正直に話す
「失礼します」
「やぁ、よく来てくれたね」
案内された部屋の中に入ると、そこにはイーリスと同じく綺麗な水色の髪を持つ優男がいた。
それなりに歳を取っているので若くてイケメン! って雰囲気ではないが、良い感じに歳を取ったダンディさがある。
そして直ぐ隣には色んな意味で柔らかいという印象を与えるであろう美人メイドさんが立っていた。
「今日は本当に来てくれて嬉しいよ。他の家からの誘いも多かったんじゃないかな?」
「それなりにありましたね。ただ、リゼードさんからの誘いには応えようかと思って」
「そうかいそうかい、それは有難いね。さっ、とりあえず料理が冷めないうちに食べてしまおう」
「そ、そうですね。ご馳走になります」
とりあえず第一印象は悪くはない。
だが、まだ完全に緊張は解けていない。
それでも……テーブルに置かれている料理はマジで美味い。
それだけはハッキリと解かった。
「君は入学早々、色々と苦労したようだね」
「えっと……まぁ、予想外の事が起きたので色々と戸惑いはしました」
もしかしたら、そうなる運命だったのかもしれない。
なんて考えがゼロだったとは言わない。
それでもあんまり心の準備は出来ていなかったので、驚きはしたけどな。
「そうか、確かにいきなり厄介な世界に巻き込まれたとなれば、戸惑うのも無理はない。学校に入る前はどう過ごしていたんだい?」
「自分を家を継いだりとか、騎士団に入るなどの目標は持っていなかったので基本的に自由に過ごしていました。従者であるメリルとシュラと訓練を行い、街の外に出てモンスターと戦ってました」
「……ふふ、凄い日々を送っていたんだね。それは偶にではなく、殆ど毎日なのだろう」
「そうですね。錬金術が趣味なんでモンスターを狩るのをやめて趣味に没頭する日もありました」
「錬金術を……君は本当に多才なのだね」
一応色々とやってるかな。
というか、素直に信じてくれるんだな。
いや、心の中を読める訳じゃないから本当に信じてくれてるかは分からないけどさ……疑ってる素振りはないよな。
「ありがとうございます。ただ、幼い頃から色々とやってきた。それと自分は他の子と比べて好きなことを好きな様にやって来ました。だから多少先に進んでいるだけです」
「なるほど、確かにそうかもしれないね……でもね、それを自主的に続けられる子はそうそういない。君はもっと自分の努力を誉めるべきだよ。私が君と同じ年なら……絶対に勝てないと断言出来るよ」
俺を持ち上げるための言葉……じゃ、なさそうだな。
でも、なるべく俺もよいしょしようとしてるか?
「君はイーリスに勝った。親バカかもしれないが、イーリスは才能があって努力を怠らない子だった。だから……一回戦で負けるとは思っていなかったんだよ」
やっぱりその話は来るよな。
ただ……怒ってはいない、よな?
別に怒りのオーラは出ていないし、多分大丈夫だよな。
「君とイーリスとの違い……差はなんだと思う」
実際に倒した俺にその話を聞くのか?
アリオスさんなら色々と解ってると思うんだが……一応真面目に答えるか。
「基本的には、相性の悪さかと思います。遠距離タイプと接近戦タイプ、自分の魔弾でイーリスさんの初級魔法は破壊出来ます」
「魔弾……確かにあれ程の威力と技術を持つ魔弾には驚かされたよ」
「どうも。それと、自分とイーリスさんとでは実戦の経験数と基礎身体能力が違います……核の差もあるでしょう」
「……君は魔弾も脅威だが、その身体能力が一番怖そうだね。正直、イーリスは君にとって大した壁ではなかったかい?」
ぐ、ぐいぐい訊いてくるなこの人。
これは……しょ、正直に答えた方が良い内容だな。
「そうですね。自分は遠距離タイプと接近戦タイプ、どちらとも戦い慣れているのでそこまで大きな脅威ではありませんでした」
「ふふ、そうか。嘘なく真面目に答えてくれて嬉しいよ」
ホっ、どうやらお怒りにはなられないようだな。
ちょっと安心した。
「さて、まだお腹には入るかい?」
「はい、多少であれば」
「そうか、それならデザートに移ろう」
特に会話に失敗せず、怒りを買うこともなくデザートタイムに移行……これは問題無く終われそうか?
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