二つのオーダー

宴会が終わり、寮に戻ろうとするとリース会長に呼び留められた。


「何か用ですか?」


「一応団体戦が始まる前に言っておこうと思ってな。三回行われる団体戦……その全てに君とセルシアさんには出て貰おうと思っている」


「それは……別に問題無いですけど。二年生や三年生はその……色々と言われませんか?」


俺とセルシアが三戦とも出る事には全くもって問題無いのだが、これから卒業する三年生に二年のエース。

そんな人達が外野から何か言われることは無いのか、それが不安だった。


「かもしれない。一応私も三戦とも出るから、他の参加者達が何か言われるかもしれないが……ラガス君が思っているよりも、皆は強いよ」


「そう、ですか。それで、えっと……とりあえずガチで勝ちに行くという事ですよね」


「元々私が考えていたオーダーだが、学園側から自分達の考えを入れたオーダー表を渡されてね。両方とも私とラガス君とセルシアさんが三戦とも出るのは確定だった。他に二枠、対戦する学園次第だ」


出場する生徒の決定権はリーダーである会長が持っている。

だから学園側が出してきたオーダーは強制では無いんだろうけど……どっちもマジで勝気ってのは確かだな。


「なるほど、分かりました。……学園側からオーダーがあったという事は、勝ち方に関しての要望はありませんでしたか?」


「……あれかな、もしかして事前に知っていたのかい?」


「いえ、学園側が出場する生徒の枠に口を出すなら、勝ち方にも意見があるのではと思って」


「確かに、意見はある。だが、これといって大きな内容は……君にだけだね、ラガス君」


「俺にだけ、大きな要望があると」


今回の大会である程度目立っただろうから……そういうイメージを使ってこういう勝ち方をしてくれってのがあるのか?


そんなに難しい要望でなければ達成出来るとは思うけど。


「えっとね……出来るだけ、試合を早く終わらせないで欲しい、という要望が学園側から出ていてね。もちろん強制じゃないんだけど」


「早く終わらせない……それって、もう少し見ている観客の事を考えてって事ですか?」


「そういう事みたいだね。見に来ている人達は当然お金を払っている。だから、あんまり試合を早く終わらせられたら、見に来た意味がないじゃないかって……そういうクレームが稀に学園に対して来るみたいなんだ」


「な、なるほど……まぁ、納得出来無くはない理由ですね」


確かに俺が客側なら、あんまりにも試合が早く終わってしまったら、金返せ!! って思ってしまうだろうな。

客の気持ちを考えるなら……最低でも三分ぐらいは戦うべきか。


「ラガスの君の実力を考えれば、相手の生徒を速攻で倒せてしまう事は学園側も解っている。そんな力を当然悪いとは思っていないけど、観ているお客さんの事を考えると……ね」


「分かりました。相手の戦い方によって絶対に出来るかは分かりませんが、そこら辺は上手く調整します」


最終的に勝てば良いんだ。相手がどういった戦闘スタイルだろうと、ある程度は対処出来る筈だ。

できれば後衛職より戦闘スタイルじゃなくて前衛職よりの戦い方だと有難いけどな。


「助かるよ。時間を取らせて悪かった。明日に備えてゆっくりと休んでくれ」


「はい、分かりました。リース会長もしっかりと休んでくださいよ」


「そうだな。明日恥をかかない為に、十分な睡眠をとるよ」


そこでリース会長とは別れ、寮へと向かう。

寮に戻ればルーフェイスが待っており、大会の間に構ってやれてない分をそこで補う。


『明日が最後の大会なんだね』


「そうだよ、ようやく終わるんだ。楽しくもあったけど、ちょっと疲れる感じだったな」


『そうなの? やっぱり色んな人がラガスに喧嘩を売ってきたから?』


「それは……まぁ、そうだな。全部返り討ちにしたから気分爽快ではあったけど」


俺の口が少々悪いのは認めるが、大体の人が俺に対して好意的な感情を持ってないからな……やっぱり男爵家の四男が公爵家の令嬢とパートナーになるなんて、逆玉みたいに思われるもんか。


『明日もいっぱいぶっ飛ばすの?』


「明日も……そうだな。とりあえず三人はぶっ飛ばす予定だ」


そんな感じでルーフェイスと十分ほど話し、モフモフを堪能してからベッドに入った。

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