普通は裂けるよな?

「っとーー、間一髪だったな」


「シャァァアア!!??」


いやーーー本当に結構危なかった。

てか、身体強化のアビリティを念のため使っておいて良かった。

咄嗟に真剣白羽取りで止めたけど、身体強化のアビリティを使ってなかったら皮膚斬れてたよな。


「さて・・・・・・驚いてるとこ悪いが、俺がどれだけ成長した試させて貰うぞ!!!」



「大丈夫ですか、意識はまだありますか?」


「あ、ああ。なんとか大丈夫だ。お、お前は誰なんだ」


「私の事は後で説明します。それよりまずはポーションを飲んで傷を癒してください。命に関わらないとはいえ、重傷な事に変わりありません」


「・・・・・・わるい、助かる」


ふぅ、これで一安心ですね。

ラガス坊ちゃまがお造りになった回復液なら完治とまではいかずとも、ある程度体を動かす事が出来る筈です。


「って、あのリザードマンは・・・・・・はっ!!!??? ど、どどどどういうこと、だ?」


どういう事だと言われましても、目の前で起こっている通りとしか言えませんね。

リザードマンが振り下ろした長剣をラガス坊ちゃまが両手で刃を挟んで止めた。

まぁ、あの止め方には流石に私も驚きましたが。普通は掌が裂けてしまうのではないでしょうか?


「いや、確かに凄いが加勢に行かねぇと!!」


「お待ちください」


「ぐぇ!!」


傷が治ったとはいえ失った体力と血は元通りにならないのですから少しは大人しくしてく欲しいものです。


「く、首が締まるだろ!! じゃなくてだ、確かのリザードマンの攻撃を止めたのスゲぇけど、一人じゃ勝てないだろ」


「あぁ・・・・・・そこをご心配になっていたのですか。お優しいのですね。ですがご安心ください」


「えっと、あんたあいつの従者かなんかなんだろ。だったらあんたも加勢に入ろうとか思わないのか?」


・・・・・・ラガス坊ちゃまの見た目と背丈では仕方ない事なのでしょうね。


「・・・・・・今回の相手では特に思いません。あなたが思っている程ラガス坊ちゃまは弱くありません。と言いますか・・・・・・ラガス坊ちゃまの強さは異質です。よく見ておいた方が良いかと」


「良く見ておいた方がって・・・・・・嘘だろ」


ですよね。私もラガス坊ちゃまの強さに多少慣れて来ていますが、やはり冷静になって目の前の現状を考えると普通にあり得ません。



体を僅かにずらし、長剣を地面に下ろす。

そして一気に懐まで潜り込む。


「ふっ! シャッ!!!」


「シャ、アァアア!!??」


ジャブ二発からのストレート。

攻撃のタイミングもジャスト、それにいつも戦っているモンスターと比べて硬かったがそれでも身体強化のアビリティを使ってるから俺の拳はしっかりと効いている。


ただ、中身までは傷つけられなかったみたいだな。


「やっぱ今まで戦って来た奴らとは一味使うな」


「・・・・・・シャァァアアアア!!!」


「ッ!!!!」


いきなりのスラッシュか、良いタイミングの不意打ちだな。

けど俺が反応出来ない速度じゃない。


「魔弾!」


斬撃波と魔力の弾丸ぶつかり合って甲高い音が鳴り響く。

俺はお互いの攻撃が衝突した瞬間にその場から駆け出す。


敵さんも考えは一緒だったみたいだ。

頭部をガードしやすいようにバックラーでガードしながら長剣の刺突。


「甘いんだよ」


悪くないけどそれぐらい躱せるんだよ。

走りながら体を後ろに逸らして跳ぶ。


即座に地面に足を付いてアッパーをかまそう。

そう思ったが物凄い悪感を感じた。


「ちっ!!!」


俺は自分の直感に従って地面に左手をつき、無理矢理右へ跳んだ。


「ふーーー。流石に身体強化のアビリティを使ってるとはいえ、流石に無理し過ぎたか?」


「シャァァァ・・・・・・」


思い通りに行かなかったからイラついてるって感じの表情だな。

あのまま突っ込んでたら・・・・・・バックラーで上から殴りつけてくるか、長剣の持ち方を変えて背後からグサッと刺すぐらいはしてきそうだったな。


「・・・・・・ははっ、良いぞ。こういう感覚を覚えておきたかったんだよ」

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