次の仕事と生贄
冒険者ギルドでの仕事を選んだのには訳がある。
一つ
自由業は知識と人脈を得れる
一つ
この世界の事を深く知らなくても、その場その場での仕事に出来るのでハッタリが効く
一つ
もし松本からの捜査が及んだ場合に手早く逃げれる
仕事をしているとやはり、時勢や歴史や物語の話になる。
一つの場所にいるとやはり相手の事を気になるのだ。粉物とご飯を食べて満足し語尾に「〜やん」とつける関西人がいたら
兵庫・大阪・和歌山・奈良とどこの出身かと聞いてみたくなるのと同じでその場所で興味がある事を聞き出そうとするのが人間である。
クルド人が世界で受けている事柄を考えるとこの異世界での知識や宗教観が全く無い俺はどんな迫害を受けるか分からない。
宗教、民族、金が溢れている日本では鈍磨しているがこの三つは本ではなく肌で感じ知っておかないといけない事なのだ
それに松本の対応もある。
ガラット鍛冶屋で働いていた時に片目が無い獣人
が言っていたが、冒険者は魔物に殺されたり仕事にならなかったりするリスクはあるがチャンスがあれば地球で言えば出自の不明なコロンブスのように国王との謁見すら叶うという……
国王との拝顔が叶った場合は例え領主という貴族の肩書きがある松本であっても易々と俺を犯罪者と出来ないだろう。
そう考え俺は王都グラデウスの住民証を握りしめて冒険者ギルドの扉を開いた。
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「よし、、よし…… ! 」
私はゴブリンの魔石を心臓から取り出してゴブリンの緑色の血に汚れた拳を握りしめる
屠殺で牛を潰していたのでゴブリンを殺すのも解体するのも出来たけど、やっぱり武器を持った人の形をした
私はゴブリンのボロ着でサッとナイフの血を拭ってから自分が着ている血の目立たない紺色のエプロンドレスでさらにナイフを拭いて鞘に納める。
「お金ないから大事にしないとね」
夏の暑さでゴブリンの血の生臭さが揺らめき鼻に入り咽せて逃げる。
「(スカートが揺れて涼しいけどあまり走ると汗をかいちゃう。)」
水をいっぱい運ぶのも安全な水を買うのも難しいからね
木陰にたどり着いてゴブリンの魔石を眺めてため息をついた。
服もこれを合わせて3着しかない。お金はちょっとのゴハンでいっぱいいっぱい
「今頃、みんな何してるかな? 」
私はまだ13歳…… だけど過去の温もりしかもう頼るところが無い
——————————————————————————……
「シャーンティ、これからお前はここで生きていきなさい」
「え?…… はい…… 」
お父さんは年に一度ある王都への買い出しの最後に私を王都グラディウスの門の前に置いて行った。
奴隷商にツテがあるわけもないのに王都の商業地区でウロウロしていたのは私をできれば売りたかったんだとその晩に気付いた。
上のお姉ちゃんとお母さんが泣いていたのは私を棄てる話をお父さんに聞いたからだろう。
私の家は農業と放牧で王都の領内で生計を立てていた。
でもここ数年、生活が苦しくなっていたのは私も分かっていた。
仕事ができない私を口減らしするのは仕方ない
仕方ないけど涙が止まらなかった。
私は置いて行かれた私の荷物とせめての情けにか分からないけど荷物に入っていた牧場で使っていたナイフを持ってその日から路上で夜を明かした。
この世界で子供が1人で生きていくには誰かに買われるか自分で何とかするしかない。
幸い、私は王都の領内で生まれたので住民証があり働く事ができる。
でも肉屋、雑貨屋とかとか色々な商店を回ったけど雇い入れてもらえなかった。
お腹が減ってギューって鳴りどうしようもなくなった私はお姉ちゃんが危ないから近寄ったらダメと言っていた店に入り—————— 私は冒険者になった……
「ふう…… ふぅ…… 」
私は今日、三匹のゴブリンを狩るつもりだ。
今まで狩っていた角のあるウサギの魔物では売ってもお金にならない。
ゴブリンの魔石なら…… 冒険者ギルドに売れば三匹分で安宿には泊まれる…… 石畳でナイフを持ちながら寝ないで済む……
私は寝不足でフラフラとしながらゴブリンを探した。
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「なんだ? 」
暑い夏の森の入り口でフラフラと足をもたつかせて歩く少女がいる。
茶髪を腰まで伸ばして農民の娘が着るようなダボついたワンピースにエプロンをしている少女が魔物が溢れる森にいる事に疑問を持ち足を止めた。
「危険…… だよな? 」
俺は手遊びをしていた鬼(オーガ)の魔石2つを鞄に入れて様子を見る。
「ゴブリン…… ゴブリン…… 」
なんだか譫言(うわごと)を言っているがイケナイ薬でもしているんか?
……〈 キーサーチ〉
あの女の子はどうなる?
俺は松本に捕まった時の教訓から息を吸い込まず、声に出さず貯蓄魔力のみでスキルを使う練習をしそれを取得していた。
△シャーンティ [空腹・ 寝不足] 40メートル先のゴブリンに殺される可能性あり。
俺はチラリとスマホスキルの電池を見る
————— 消費魔力3か。やはりキーサーチは有能だな。
今の女の子の状態を把握するのに3しか魔力を使わない素晴らしい。
女の子はそのままフラフラと歩みを進める。
こりゃあ…… ダメだな
服装と状態から金も無さそうだし捨て置くか?
「…… いや、 」
俺は思わず座り込んだ女の子に駆け寄り助ける。
「あ…… ぁ? 」
「喋る元気も無いか? どうだい助けてやろうか? 」
「う…… うぅ…… 」
女の子は言葉にならないが首をカクンと下げて頷く
「その代わり礼をしてもらう。いいな? 」
「う…… うぅ…… 」
女の子はまた頷く。
そう、こういう状態の場合は助けを提示してから条件を出すと従ってしまう。
命の危機がある場合は助かったと思った後に締め付けても、自分に不利と分からないもんだ。
俺はニヤリと笑い少女を背負い王都に戻る。
——————————————————————————さて、1人では試せなかったキーサーチの実験の開始だ。
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