その心境はいかに

「ねぇ、どうなると思う?」


「勝敗の結果か?」


「それは気にしてない……というか、リースが負け訳ないでしょ」


「随分とストレートな答えだな。けど、それは俺も同意だ」


リース会長が負ける訳がないというクレア姉さんとアリクの意見には俺も同意だった。

俺の隣でセルシアもウンウンと頷いている。


本気で戦えば負けるとは思わない。

でも、気を抜いていて勝てる相手ではない。

それは確信を持って言える。


俺が言うのはおかしいとかもしれないけど、完全に……完璧なまでに学生レベルを超えた実力の持ち主だ。


「それで、上手い具合に戦えるかってことか」


「そういう事よ。私もアリクもセルシちゃんも相手より強かった。そんな中でも上手く戦えていたのはセルシアちゃんでしょ」


クレア姉さんに褒められたセルシアは嬉しそうに頬を緩める。

……可愛いな。


「……そうだな。リースなら学園のお偉いさん達が望むような良い戦いに導けるんじゃないか?」


「私もそう思ってる部分はあるけど、ぶっちゃけリースの方が相手との力量差が大きいでしょ」


「かも、しれないな。ラガスはどう思う?」


「・・・・・・そう、だね。相手の生徒は次鋒、中堅の生徒と似た様な力量だと思う」


副将に相応しい力量かもしれないが、次鋒や中堅の生徒と比べて特別実力が離れてはいない。

総合的に見ればやや副将の方が優れているかも、といった程度だ。


狼竜眼で調べたので間違いない。

リース会長と同じく魔法剣士か魔法戦士ってタイプだけど……明らかに差がある。


持っているレイピアはそこそこ上等な物だが……それはリース会長も同じだ。

そういうことで、武器による差は生まれないから実力がそのまま結果として出るだろう。


「だよな。リースが相手の力量を見誤るとは思えないが、万が一ってのはあるだろ」


「それは……ゼロとは言えないわね。でも、それを正確に測るために初手は譲るんじゃないかしら?」


「それもそうか。ラガス、上手くいくと思うか?」


「多分、上手くコントロール出来ると思うよ。完全に力量はリース会長の方が上だ。変なミスをしない限り、上手く試合を運んで勝つと思うよ」


リース会長が負けるということは絶対に無い……と思う。

試合内容もある程度相手の生徒に花を持たせる形になると思うんだが……まっ、そういのは実際に見てみないと解らないよな。


って、思ってたんだが……試合内容は俺達が思っていた以上に素晴らしいものになった。


「……あいつ、もしかして死んだ神の生まれ変わりとか?」


「そ、それはないんじゃない? でも……本当に凄い、わね。ラガスもそう思うでしょ」


「あぁ……本当に、凄いな」


「私も、そう思う、よ」


試合時間は大体四分ぐらいか?

時間のノルマに関しては問題無い。


それで試合内容なんだけど……おそらく、相手の女子生徒が現在出せる最大限の力を引き出したと思う。

そのうえで……完全に喰らった。


試合内容はぱっと見、互角の戦いに見えたかもしれない。

けど……実際はリース会長の圧勝だ。


引き出すだけ引き出して、あっさりと喰らってしまった。


「チッ! 少しは追いついたかと思ったら直ぐに先を行きやがって」


「いや、実力的な問題であればリース会長とアリクがそこまで離れているとは思えない。ただ……圧倒的に上手かった。それは戦い以外の部分が発揮されたからだと思う」


闘炎を完全に物にすればその差はひっくり返るだろう。

でも、リース会長には実力以外の部分というか感覚? を上手く使って勝った。


ただ……一つ気になることがある。

負けた相手の生徒の心境はどういったものなのか。


自分が出せる全ての力を出し切って負けたのだから悔いは残っていない、というさっぱりした気持ちなのか。

それとも……自分の最大限の力を出し切れたのにも拘わらずあっさりと負けてしまった事での敗北感や喪失感に覆われているのか……それは本人にしか解からないだろう。


「もしかしたら……リース会長は教師とか性に合うのかもしれないな」


「リースが教師? ……とりあえず男子は喜びそうだな」


「ぶはっ!! 確かにそうかもな」


アリク、結構シリアスな事を考えてたのにいきなり笑かすなよ。

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