トラウマと殺生はNG
「ラガス君、君の実力は君が思っているよりも多くの人が知り、認めている。良くも悪くも、だ」
でしょうね、俺の実力を宜しく思っていない連中が多くいるのは既に知っている。
ディーザスの連中が何とかしてくれてるから問題無いけどさ。
「中には既に学生レベルを遥かに超えていると考えている人もいるだろう」
「それはここにいる全員がそうだと思いますけど……」
特に会長は俺と同じように思われてるのでは?
「確かにそうかもしれない。だが、君の場合はその強さが異質なんだ。正直に言えば……魔弾だけでセルシアさん以外の一年生は倒せたんじゃないかい?」
「……そう、かもしれませんね。ダブルスに参加していたクロウザって奴とセルシア以外なら多分大丈夫かと」
イーリス・リザードに関しては接近戦が出来なさ過ぎるからな。
魔弾のアビリティを使わなくても、通常の魔弾だけで十分だろう。
「それは多くの人が知らない強さだ。そしてラガス君はその魔弾の強さだけでは無く、体術や剣術の腕も優れている。一部の人達は三年生も含めて最強なのではという声もある」
「そ、それはどうでしょうか?」
俺が持っている手札を全て使うなら勝てるだろうけど、団体戦の為だけにシングルスやダブルスに出なかった三年生がいるかもしれないし。
というか、アリク達もウンウンって頷くなよ。
「そういう話が出ている以上、私達三年生にとっては君が出場する前に三勝したい、というのが本音なんだ」
それは……あぁ、なるほど。何となく解ってきた。
「ラガスがいたから勝てたんだろう、っていうイメージを植え付けたくないのよ」
「クレアの言う通りだ。俺達だけでも十分にお前達を倒せる。それを他校の連中に見せつける必要がある」
「そして最後にラガス君のダメ押しで圧勝するって感じね」
やっぱりそういう事か。というかサルネさん、俺は相手のチームにとって駄目押しする形になるんですか?
いや、俺の番になる前に四勝してればそういう形になるか。
「相手が先に実力が高いメンバーを配置して先に三勝を狙うか、それとも配置通りの実力者を置くのか……それは各学園によるだろう。ただ、ラガス君……とりあえず今回の試合は君が大将だ」
「……分かりました。しっかりと駄目押しするように頑張ります」
「ラガス、頑張るのは良い事だが……あんまり頑張り過ぎて相手の生徒にトラウマを植え付けるなよ」
「わ、解ってるよ。てか。基本的にイジメるつもりは無いから」
相手が普通に接してきて戦うのであれば、俺もいつも通りの態度で対応する。
学園側の要望通りある程度の時間戦って、キリの良いところで終わらせる。それだけだ。
「相手が屑な性格をしてきてお前に挑発してきたらどうするんだ」
「……俺の逆鱗に触れてくるんだったら速攻でぶっ潰すか、時間をかけてぶっ潰す」
「はっ、だろうな。お前の実力はある程度の奴なら解っているだろうが、貴族ってのは実際に手合わせしないと納得しない奴が多い。だからお前に嘗めた態度で接してくる奴はまだいる可能性は十分にあるぞ」
「面倒な奴らがまだまだ多いって事か」
「そういう事だ。お前と他の連中では差が大きい……大き過ぎる。だから、うっかり殺してしまうなよ」
殺す、ねぇ……それは解ってるよ。流石に一般人の人達だって観ている公の場なんだ。
そういった事態にはしないよ。
俺自身が手を下していないだけで、潰されている奴はそこそこいるかもしれないけどな。
「解ってるって・・・・・・そろそろ俺の話はいいだろ。それで、先鋒は誰なんですか」
そう問うと、リース会長はニヤッと笑って答える。
「先鋒にはチームの士気を上げる重要な役割がある。ラガス君とは少し違う意味で圧勝が好ましい。という訳で……フレイア女学院戦の先鋒はセルシアさんに出てもらう」
「私、ですか……分かりました」
丁度そのタイミングで解説者のアナウンスがあり、生徒がリングに上がる時間となった。
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