お互いにギアを上げる

斬る、薙ぐ、突く、躱す、防ぐ。

お互いに攻撃と防御に回避を繰り返しながら時間が過ぎていく。


「……ラガス、やっぱり強い、ね。剣術は、一番自信があるんだけど、ね」


「俺のメイン武器は素手と魔弾だけど、武器に関しては長剣が一番自信があるからね」


剣術、短剣術、槍術、斧術。

面白いからという理由だけで訓練を積んでいたら、ある程度の腕には達した。


魔弾に関しては早い段階で極めることが出来たからな。

最近は武器に関しての訓練が殆どだ。


お互いに剣術アビリティの技を放とうと思うが、躱したら決定的な隙が生まれる。

セルシアとある程度熱を持った状態での戦いは楽しいが、そんな大きい隙を見逃すつもりはない。


「それで、まだこのまま斬り合うか? 俺としては全然構わないけど」


「そう、だね。それは楽しい……でも、私強くなったんだ、よ。だから……もっと攻めるね」


「ッ!!!」


これは限りなく殺気に近い闘気だな。

攻撃が更に遠慮くなった。

剣術のみに力を注いでいる同年代じゃなきゃ、この斬撃の雨は躱せないだろ。


「まだまだ、もっと」


「はっはっはッ!!! 良いんじゃないか。そうだな、もっと楽しもう!!!!」


魔闘気を纏い、更に身体能力を強化。

それに対抗するように俺も闘気を纏って身体能力を上げる。


さっきより剣戟のスピードが更に上がる。

もう、一般人にはどう動いているのか見えないんじゃないか?


あぁ……なんか良いな。普段セルシアと喋ってる時も楽しいけど、こうやって剣で言葉を交わすのも楽しいもんだな。


「これにも、付いて来るんだね!」


「今までの人生の中で殆どを訓練に使ってきたからな!!! 悪いけど、戦いという領域では一切負ける気は無い!!」


自分が最強だとは思っていない。ただ、生きた年数が少し違うだけの者には負けるつもりは無い。

というか、これだけの手札があって他人と比べてスタートダッシュが速かったんだ。その築き上げてきた自信が折られるとは思っていない。


「どうした、もう手札は無いか? 出し切ったか? それならそろそろ終わらせるぞ!!!」


「まだまだ、だよ。まだ……終わっていない」


そうか、それならそれを是非見せてくれ。

もっと剣で思いを交わそう!! セルシアの思いを、言葉を見せてくれ!!!!


「ライトニング・ドライブ」


「ッ!!! はやッ!!??」


あっぶな!! 一瞬で俺の横に移動した。

ガード出来たら良かったけど、中々にヤバい。


ライトニング・ドライブ……確かスピードに特化した雷魔法の強化魔法か。

というか、刃に纏う雷までなんか鋭くなってないか?


「どう? まだまだ戦える、でしょ」


「そうだな。まだまだ、もっと斬り合う」


魔闘気を纏い、全力で斬り合いに望む。

確かに速度では少々セルシアの方が上だ。

躱し損ねて剣先が掠ることもある。


でも魔闘気で体を覆っているから殆どダメージは無い。

というか、ここまで良い戦いができるのは久しぶりだ。


心が熱くなる、テンションが上がる。自分の体に熱が籠っていくのが解かる!!


この状況からでも勝てると思う……魔力量では俺の方が上だ。

いずれこの拮抗は崩れる。

俺に擦り傷が増えたとしても、どれも致命傷にはならない。


ただ……それで勝って嬉しいか?

いいや、全く嬉しく無い!!!!


絶対に剣戟で勝つ!!!!


「流石セルシアだ。人にはあんまり使った事は無かったけど……使うよ」


「何を使うのかは分からないけど、負けない」


「それはどうかな? ラビットフット」


「ッ!!??」


先程のお返しとばかり、今度は俺がセルシアの視界から消えて横から斬撃を放つ。

しかしそれに見事セルシアは反応し、ガードに成功する。

もしかしてライトニング・ドライブは反応速度まで上げるのか?

接近戦にはもってこいの魔法だな。


ただ、俺がラビットフットを使った事で速さは互角……いや、ちょっと俺の方が上か?

でもこれでどちらが勝つか観客には分からなくなっただろう。


でも……セルシアのあの目、まだ何かを狙ってる目だ。

何を狙っているのか……それは是非とも知りたいな!!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る