与える感情

面倒なルーキー達に絡まれた以降の冒険では特に何も起こることは無く、狩りを終えることが出来た。

倒してきたモンスターの中でグレーグリズリーという熊系のモンスターだけはDランクと、一番高かった。

だからといって苦戦したわけでは無く、腕力は強いけど技術は稚拙な相手として良い実験台になってくれたので、ローク達にとっては良い経験になったと思う。


倒したモンスターは売れる部分は剥ぎ取り、収納やマジックポーチの中にしまっている。

学校の中にもギルドの中にある買取所の様な場所があり、騎士科やハンター科を受けている生徒はそこで提出したモンスターの素材や魔核が授業の評価で加点されるらしい。


ただ、買取所には嘘を判別する魔道具が設置されているので、嘘を付いても一発でバレる。

過去にモンスターの素材を買い、それを自分が倒したと職員に伝えようとした馬鹿がいたと聞いたが、なぜ嘘がバレないと思ったのかと不思議に感じた。


「今日は、とても充実した、一日だった」


「僕もそう思うよ。ちょっとした予想外の展開もあったけどね」


「だな。もう少しモンスターの状態を見て攻撃すれば良かったな。元からそこそこ傷跡があったんだし、ちょっと見れば誰かに狙われているのだと分かった筈だ」


将来ハンターになる身としては、されて嫌な事はしたく無いからな。

でも、今回の出来事は完全に不可抗力だから仕方ない。


「ラガスは毎日こんな日々を送ってたんだね。そりゃ同年代より頭二つも三つも抜けてる訳だよ」


「文字通り、潜り抜けた、修羅場の数が、違う」


「あぁーーー……まぁ、そう言えるかな」


別に間違ってはいないので否定はしないけど、ストレートに褒められるとやっぱりちょっと照れる。


「ラガス、大会は肉弾戦と魔弾……後は何か使うの?」


おっと、急に話題は大会の内容か。

俺としては別にバレてもそこまで目立たない武器なら使っても構わないと思ってるんだよね。


長剣や短剣に槍だって使えるところを見せたとしても、武芸百般、器用貧乏、どちらかの様に目に映ると思う。

ただ、そこまで驚かれはしないだろう。


「一つだけ、ちょっと試したい技があるんだ」


「一つだけなら、校内戦、だけでは駄目、なの?」


「いや、校内戦でも試すつもりだよ」


明日の対戦相手が色々と実験しがいがある相手だからね。

試す価値はどういった相手に通じるのか、そこにある。


「ラガス坊ちゃま、その試したい技の内容とはどのようなものなのですか?」


「ん~~~……相手の隙を作る技、って感じかな」


「相手の隙を作る、ですか。ラガス坊ちゃまにしては珍しい技ですね」


「メリルに同感っす。もっとこう、見た目では分からないけど攻撃性の高い技かと思ってました」


攻撃に使う事も出来るけどな。

魔弾と同じような感じで汎用性がある。


ただ、大会で使おうと思っている技はその中でも一つだけだ。


「技の名前は、イリュージョンボイス」


「イリュージョンボイス……あぁ、なるほど。やっぱりラガス坊ちゃまは良い意味で性格が悪いですね」


「褒め言葉として受け取っておくよ」


メリル以外の人はあまり解っていないみたいだな。俺がイリュージョンボイスを使って何をしたいのかを。


「でも、それは対戦相手の個人情報が分かっていないと難しいんじゃないでしょうか?」


「それはそうかもしれない。ただ、明日の対戦相手に関しては情報がある。それに、大会に関しても事前に多少の情報があれば上手く扱える筈だ」


「えっと……結構エグイ、の?」


「う~~~ん、確かにエグイ感じに使う事も出来るな」


使い方によってよって相手に与える感情が変わってくる……というかそうか、別にそっち系の感情を突かなくても良いのか。


ただ、エグイ感じな攻撃に関しては相手の情報がそこそこ必要になるな。

そこら辺はあいつら……は使わなくても良いか。そこまで手こずるような相手はいないだろうし。


「というか、結構腹減った。素材と魔核を提出したら直ぐに飯を食べたい」


「同感っすね。俺も結構腹が減ってきました」


今日はご飯を食べ終えたら直ぐに寝てしまいそうだな。

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