らない。

しかしもう一度戦えば結果は逆だ、だからもう一度戦わせろ……なんてことは言えない。


「そうだな……決闘には勝った。紙一重だったが、決闘に勝ったのは俺だ。でもな……」


今でも記憶が鮮明に蘇る。

自身とライドの攻撃がぶつかり合った瞬間に……確かに耳に入った言葉、頭の中からずっと離れられない。


(……俺の思いが、こいつより弱いとは思わない。でも……どちらの思いをフィーラが求めているのか。それはどう足掻いても変えられなかったみたいだな)


審判が決着の合図を行ったが、勝敗の結果は誓約とは異なる結果となった。

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