考えの違い

「ラガス坊ちゃま、明日はどこに行かれるのですか?」


「午前中はクレア姉さんの訓練に付き合う。午後からは母さんと一緒に街を散策。メインは闘技場だ」


「下見ですか?」


下見? ・・・・・・あぁ、そっちの方と勘違いしてるのか。


「違うよ。普通の方だよ」


「あぁ、そちらの方ですか。坊ちゃまも賭けに参加されるのですか?」


賭けか・・・・・・興味が無い訳じゃない。寧ろちょっと楽しみたいと思う。

けどそこまで金を持っている訳じゃないからな。


「そうだなぁ。銀貨一枚程度なら賭けても良いかもしれないな。ただ目的はそれじゃない」


「解っています。レベルの高い戦いを見るのが目的ですね」


なんだ、ちゃんと解ってるじゃん。

正直賭けは当たったら良いな程度にしか考えていない。


「そういえば、闘技場で戦ってる人ってどういった人がやってるんだ?」


「私も詳しくは知りませんが、戦闘に長けている犯罪奴隷や額が多くなってしまった借金を返す為に戦う冒険者。あとは自身の腕試しに挑戦する方もいる様です」


一つ目はそういった使い道があるのだと解る。二つ目は単純に阿呆なのではと思う。まぁ・・・・・・詐欺に騙されてそうなってしまったなどの経緯があるかもしれないが、その人にも悪いところはあるだろう。

三つ目は・・・・・・解らなくもないが、やっぱりちょっと解らない。


「そっか。取りあえず明日はそんな予定だからとっとと寝よう」


「分りました。お休みなさいませ」


「お休み」






「ようやく起きたわね、ラガス!!」


「ようやくって、時間通りだよ。クレア姉さんは少し気合い入り過ぎだよ」


まだ訓練が始まる五分前程度なのに、クレア姉さんしっかりと汗かいちゃってるよ。


「何言ってるのよ。時間が始まる前にしっかりと汗をかいていれば直ぐに実践形式の訓練が始められるでしょ」


「・・・・・・あぁ。そういう事か。お互いに少し考えが違ったみたいだ。とりあえず俺もちゃんと汗をかくからクレア姉さんは体を冷やさない程度に適当に動いといて」


「そうした方が良さそうね。ミーシャ、適当に動いておくわよ」


「分りました、クレアお嬢様」


さて、なるべく早く済ませないとな。ただ柔軟運動だけはしっかりやっておこう。


「少し眠そうですね」


「俺は基本的に朝はゆっくり寝ていた人間だからだ。それぐらいメリルも知っているだろ」


「勿論です。私はラガス坊ちゃまのメイドなので。ただ、今日は何時もより眠そうに見えたので少し気になって」


そうなのか? 別にいつもより眠りに落ちるのに時間は掛からなかったはずだし、別に恐怖を感じるような夢を見た訳でもない。


「・・・・・・単にちょっと調子が悪いだけじゃないか?」


「そうですか。なら良いのですが」


不吉な出来事の前兆・・・・・・なんて事は無いよな。

あっ、もしかして今がフラグになったりするのか?


・・・・・・・・・・・・くそっ、とりあえず今はクレア姉さんとの訓練に集中だ。


柔軟運動が終われば軽いシャドーで体を温める。


「何時見ても思いますが、摸擬戦をしている時よりもシャドーをしている方がスピードが速くないですか?」


「あぁ。それはあるかもしれないな。単純にあれだよ。シャドーだったら戦っているのは幻影だ。だから手加減をする必要は無い」


「なるほど。確かに納得できる理由です。では、何時もはしっかりと怪我をしない様に手加減しているという事ですね」


そりゃ・・・・・・もしそうしなかったら骨ぐらいボキっと折ってしまうかもしれないからな。


「お前が身体強化のアビリティを使えば、流石に俺も身体強化を使ってるよ」


「そうですか。・・・・・・それは安心しました」


安心しましたって言う割にはちょっと険しい表情になってるんだが・・・・・・頭の片隅に置いておこう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る