三角関係?

「ただいま」


「おかえりなさい。試験はどうだった?」


「・・・・・・まぁ、そんなに難しくは無かった」


筆記試験は満点だったかもしれないので、目立たない為に幾つか嘘の回答を書いた。

実技試験に関しては試験官に隙を突いた攻撃を行えたので問題は無い。


(でも、実技に関してはもしかしたらトップクラスになってしまうのか? 他の奴らは教科書通りの戦いをする奴らが殆どだったから試験官の人も動きを読みやすかったんだろうな)


やり過ぎてしまったかもしれない。

しかし実技試験に関しては明確な合格ラインがいまいち解らなかったので、ラガスは一番実力が高いセルシアを合格ラインにするしかなかった。


「他の受験生でめぼしい奴はいたか?」


「実技に関しては接近戦と遠距離で別れてたから遠距離の試験を受けた人の実力は解りません。ただ、近距離に関しては何人か周りと比べて頭一つか二つほど抜けている者はいました。でも、驚嘆する程の者はいませんでした」


「ラガスが驚嘆する程の同年代なんてそうそういないだろうな。それで、試験官とどんな感じで戦ったんだ?」


「最初は身体強化のアビリティを使わず、六割ぐらいの力で戦っていました。そして途中で一旦後ろに離れてから身体強化のアビリティを使って奇襲を仕掛けました。攻撃が決まる事は無かったですけど。ただ、その後に試験官の人からもう試験は終わりだって言われました」


「なるほど。おそらく実技担当の試験官が合格と決めたんだろ。端っこにいる試験官が実際に点数とその理由を決めるんだが、偶に例外がある。それがラガスに当てはまったのだろう」


自分らしい結果だなと思いつつも、ラ一つ良からぬ考えが浮かんでしまう。


「それって、実技担当の試験官が買収されたら実力が低いのにも拘らず、実技でそこそこの点数を出してしまう者が出てしまうんじゃないですか?」


「昔はそういった姑息な手段を使う貴族もいたらしいが、その方法で受験した生徒が入学してから同学年の実力者達より劣っているとバレるのも時間の問題だ。そういった生徒達はいずれ劣等感に耐えきれなくなって学園に通う事を拒否し始める」


なるほどね。前世の替え玉受験や裏口入学と似たような感じか。

実力が伴っていないのに身の丈に合わない場所に入ろうとすれば、待っているのは破滅だけ。

例え親の爵位が高かろうが、物理的に虐められる事は無くても白い目を向けられる事は間違いなし。


親御さんもそこら辺が予想出来なかったんだろうな。

学校に金を積むような真似をするんだし。


「旦那様、奥様、ラガス坊ちゃまが顔だけの男に絡まれていました」


「おいメリル、別にそれは報告しなくても良いだろ」


って、なんで父さんと母さんはそんな面白い物を見る目になってるんだよ。


「顔だけの男に絡まれたと。もしかしたらラガスはセルシア嬢と一緒に行動していたのか?」


「はい。学園に向かう途中に一緒になって、それからは学園から離れるまでずっと一緒に行動していました」


「あらあら良い事じゃない。それで、その顔だけの男にいつ絡まれたの」


二人共何故息子が面倒事に絡まれたというのに楽しそうに訊くんだよ。


「実技試験が終わって、会場から離れようとした時に絡まれました。そいつはセルシアの婚約者で、表情は優しそうな感じにしていたけど、分厚い仮面を被っているってのは良く解りました」


「つまり三角関係ってことね!!」


「なんでそんなテンションが高いんですか。そもそも俺はその三角の中に入っていませんよ」


「いえ、あの顔だけ男はラガス坊ちゃまがセルシア様と一緒にいることに対して苛立っていました。なので三角の中にラガス坊ちゃまは入っているかと」


否定したいが、傍から見ればそう見えているんだろうな。

なるべく関わりたくない様にしたいもんだ。

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