317.アキラ、退行する。
さっそく、その考えを形に移す。そうして、僕はアルテシアにお願いするのであった。
「ねぇねぇ、アルテシア~~。魔術で水出してくれ。」
そう頼むと彼女は、
「ええ構いませんけど、一体何に使われるんですか? 」
と聞いてくる。
「まぁ、ちょっと泥がほしくてね・・・。」
僕はそう答えると、アルテシアは首を傾げる。
「よくわかりませんが、アキラ様の頼みなら、いくらでも水を出しましょう!! 」
そう言って、家の外に出る。
「我、汝に願う。我に力を授けた給へ。」
アルテシアが詠唱すると、水がどこからともなく現れる。その水は、大地に注がれる。
「アルテシアを経て、大地に還る。」
思わず、その光景にその言葉が出てしまう。
そうして、十分な量の水が染み込んだ土をコネコネと混ぜて、泥団子を作っていく。
泥団子なんてちっちゃい頃に作って以来のことだったので、思わずはしゃいでしまう。
その光景にアルテシアは唖然として、
「アキラ様・・・。そんなに私達との生活がおつらいのですか・・・? 」
と心配そうに呟く。あれ・・・もしかして、今の僕、相当まずい状況って思われてる? 主に頭が・・・。
ふと、冷静に今の状況を考えるに・・・ぐぅの音も出ないほどの幼児退行っぷりに、思わず自尊心が削られる。
「アルテシア!! そんな目で僕を見ないで・・・、そんな可哀想な人を見る目で僕を見ないでくれ・・・!! 決して今の生活がつらいわけじゃないから・・・、安心してッ!! そ、そうだ!! アルテシアも泥団子作ってみよう!! ね! ね! (懇願)」
アルテシアは、まるで我が子を見るようにその誘いを引き受けてくれる。この誤解はどう解こうか・・・、まぁ、いっか!!
そう諦めて、アルテシアと一緒に泥団子を作っていく。最初は困惑していたアルテシアも段々と作るのが、楽しくなってきたようで笑顔になる。
一方の僕は、やっせとやっせとドンドン泥団子を作っていく。そうして、百個ほど作り終える。
「まぁ・・・。私達こんなに作ったんですね・・・。」
アルテシアは驚いた様子で、その光景を見る。まさに、圧巻の団子団子団子団子のえ、群!!
そうして、泥団子を風通しのいい場所で乾燥させていく。
「アキラ様のことですから、あの泥団子も何か理由があって作ったと思うんですが、その理由教えてもらっていいですか? 」
アルテシアは畏まって聞いてくる。
僕は少し考えて、
「う~~~ん、強いて言えば練習用かな・・・。乾いたら、アレ投げるんだ。」
と答えると、彼女は再び首を傾げるのであった。
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