余裕を保たなければ
デートが始まってから大体三時間ぐらいか。
最初は露店で少し買い食いをした。
朝食も食べており、昼飯も食べる予定なのでそこまで大した量は食べなかったが、それでも流石は王都の露店というべきか、舌は満足した。
その後は少し高めのアクセサリーが売っている店に入り、色々と見て回る。
マックはなにかを自慢げにに話しているが、何を言っているのかさっぱり分からない。
だが、マックが今日の為に身に付けた知識だというのは表情から解る。
それを現在一番気になっている相手であろうシェリーに必死で説明している。
デイビスはマックと同じくルナにアクセサリーの説明をし、俺はエリスとのんびり見て回っていた。
耳を澄ませば二人の会話の内容は大体分かる。
二人共言っている事は殆ど変わらない。
変わらないんだが……シェリーとルナの表情の差が歴然だ。
マックが得意げにアクセサリーの説明をするのに対して、シェリーも相槌を打ち、笑顔の状態ではある。
ただ、それが心から笑っている、楽しんでいる笑顔では無いという事は解かる。
強いて言うなら……空気を読む笑顔ってところか。
そんな二人とは対照的に、デイビスとルナの表情は自然と裏表の無い顔だ。
デイビスの表情は意外にも柔らかいものであり、ルナもデイビスの説明を聞いて楽しそうに返している。
何故そこまで差があるのか……原因はやっぱり説明する時の表情か。
相手がマックかデイビスかってだけで多少は変わるかもしれないが、素人目にもマックのなにが駄目なのか何となくだが解かる。
マックは説明する際に自分の知識を自慢したいという欲が溢れ出ている。
いや、少しは押さえているかもしれないが、それでもこれだけ知ってる自分は凄いでしょ! だから褒めてくれても良いんだぜ!! って雰囲気が漏れてしまってる。
常人と比べれば相手の表情を読み取るのに優れている俺達なら、そういった感情を見抜くのはそこまで難しい話では無い。
それに対してデイビスの表情には余裕があり、サラッとアクセサリーの説明をしている。
それがさも当然の様に行えており、特に知識を見せびらかそうとしている様には見えない。
男として女にアタックする際には勢いは大事かもしれないが、自分の欲を見せない余裕な表情も大事という事か。
「シュラさんはあんまりアクセサリーに興味が無いですか?」
「いや、別にそういう訳じゃ無いけど……なんでそう思ったんだ?」
「だって、さっきからずっと別の事を考えてるようにみえたので」
おっと、流石に意識が逸れ過ぎていたか。
となり女子がいるのにあんまり他の事を考えるのは良く無いんだったな。
「ちょっと、気になってた事があってな。すまんすまん」
「別に良いですよ。何と言いますか……シュラさんは今日、なんとなく参加したという雰囲気なので」
あらら……そこまでバレていたか。
確かに、俺はマックに無理やり参加させられたようなものだ。
楽しめたら幸いだ、その程度の気持ちしかない。
もしかしたらそういった雰囲気が目に現れていたのかもしれないな。
「そうだなぁ……想定外だった、って言うのが正しいか。でも、楽しめたら良いなって気持ちはちゃんとあるぞ」
「ふふふ、シュラさんは本当に不思議な方ですね」
「そうか? まぁ……主が結構不思議な人だからな。もしかしたらその影響を受けたのかもしれない」
どのラインを見て不思議と思ったのかは分からないが、同じ執事達と話していれば今まで自分が常識だと思っていたことがそうでは無かったという事が分かった。
他の人から見れば、その辺りが不思議に見えてるのかもな。
「俺の主であるラガスさんだって、アクセサリーに興味を持ってる。でも、少し違う視点からだけどな」
「?? それはどういう事ですか???」
……しまった。つい、言葉を選び間違えたな。
なんて答えたら良いのか……なるべくラガスさんに迷惑を掛けないようにしないと。
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