そういう家系に仕えるからこそ
「やっぱりこう……一方的だったね」
「まだ一回目の試合だから大したことない奴と当たったのかもしれないけど、予想通りの展開だったな」
初戦の相手は短剣を二刀流で扱う執事だった。
しっかりと基礎がある攻撃で短剣を持つことでシュラよりリーチが長い。
だがそれでもシュラが大剣を持つことは無く、素手だけで攻撃を捌き、最後は一撃で終わらせた。
それでもメリルと同じように互角の戦いをしている様に見えた観客たちからは大歓声が上がる。
まっ、素人に見れば最後のカウンターが綺麗に決まっただけでそこまで差があるようには見えなかったんだろうな。
「というか、そこまで大したことが無い武器ならシュラさんの体に刺さらないんじゃないかな?」
「いやぁ……流石にそれはどうだろうな? 本当に鈍らな武器なら通じ無いかもしれないけど、一般的な武器を一切防御せずに受けて無傷という訳にはいかないだろ」
確かに種族の違いとして防御力も高いシュラだが、流石に生身の体に刃が通らないという事は無い。
強化するなら話は別だけどな。
「ラガスから見て面白そうな人はいた?」
「ん~~~……まぁ、こいつそこそこ強いだろうなって執事はいた」
シュラは今回の戦いだけを見た人からすれば珍しい種族の執事って印象かもしれないが、飛び抜けて強いのは事実だ。
でもシュラ以外にも周りと比べて頭一つか二つ抜けている奴はいた。
歳が十七の奴もそうだったな。
モンスターと死闘を経験したことがあるかは分からないけど、相当訓練を積んでるなって印象を持った。
流石にあれはシュラも素の状態では厳しい相手だろう。
「魔法メインで戦った執事もいたね」
「そうだな。相手の執事も攻撃魔法で対応してたから……もしかしたらそいつらの主人の家系が魔法に特化してるのかもな」
「主人がそういう家系の者だから、自分も魔法で相手を倒さなければならないって思ってるのかな」
「もしかしたら、そうなのかもしれないな」
正直主人が魔法を得意としてるなら一緒に戦うかもしれないメイドや執事は主の詠唱が完成するまで相手の行動を制限ずる為に、接近戦に特化するべきだと思うが……そこら辺は家によりけりだろうし深く考えても仕方ないな。
「そういえば、シュラさんは魔法を使えるの?」
「一応な。魔力操作に関しては俺やメリルの方が器用ではあるけど、シュラだって魔法が使えない訳では無い」
まっ、最終的な遠距離攻撃は鬼火による攻撃が一番強力だろうけど。
それでも火と土魔法が使える。
「それよりもシュラの場合は素手や武器を使った接近戦だけどな」
と思っていたんだが、二回戦目では少し前に予想していた展開となった。
シュラの相手は一回戦目でお互いに攻撃魔法だけで戦っていた執事。
そしてその執事はシュラを挑発し、自分と同じ土俵で勝負しようとする。
俺の攻撃を正面から攻略できるか、無理だろうな。お前にそんな度胸がある訳が無い。
そんな感じの挑発をしてなんとか自分の魔法をシュラにぶち込みたい執事。
ぶっちゃけそんな挑発に乗る必要など無い。無いのだが、シュラとしては面白いと感じたのかその挑発に乗ってしまった。
「わざわざ挑発に乗る必要は無いと思うんだけど……ラガスはどう思う」
「俺も別に乗ってやる必要はない思うぞ。ただ、シュラとしては単純に面白そうだと感じたんじゃないか?」
そうでなければ挑発に乗る理由が無いし。
というか、これをどこまで見ているメリルは呆れてそうだな。
ただ、観客達からすれば面白そうな展開となったので更に熱気が上がった。
この世界ではこういった娯楽も刺激的なものだから、戦いが始まる前のこういった展開もテンションが上がる要因なんだろう。
「も、もしかしたら本当に跳ね返しちゃうのかな?」
「ど、どうだろうな? パンチでぶっ壊すことは出来ると思うけど」
もし本当に跳ね返すことが出来たら相手の執事、自信喪失するんじゃないか?
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